中国の集積回路(IC)輸出額が2026年上半期に1772.8億ドルへ達し、前年同期から96.1%増えた。だが、同じ期間の輸出数量は1794.4億個で、前年同期比の伸びを計算すると6.9%である。世界的なメモリ高騰はこの乖離と整合するが、中国のHS小分類や人民元建て内訳がないため寄与率までは確定できない。中国の半導体供給力は拡大を続けているものの、「輸出額がほぼ倍増した」という一文から生産能力の倍増や先端品への移行を導くことはできない。
96.1%の金額増に対して、数量は6.9%
South China Morning Postが中国海関総署の公表データとして報じたところによると、2026年1〜6月のIC輸出は1794.4億個、1772.8億ドルだった。金額は前年同期比96.1%増である。一方、中国工業情報化部が公表した2025年上半期の輸出数量は1678億個だったため、数量の伸びは約6.9%になる。
両年の数字を同じ物差しに置くと、落差はさらに明確になる。96.1%という伸び率から逆算した2025年上半期の輸出額は約904.0億ドル。輸出額を個数で割った税関上の平均単価は、約0.54ドルから約0.99ドルへ83.4%上昇した。
| 指標 | 2025年上半期 | 2026年上半期 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| IC輸出数量 | 1678億個 | 1794.4億個 | 約6.9%増 |
| IC輸出額 | 約904.0億ドル | 1772.8億ドル | 96.1%増 |
| 税関上の平均単価 | 約0.54ドル/個 | 約0.99ドル/個 | 約83.4%増 |
この平均単価は、特定製品の販売価格ではない。高価なメモリの比率、プロセッサやアナログICとの組み合わせ、契約価格、為替などを一つに畳み込んだ合成値である。今回の96.1%はドル建ての伸び率なので、人民元相場の変化も混ざる。それでも数量6.9%との大差は、2026年上半期の輸出増を生産個数の急拡大では説明できないことをはっきり伝えている。
しかも、数量の伸びは前年より鈍った。2025年上半期のIC輸出数量は20.6%増えていたが、2026年上半期は約6.9%増である。中国製半導体が一気に世界市場を数量で塗り替えたというより、緩やかな数量増に大幅な単価上昇が重なった半年だった。
世界で同時に跳ね上がったメモリ価格
世界市場側の有力な説明は、AIサーバー向けメモリへ生産資源が集中したことである。TrendForceによると、2026年第1四半期の従来型DRAM契約価格は前四半期比93〜98%上昇した。DRAM業界の売上高も同81%増の970億ドルへ膨らんだが、ビット出荷量の伸びは供給制約で限られたという。数量があまり増えないまま売上高が跳ね上がる現象は、中国の税関統計とよく似ている。
TrendForceは、高帯域メモリ(HBM)生産に伴うウエハー消費の増加が、従来型DRAMに使える生産能力を圧迫していると分析する。大手メーカーが先端工程や設備をHBMとサーバー向けDRAMへ振り向けると、PC、スマートフォン、産業機器が使うDDR4や低密度品の供給まで細る。AI投資は最先端のHBMを買い上げると同時に、既存世代のメモリ価格も押し上げた。
韓国の輸出統計は、この動きが中国固有ではないことを裏づける。韓国産業通商資源部によれば、2026年上半期の同国半導体輸出額は前年同期比162.5%増えた。同省は、AIサーバー投資によるメモリ需要と価格上昇を理由に挙げている。世界の主要メモリ供給国で輸出額が同時に急増した以上、中国の96.1%増も世界的な価格サイクルの中で評価する必要がある。
中国からのIC輸出数量も、価格上昇局面で6.9%増えた。供給できる製品と顧客は存在する。ただし、輸出額の伸び率を中国の技術力や生産能力の伸び率へ置き換えると、価格サイクルを産業競争力と取り違えてしまう。
1個0.99ドルで技術水準を測れるか
