Googleの次期フラッグシップスマートフォン「Pixel 10 Pro」の開発初期プロトタイプとされる実機画像が、中国のSNS「coolapk」経由で大量に流出した。リークされた画像からは、現行モデルPixel 9 Proとの驚くほどの類似性、そして心臓部となる次世代チップ「Tensor G5」の片鱗が明らかになった。果たしてPixel 10 Proはマイナーチェンジに留まるのか、それとも内に秘めた大きな進化があるのだろうか。
白日の下に晒された「ほぼ変わらぬ」外観:Pixel 9 Proとの比較で見えた微細な変化
今回リークされたのは、「DVT1.0」(Design Verification Test:設計検証試験)段階にあるとされるPixel 10 Proのプロトタイプだ。中国のソーシャルメディアプラットフォーム「coolapk」に投稿された画像が、Mystic Leaksなどのリーカーによって拡散され、9to5Googleがこれを報じている。
やはりまず気がつくのは、その外観がPixel 9 Proと瓜二つである点だ。Android PoliceがPixel 9 Proと並べた比較画像を掲載しているが、背面カメラバーの形状、広角・超広角・望遠の3眼カメラ構成、LEDフラッシュと温度センサーの配置に至るまで、一見しただけでは区別がつかないほど酷似している。ベゼルや前面カメラのパンチホールにも顕著な変化は見られない。

しかし、細部に目を凝らすと、いくつかの微細な変更点が見えてくる。
- SIMカードトレイの位置変更: 複数のメディアが指摘しているように、SIMカードトレイは従来の側面から端末上部の左端に移動しているようだ。
- USB-Cポート周辺の変更: 9to5Googleによると、底部のUSB-Cポートを挟むスピーカーとマイクの切り欠きが左右対称のデザインに変更されている。Android Policeは、これによりPixel 10 Proではボトムスピーカーが2つになる可能性を示唆している。
- カメラバーの厚みと仕上げ: カメラバー自体は、わずかに厚みを増しているように見えるとの指摘がある。これは本体シャーシの薄型化を示唆している可能性も考えられる。また、カメラバーを覆うガラスカバーがより側面のエッジ近くまで広がり、周囲の金属フレームが細くなっているようにも見える。
- ミリ波
- アンテナカバー: ミリ波アンテナカバーの位置はPixel 9 Proから変更ないようだ。



これらの変更点は、内部コンポーネントの配置最適化や、わずかながらもデザインの洗練を目指した結果と考えられる。しかし、全体としてデザイン言語を大きく変える意図は見られず、GoogleはPixel 9シリーズで確立したデザインをPixel 10シリーズでも踏襲する方針なのかもしれない。これは、内部の進化、特にTensorチップとAI機能の強化にリソースを集中させる戦略の表れとも解釈できるのではないだろうか。
注目の次世代頭脳「Tensor G5」:明らかになったコア構成と「3nmプロセス」への期待
外観以上に注目が集まるのが、Pixel 10 Proに搭載されると見られる次世代SoC(System-on-a-Chip)、「Tensor G5」だ。リークされたプロトタイプの診断アプリ(DevCheck Proなど)のスクリーンショットからは、その一端が垣間見える。



