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Pixel 10 Pro/Pro XLスペックリーク情報まとめ。史上最大5,200mAhバッテリーとTensor G5搭載の一方で、見えてきたGoogleの「堅実な進化」

Y Kobayashi

2025年7月1日

日本においても着実にシェアを伸ばしているGoogleのPixelスマートフォン。その次期フラッグシップ「Pixel 10」シリーズに関する新たな情報が、発表が噂される8月20日を前にもたらされた。今回は、プロフェッショナル向けモデルである「Pixel 10 Pro」と「Pixel 10 Pro XL」のスペックの多くがリークされ、その詳細な輪郭が浮かび上がっている。

今回のリークで最も注目すべきは、Pixel 10 Pro XLに搭載されるとみられるPixel史上最大容量のバッテリーと、長年の期待に応えるTSMC製造の新型チップ「Tensor G5」の採用だ。一方で、カメラのハードウェアは前年モデルを継承する可能性が高いという。この一見矛盾した進化は、Googleのどのような製品戦略を映し出しているのだろうか。

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核心はスタミナと頭脳。堅実な進化を遂げるPixel 10 Pro/Pro XL

今回Android Headlinesによってリークされた情報を総合すると、Pixel 10 Proシリーズは、劇的な変化よりも堅実な内部改善に重点を置いたモデルとなりそうだ。デザインに大きな変更はなく、ディスプレイサイズや解像度、輝度といった主要なスペックも現行のPixel 9 Proシリーズを踏襲すると見られている。

スペックGoogle Pixel 10 ProGoogle Pixel 10 Pro XL
ディスプレイ6.3インチ OLED (LTPO)6.8インチ OLED (LTPO)
リフレッシュレート1-120Hz 可変1-120Hz 可変
プロセッサGoogle Tensor G5 (TSMC製)Google Tensor G5 (TSMC製)
RAM16GB16GB
ストレージ128GB / 256GB / 512GB / 1TB256GB / 512GB / 1TB
メインカメラ50MP50MP
超広角カメラ48MP48MP
望遠カメラ48MP (5倍)48MP (5倍)
バッテリー容量4,870mAh5,200mAh (Pixel史上最大)
充電速度 (有線)29W39W
充電速度 (無線)15W (Qi2対応)15W (Qi2対応)

Pixel史上最大、5,200mAhバッテリー搭載のPro XL

Android Headlinesが伝えるところによると、Pixel 10 Pro XLは5,200mAhという、歴代Pixelシリーズで最大容量のバッテリーを搭載する見込みだ。これは前モデルのPixel 9 Pro XLから140mAhの増加であり、一日中安心して使えるスタミナ性能に、さらなる磨きがかかることを意味する。

一方、小型のPixel 10 Proもバッテリー容量は4,870mAhへと増加する。これは前モデル比で170mAhの増加であり、こちらも着実な進化だ。興味深いのは、通常モデルのPixel 10が4,950mAh(リーク情報による)と予測されており、Proモデルの方がわずかに容量が小さい点である。Android Headlinesは、このスペックの逆転に関して、Proモデルにのみ搭載される冷却機構「ベイパーチャンバー」のスペース確保のためではないかと推測している。高性能なプロセッサの熱を効率的に排出し、パフォーマンスを維持するためのトレードオフと考えられる。

待望のTSMC製「Tensor G5」と16GB RAM

スマートフォンの「頭脳」にあたるチップセットには、待望の「Tensor G5」が搭載される。これまでのTensorチップはSamsungとの共同開発だったが、G5では初めて製造プロセスが世界最高峰の半導体ファウンドリであるTSMCに移行すると言われている。

これにより、長年の課題であった発熱と電力効率の大幅な改善が期待される。Googleが推し進める高度なオンデバイスAI(人工知能)機能は、強力かつ効率的なプロセッサを必要とする。TSMC製の安定したチップは、今後のPixelが提供するAI体験の質を飛躍的に向上させるための、まさに土台となるはずだ。

この強力な頭脳を支えるメモリ(RAM)は、Proモデルでは両機種ともに16GBが搭載される見込みで、複数のアプリを同時に使用するような高負荷な作業も、より快適にこなせるようになるだろう。

地味ながらも着実な充電速度の向上

充電速度もわずかながら向上するようだ。Pixel 10 Proは最大29W、Pro XLは最大39Wの有線充電に対応すると見られている。これは前モデルからそれぞれ2Wの増加であり、劇的な変化ではない。OnePlusのようなブランドが示す超高速充電には及ばないものの、巨大なバッテリーを現実的な時間で充電するための、着実な改善と言えるだろう。また、ワイヤレス充電はQi2規格に対応した15Wが維持される見込みだ。なお、Qi2で可能となるマグネット吸着への対応については触れられていない。

カメラはハード据え置き、ソフトウェアで深化か

Pixelシリーズのアイデンティティとも言えるカメラ機能だが、今回のリークでは意外な事実が示唆されている。それは、カメラハードウェアの構成が前年のPixel 9 Proシリーズから変更されない可能性が高いという点だ。

なぜカメラハードウェアは変わらないのか?過去のPixelから見るGoogle流

リークによれば、Proモデルのカメラは引き続き、50メガピクセルのメイン(広角)センサー、48メガピクセルの超広角センサー、そして48メガピクセルの5倍望遠センサーという3眼構成になるという。前面カメラも42メガピクセルで据え置きとされている。