税関の「IC」は、製造ノードや用途をそろえた製品群ではない。世界税関機構(WCO)のHS85.42では、完成品を次の四つに分け、別に部品の8542.90を置く。数セントの制御用ICと数百ドル以上の高性能プロセッサが同じ大分類に共存するため、平均0.99ドルは代表的な中国製チップの価格を意味しない。
| HS小分類 | 主な対象 |
|---|---|
| 8542.31 | プロセッサ、コントローラ |
| 8542.32 | メモリ |
| 8542.33 | アンプ |
| 8542.39 | その他の電子集積回路 |
| 8542.90 | 部品 |
個数の意味も製品ごとに大きく違う。低容量メモリや電源管理ICでは一つの完成品を1個と数えるが、高容量メモリは同じ「1個」に格納するビット数が増える。複数ダイを積層した製品や複数機能を統合したICもある。供給規模を比べるなら、ビット出荷量やウエハー投入量が適している。付加価値や計算性能には、ダイ面積と製品別売上高も要る。
国内生産統計との単純比較にも注意が要る。中国国家統計局は、IC生産量を切断・封止済みの完成品として数え、ロジックやメモリからセンサー回路までを含めると説明している。税関統計は別の制度と品目分類に基づくため、生産量に対する輸出数量の割合を計算しても、国内製造品がどれだけ海外へ出たかは確定しない。
加工貿易も同じ問題を生む。海外製ウエハーやダイを中国で封止・検査して再輸出する取引と、中国で設計・前工程・後工程まで完結した製品は、どちらも中国から出るICとして通関し得る。一般貿易と加工貿易、原産国、企業別の内訳がなければ、1772.8億ドルのうち中国国内で生まれた付加価値は分からない。
4842.8億個の生産と493億ドルの設備投資
金額統計を割り引いても、中国の供給能力が増えてきた流れは残る。国家統計局によると、2025年のIC生産量は4842.8億個で、前年比10.9%増えた。2020年の2614億個と比べれば、5年間で85%増えた計算になる。短期の価格サイクルとは別に、設計、前工程、封止・検査を抱える産業の規模が広がってきた。
設備投資も大きい。SEMIによれば、中国の2025年半導体製造装置支出は493億ドルだった。前年から0.5%減ったものの過去最高圏にあり、成熟ノードと一部先端能力への投資が続いた。設備が量産へ寄与する前に、建屋の整備と装置搬入を終えなければならない。その後も認定と歩留まり改善に時間がかかるため、投資額はその年の出荷個数へ直結しない。それでも数年先の供給量を支える動きである。
2026年上半期の輸出数量6.9%増は、この長期拡大の延長線上に置ける。一方、96.1%という金額の伸びは、設備投資や生産量の増え方から大きく離れている。中国の競争力を測るなら、金額急増を無視するのも、金額だけを能力の指標にするのも正確ではない。数量を供給規模、平均単価を価格と製品構成の合成値として分けて追う必要がある。
次に必要なのはHS小分類と貿易形態
次の統計で確認したいのは、HS85.42の小分類である。メモリの8542.32が輸出額増のどれだけを担い、プロセッサ・コントローラの8542.31やその他の8542.39が数量と単価をどう動かしたか。ここが分かれば、メモリ高騰と中国製品の構成高度化を分離できる。
人民元建ての金額も必要だ。ドル建てと並べれば為替効果を外せる。さらに一般貿易と加工貿易、主要輸出先、原産国を組み合わせると、中国で製造されたICの増加と、封止・検査を経た再輸出の増加を切り分けやすくなる。
企業側では、平均販売価格(ASP)とビット出荷量が判断材料になる。価格上昇が止まった後も出荷数量と製品ミックスが改善するなら、中国企業の収益基盤は強くなる。反対に、数量が一桁成長のままメモリ価格が正常化すれば、輸出額は生産縮小を伴わずに減速し得る。
2026年上半期の統計から確定できるのは、輸出額96.1%増に対して数量が6.9%増だったという大きな乖離である。世界のメモリ高騰は最も整合的な説明だが、中国側の品目内訳が出るまで寄与率は確定しない。中国半導体産業の次の節目は、価格が落ち着いた後も数量を伸ばし、加工貿易を除いた国内付加価値を増やせるかどうかで決まる。