コア構成の判明
スクリーンショットから読み取れるTensor G5のCPUコア構成は以下の通りだ。
- Arm Cortex-X4 (高性能コア) x1
- Arm Cortex-A725 (パフォーマンスコア、内訳は2コア + 3コアの可能性) x5
- Arm Cortex-A520 (高効率コア) x2
合計8コアという構成は、現行のTensor G4(Pixel 9シリーズに搭載見込み)からコア数自体は変わらないものの、最新世代のArmコアアーキテクチャを採用することで、パフォーマンスと電力効率の向上が期待される。特に、5基搭載されるCortex-A725のクラスタ構成や動作クロックが、実際の性能を左右する鍵となりそうだ。
「5nm表示」の謎と「3nmプロセス」への確信
興味深いのは、診断アプリの表示ではTensor G5が「5nm」チップとしてリストアップされている点だ。しかし、これはほぼ全てのメディアが「誤り」であると指摘しており、Tensor G5はTSMCの3nmプロセス「N3E」で製造されるというのが有力な見方だ。
プロトタイプの初期段階では、ソフトウェアがハードウェア情報を正確に認識・表示できないことは珍しくない。この「5nm」という表示は、まさにその典型例と言えるだろう。TSMCの3nmプロセスへの移行は、Tensorチップの性能向上と省電力化に大きく貢献すると期待されており、この点に関する続報が待たれる。
モデムはSamsung製継続か?
9to5Googleは、プロトタイプ情報からモデムが「g5400i」という型番であることを指摘し、これがSamsung Exynos製モデムを示唆していると分析している。以前、Pixel 10シリーズではMediaTek製モデムが採用されるとの噂もあったため、この情報が事実であれば、モデムに関しては大きな変更はない可能性が出てくる。Tensorチップの課題の一つとされてきたモデム性能が、Pixel 10 Proでどこまで改善されるのかは、引き続き注視が必要だ。
Android 16とPixel 10 Pro:ソフトウェアとハードウェアの融合
リークされたプロトタイプは、次期OS「Android 16」(開発コードネーム:Baklava)の、QPR1(Quarterly Platform Release 1)ではない初期バージョンで動作していることが確認されている。Android Policeにれば、Android 16の安定版は今年6月にもリリースされ、Pixel 10シリーズは8月にこの最新OSを搭載して登場する最初のデバイスになる可能性があるという。
Pixel 10 ProではTensor G5以外のハードウェアアップグレードは限定的である可能性が高いが、その分、多数の新しいAI機能や、4K/120fpsスローモーション、AIツールと連携した8K/30fps動画撮影といったカメラ機能の強化が図られる可能性がありそうだ。これらは、まさにTensor G5とAndroid 16の緊密な連携によって実現される機能と言えるだろう。
プロトタイプには16GBのRAMと256GBのストレージが搭載されていたことも確認されており、ハイエンドモデルに相応しいスペックとなりそうだ。
リーク情報から見えるPixel 10シリーズの輪郭と市場への影響
今回のプロトタイプリークはPixel 10 Proに焦点を当てたものだが、Pixel 10シリーズ全体の動向に関する情報も一部報じられている。
最近もたらされた情報として、Pixel 10シリーズの発表イベントが8月13日に行われる可能性があるとし、ベースモデルとPro XLモデル(Proモデルの大型版か)では100ドルの価格上昇があり得ることも伝えられている。また、カラーバリエーションについても以下の情報が報じられている。
- Pixel 10(ベースモデル): Blue, Iris, Limoncello, Obsidian
- Pixel 10 Pro / 10 Pro XL: Green, Sterling, Porcelain, Obsidian
これらの情報が確かならば、GoogleはAppleのiPhone発表(例年9月)よりも先に自社フラッグシップを市場に投入するという、昨年からの戦略を継続することになる。
Pixel 10 Proは「革新」か「堅実な進化」か – 問われる真価
一連のリーク情報から浮かび上がるPixel 10 Proの姿は、外観上の大きな変化こそ少ないものの、内部ではTensor G5という強力な心臓部と、それを活かすAndroid 16、そして強化されたAI機能によって、着実な進化を遂げようとしているように見える。
デザインの踏襲は、一部のユーザーにとっては物足りなさを感じるかもしれない。これをデザインの成熟と捉えるかは意見が分かれるところだろう。Googleはソフトウェアの革新性で勝負しようとしているのかもしれないが、スマートフォンの進化が踊り場に差し掛かったと言われる中で、Pixel 10 Proが提示する「次世代の体験」が一体どういった物なのか、興味は尽きない。
とは言え、今回のリークはあくまで初期のプロトタイプに関するものであり、最終的な製品版では仕様やデザインが変更される可能性も残されている。しかし、早くもその姿を現したPixel 10 Proは、我々の期待を否応なしに高めてくれる。今後のさらなる情報公開、そして正式発表が今から待ち遠しい。
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