これを聞いて失望する声もあるかもしれない。しかし、これまでのPixelの進化の歴史を見てみると、この動きはある程度は予測された物とも言える。GoogleはかつてPixel 2からPixel 5まで、同じ12.2メガピクセルのメインセンサーを使い続けながら、ソフトウェア、つまりコンピュテーショナルフォトグラフィの技術を磨き上げることで、常に最高レベルの画質を実現してきた歴史がある。

今回のハードウェア据え置きは、現在のカメラシステムが持つポテンシャルを、Tensor G5の新たな処理能力とAIアルゴリズムによって、さらに深く引き出すという「熟成のフェーズ」に入ったことを示唆しているのではないだろうか。ハードウェアの数字競争から一歩引き、写真体験そのものの質を高めるという、Googleらしいアプローチの現れとも考えられる。

Pro専用機能?「Ultra Res Zoom」やマクロ機能の進化

ハードウェアは同じでも、機能面での進化は期待できる。例えば、Proモデル専用の新機能として、ジンバルのような強力な手ブレ補正や、「超解像ズーム(Super Res Zoom)」をさらに進化させた「Ultra Res Zoom」が搭載される可能性も指摘されている。

また、マクロ撮影機能も進化しそうだ。Android Headlinesによると、超広角カメラ(最短撮影距離2cm)に加えて、望遠カメラ(最短撮影距離10cm)でもマクロ撮影が可能になるという。望遠マクロは、より多くの光を取り込めるため、高品質なマクロ写真が期待できる。これもTensor G5の画像処理能力が可能にする新機能の一つだろう。

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見慣れたディスプレイと、深まる「Pro」と「標準」の差

ユーザーが常に触れるディスプレイや、目には見えない内部の仕様にも、Googleの戦略が隠されている。

ディスプレイは高水準を維持。輝度は据え置きか

ディスプレイのサイズは、Pixel 10 Proが6.3インチ、Pro XLが6.8インチと、前年モデルを継承する。1Hzから120Hzまで可変するLTPO技術も引き続き採用され、滑らかな表示と省電力性を両立する。

ピーク輝度については情報が分かれている。Android Headlinesなどは最大3,000ニトと報じているが、9to5Googleは前年モデルと同等に留まる可能性も示唆しており、確定的な情報ではない。いずれにせよ、屋外での視認性も含め、引き続き業界最高水準のディスプレイ品質が提供されることは間違いないだろう。

ベイパーチャンバーとWi-Fi 7、見えない部分での差別化

Googleは、Proモデルと標準モデルの間に、意図的な機能差を設ける戦略を続けている。前述のベイパーチャンバーの有無はその典型だ。これにより、同じTensor G5を搭載していても、長時間のゲームプレイなど高負荷な状況では、Proモデルの方が安定したパフォーマンスを発揮する可能性がある。

さらに驚くべきは、標準モデルのPixel 10ではWi-Fi 7のサポートが見送られる(ダウングレードされる)可能性だ。これが事実であれば、最新の通信規格を利用したいユーザーをProモデルへと誘導するための、明確な差別化戦略と言える。

Pro XLのストレージ戦略に見る、Apple追随と実質的値上げの影

今回のリークで特に議論を呼んでいるのが、ストレージ構成の変更だ。Pixel 10 Proは128GB/256GB/512GB/1TBの4構成が用意されるのに対し、Pixel 10 Pro XLでは最も安価な128GBモデルが廃止され、256GBからのスタートになるという。

この手法は、数年前にAppleがiPhone Pro Maxモデルで採用した戦略を彷彿とさせる。各ストレージモデルの価格を据え置いた場合、最も安い選択肢がなくなるため、Pro XLの購入を検討するユーザーにとってのエントリー価格が事実上引き上げられることになる。これは、巧妙な「実質的値上げ」と見ることもできるだろう。Googleが、より高価な大画面モデルから、さらなる収益性を追求しようとしている姿勢がうかがえる。

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Pixel 10 Proは「買い」か?見えてきたGoogleの製品戦略

ここまでの情報を総合すると、Google Pixel 10 ProおよびPro XLは、「革命的な飛躍」というよりは、「完成度を磨き上げるための堅実なアップデート」と位置づけるのが妥当だろう。

Googleの焦点は、もはやカメラの画素数やプロセッサのクロック周波数といったスペックシート上の競争ではない。TSMC製Tensor G5という強力かつ安定した基盤の上で、AIがもたらす独自のスムーズな体験、バッテリー不安からの解放、そしてソフトウェアによって深化する写真体験といった、ユーザーが日常的に価値を感じられる部分にリソースを集中させているように見える。

カメラハードウェアの据え置きや、一部のマイナーチェンジは、既存のPixel 9 Proユーザーにとっては買い替えを躊躇させる要因になるかもしれない。しかし、数世代前のモデルからのアップグレードや、Androidエコシステムで最高のAI体験を求める新規ユーザーにとっては、非常に魅力的な選択肢となるはずだ。

Pixel 10 Proシリーズは、ハードウェアの頂点を極めることよりも、ハードウェアとソフトウェア、そしてAIが三位一体となって織りなす「体験」の完成度を追求する、Googleの成熟した哲学を体現したデバイスとなるのではないだろうか。その答えが明らかになる8月まで、我々はさらなる情報を待ちたい。


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