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中国、顔認識技術規制法を2025年6月施行、訪中者のプライバシー保護を謳うも政府機関の利用については触れず

Y Kobayashi

2025年3月24日

中国のサイバースペース管理局(CAC)と公安部は3月13日、「人脸识别技术应用安全管理办法」(顔認識技術応用安全管理方法)を共同で公布した。この新法令は2025年6月1日から施行され、顔認識技術の使用に明確な制限を設け、個人情報保護の強化とプライバシー懸念への対応を図る。

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顔認識技術規制の主要内容

新法令は中国国内で顔認識技術を用いた顔情報処理活動すべてに適用される。ただし、研究開発やアルゴリズム訓練目的の活動は適用対象外となる。

規制の核心的要件として、顔認識技術の使用には「特定の目的と十分な必要性」が求められ、「個人の権利と利益への影響を最小限」にする必要がある。顔情報処理前に、事業者は処理目的、方法、保存期間などを「明確かつ分かりやすい言語で真実、正確、完全に」個人に通知し、明示的な同意を得なければならない。

重要な規定として、同じ目的を達成できる他の方法がある場合、顔認識技術を唯一の身元確認手段としてはならない。顔認識による身元確認に同意しない個人には、他の「合理的で便利な方法」を提供する義務がある。

プライバシー保護強化の一環として、ホテルの客室、公共浴場、更衣室、公共トイレなどのプライベート空間への顔認識設備の設置は明確に禁止されている。

また、10万人以上の顔情報を保存する組織は、30営業日以内に省級以上のサイバースペース管理部門に届出を行う必要がある。顔情報は原則として顔認識設備内に保存し、インターネットを介して外部に転送してはならない。

背景と訪中者への影響

この法令は、中国でのクラウドコンピューティング、ビッグデータ、AI技術の急速な発展に対応したものだ。顔認識技術は空港や駅のセキュリティチェック、住宅コミュニティのアクセス制御、モバイル決済認証、学校の出席管理など、多様な分野で急速に普及している。

近年、中国では顔認識技術の日常生活への浸透に伴い、プライバシーに関する社会的懸念が高まっていた。2021年の調査では、回答者の75%が顔認識に不安を抱き、87%が商業施設での使用に反対していた。同年7月には、中国最高裁がショッピングモールやホテルなどでの身元確認目的の顔認識使用を制限し、2021年11月には個人情報保護法が施行され、顔データ収集にユーザーの同意を義務付けていた。

新法令は訪中する外国人を含む旅行者に直接的な影響をもたらす。CACは特に「ホテルチェックインや居住区への入場における顔認識技術の乱用」を対象としており、訪中者は以下の権利が保障されるという:

  1. ホテルチェックイン時に顔認識による身元確認を強制されず、代替手段を選択できる
  2. ホテルの客室内での顔認識設備の使用が禁止され、プライバシーが保護される
  3. 顔情報処理の目的と方法について明確な説明を受ける権利がある
  4. 顔認識技術の使用に同意しない場合でも、サービスを利用するための代替手段が提供される

CACの当局者は「この措置は顔認識技術を使用した顔情報処理活動を規制し、個人の個人情報の権利を保護することを目的としている」と説明している。

テクノロジー業界専門家のLiu Dingdingは、Global Timesに対して「この措置は業界の健全で持続可能な発展を支援するものであり、法に基づいた健全な業界発展の道筋を示す指針を提供している」と述べている。

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政府機関への適用は不明確

注目すべき点として、Reutersの報道によれば、この新規則は公安機関による顔認識技術の使用については言及していない。中国政府は犯罪者の追跡だけでなく、反体制派、請願者、ウイグル族などの少数民族の監視にも顔認識技術を活用してきたとされる。今回の新規則には政府機関が免除されるかどうかについては明記されておらず、法執行機関や国家安全保障目的での使用については別の規則が適用される可能性がある。


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