中国の国有企業2社が、純度99.99995%という理論限界に近い超高純度グラファイトの製造に成功した。特に中国電子科技集団(CETC)は、大幅なコスト削減と量産化を実現し、半導体や原子力など戦略的産業への影響が予想される。
画期的な技術革新の詳細
中国の科学技術界で注目を集める今回のブレークスルーは、2つの国有企業が異なるアプローチで達成している。中国電子科技集団(CETC)は独自開発の水平式精製装置を用いて、99.93%の純度のグラファイト粉末を99.99995%という極限レベルまで精製することに成功した。同社の謝永強総経理によれば、この純度は理論的限界に近く、不純物がほぼ無視できるレベルにまで低減されているという。さらに注目すべき点は、従来の製造手法と比較して製造コストを60%削減できる画期的な生産プロセスを確立したことである。
一方、中国五鉱集団も独自の技術革新により、同じく99.99995%の純度達成を発表している。同社の手法は、物理化学的精製を基礎としながら、低温・高温連続精製、超高真空精製などの複数の技術を段階的に組み合わせたカスケード方式を特徴としている。原料となる95%純度のグラファイトから99.99995%という超高純度までの精製を、安定した品質を維持しながら実現している点が画期的である。この技術開発においては、業界の伝統的な設計概念を打ち破り、主要な装置製造企業との協力により、連続的なグラファイト精製プロセスと設備の独自開発に成功している。
両社の技術革新の重要性は、単に純度の向上だけでなく、製造プロセスの安定性と効率性を同時に実現した点にある。特にCETCのケースでは、すでに量産化のフェーズに移行しており、顧客からの高い評価を得ているとされる。これは実験室レベルの成果を産業規模の生産に結びつけた重要な成果といえる。一方、中国五鉱集団は黒竜江省に保有する雲山グラファイト鉱山という世界有数の資源基盤を活かし、年間20万トンの生産能力を持つ加工施設での実用化を目指している。
これらの技術革新は、従来の精製技術が抱えていた純度とコストのトレードオフという課題を解決する可能性を示している。両社とも生産コストの大幅な削減を実現しており、これは超高純度グラファイトの産業応用を加速する重要な要因となることが期待される。
戦略的意義と市場への影響
超高純度グラファイトは、原子力、半導体、航空宇宙産業において重要な戦略物資である。特に電気自動車のバッテリー負極材、半導体製造用るつぼ、航空機部品などの製造に不可欠とされている。
中国は2023年12月1日から高純度グラファイトを輸出規制品目に指定している。世界最大の天然フレークグラファイト埋蔵量を持つ中国は、この技術革新により半導体やEV産業における競争優位性を一層強化する可能性が高い。
産業への波及効果
技術革新の成果は既に具体的な展開を見せている。CETCは量産段階への移行を実現し、市場での評価も確立しつつある。中国五鉱集団は、保有する大規模な生産設備を活かし、高性能負極材料や原子力級グラファイト、半導体用グラファイトなど、より高度な応用分野への展開を加速させている。この動きは、グローバルなサプライチェーンの再編を促す可能性を秘めている。
Source
- South China Morning Post: China pulls ahead in hi-tech race with graphite purity ‘close to theoretical limit’
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