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iPhoneがあなた専門の医師になる?Appleが次世代AIヘルスコーチ開発中―2026年春に「Project Mulberry」リリース予定

Y Kobayashi

2025年3月31日

Appleが健康管理を根本から変える新プロジェクトを進行中だ。BloombergのMark Gurman氏によると、「Project Mulberry」と呼ばれる完全刷新された「ヘルスケア」アプリにAIヘルスコーチを統合し、実際の医師の知見を「複製」することを目指している。このサービスは2026年春から夏にかけてiOS 19.4でリリースされる見込みとのことだ。

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Project Mulberryの全容

Appleの「Project Mulberry」は、既存のヘルスケアアプリを一新し、人工知能を活用した健康コーチング機能を核に据えた意欲的なプロジェクトである。複数の情報源によれば、このプロジェクトはAppleのAIグループを含む複数の部門を巻き込んだ大規模な取り組みとなっている。

Mark Gurman氏のレポートによると、開発は「フルスピードで進行中」であり、早ければiOS 19.4のリリースに合わせて2026年春または夏に一般公開される予定だ。このタイミングは、Appleが例年6月に開催するWWDC(世界開発者会議)に近いことから、同イベントでの詳細発表も予想される。

リニューアルされたヘルスケアアプリは、iPhoneやApple Watchなど、Appleデバイスから収集された健康データを総合的に分析し、AIコーチに供給。これにより、ユーザー個人に適した健康管理の提案や改善策を提供するという。特にApple Watchユーザーにとっては、心拍数や活動量、睡眠パターンといった豊富なデータを基にした、より詳細な健康分析が期待できる。

AIエージェントによる「医師の複製」

Project Mulberryの中核を成すのが、「医師を複製する」とされるAIエージェントだ。この表現は比喩的なものだが、Appleが目指すのは単なる一般的な健康アドバイスではなく、医師の専門知識や判断を可能な限り再現することだと理解できる。

このAIエージェントの開発にあたり、Appleは社内で雇用した医師たちのデータを用いて訓練を行っている。具体的には、医学的知見や診断プロセス、患者とのコミュニケーション方法などを学習させていると考えられる。

さらに特筆すべきは、このAIが単なる受動的なアドバイザーではなく、ユーザーの健康データを継続的に監視し、気になる傾向や改善の余地を積極的に指摘する仕組みになるという点だ。例えば、睡眠パターンの乱れや、運動量の減少、心拍の異常などを検出し、ユーザーに通知するとともに、改善のためのアクションを提案する。

ただし、Appleはこのシステムが医療専門家に取って代わるものではなく、あくまで補完的な役割を果たすことを強調すると予想される。実際の医療アドバイスの正確性を確保するため、専門家の監修も重要な要素となるだろう。

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Tim Cookの健康ビジョンとAppleの戦略

Project Mulberryは、Tim Cook CEOが繰り返し言及してきた「Appleの社会への最大の貢献はヘルスケアになるだろう」というビジョンの具現化と位置づけられる。Cook氏は過去のインタビューで、「手首に医療ラボを置く」という構想を語ってきた。

Apple Watchの導入以来、同社は着実に健康機能を拡充してきた。心電図機能や血中酸素濃度測定、転倒検出など、単なるフィットネストラッカーを超えた医療機器としての側面を強化している。さらに、女性の健康追跡機能や、最近ではメンタルヘルスのモニタリング機能も追加されている。

Project Mulberryは、こうした個別の健康機能を統合し、AIの力で分析・解釈することで、ユーザーにとってより価値のある健康情報を提供することを目指している。これはAppleがハードウェアからサービスへとビジネスモデルをシフトする大きな流れの中にも位置づけられる。

医療専門家の起用とコンテンツ制作

AIエージェントの信頼性を高めるため、Appleは外部の医療専門家を積極的に起用する計画だ。具体的には、睡眠の専門家、栄養士、理学療法士、メンタルヘルスの専門家、心臓専門医などの採用を検討しているという。

これらの専門家は、健康状態や注意すべき傾向についての説明動画を制作する予定で、カリフォルニア州オークランド近くに新設される専用施設で撮影が行われるとされる。これらの動画は、AIエージェントが検出した健康上の懸念点をユーザーに説明する際に再生される。

さらに注目すべきは、Appleが「著名な医師」をこのサービスの「ホスト」として起用しようとしている点だ。社内では暫定的に「Health+」と呼ばれているこのサービスは、Apple MusicやApple TV+といった既存のサブスクリプションサービスと同様のブランディングを目指していると考えられる。

主要機能と将来の展望

Project Mulberryでは、食事追跡機能が大きな焦点となる見込みだ。AI技術を活用して食事内容を記録・分析し、栄養バランスの改善や健康的な食生活のためのアドバイスを提供するという。

また、iPhoneの背面カメラを活用した革新的な機能も開発中だという。カメラでユーザーのワークアウトを撮影・分析し、フォームの改善点や効果的なエクササイズ方法を提案するシステムだ。この機能は将来的にApple Fitness+プラットフォームとも統合される可能性がある。

課題と懸念点

一方で、健康アドバイスを提供するAIシステムには多くの課題もある。Appleは過去にAI関連プロジェクトで挫折を経験しており、Siriの大幅刷新も2026年まで延期されたことは記憶に新しい。同社の開発が目標通りに進むかは未知数だ。

さらに、健康や医療に関するアドバイスは特に高いリスクを伴う。不正確な情報や誤ったアドバイスはユーザーの健康に直接影響する可能性があり、Appleのイメージにも甚大な悪影響を及ぼしかねない。

このため、Appleはシステムの精度と信頼性を確保するために、医療専門家の監修を徹底し、AIが提供するアドバイスには適切な免責事項を付すなどの対策を講じると予想される。また、法的・倫理的な側面での慎重な検討も不可欠だろう。


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