Google Playのアプリ内課金は、「30%か、そうでないか」という議論の枠を超え始めた。Googleは2026年6月24日、英国と欧州経済領域向けの新しいBilling choice program、米国で並行する既存プログラム、Playの手数料体系の詳細を発表した。米国、英国、欧州経済領域では6月30日から新制度が始まり、オーストラリアは9月30日、日本と韓国は12月31日、その他地域は2027年9月30日までに広がる。

Googleは決済手段を開放しながら、Play経由で獲得したユーザーや取引から受け取るサービス料を別枠で残した。開発者はGoogle Play Billing、自社の代替決済、外部Webリンクを選べるようになるが、代替決済を使えばGoogleへの支払いがゼロになるわけではない。Google Play Billingを使う場合には、米国、英国、EEAで5%のbilling feeが上乗せされる。代替決済や外部Webリンクではこのbilling feeはかからないが、サービス料は残る。

この設計は、アプリストアを配布と決済の一体サービスとして扱ってきた従来のモデルを、配布・発見・安全性・課金処理に分けて値付けし直す。Googleは3月の時点で、Epic Gamesとの紛争を世界的に解決したと説明し、決済選択、登録済みアプリストア、低い手数料、開発者向けプログラムを組み合わせてAndroidとGoogle Playの事業モデルを変える方針を示していた。ただし登録済みアプリストアの米国展開については、同じ発表内で裁判所の承認が条件になると書いている。6月の発表は、そのうちPlay課金の実務に直結する部分を、日付と料率まで落とし込んだものになる。

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6月30日に変わるのは、外部決済の可否より手数料の分け方だ

Googleの説明では、Google Playは195以上の市場と300以上のローカル決済手段を扱っている。この基盤を使う場合と使わない場合を分けるため、新制度ではservice feeとbilling feeが切り離される。service feeは、Google Playを通じた配布、発見、安全性、開発者支援などに対する料金として位置づけられ、Google Play Billing、代替決済、外部Webリンクのいずれを選んでも発生する。

billing feeはGoogle Play Billingを使った取引だけにかかる。米国、英国、EEAではこのbilling feeが5%に設定された。Googleは他地域のbilling feeについて、今後発表するとしている。外部決済はGoogleの決済処理費を避ける選択肢になるが、Play経由のユーザー獲得やストア運営への支払いからは離れられない。

新しいBilling choice programは、英国とEEAのユーザーにデジタルサービスやデジタルコンテンツを提供する全開発者が対象になる。米国では、既存のalternative billing in the United Statesとexternal content linksのプログラムが並ぶ形で扱われる。GoogleのHelp Centerは、米国プログラムについて「現時点で変更はない」としているため、米国では新しい料率体系と既存プログラムの運用条件を分けて読む必要がある。

Google Playの基本ポリシーも残る。Playで配布されるアプリがデジタル機能やデジタルコンテンツに課金する場合、原則としてGoogle Play Billingを使う必要があり、例外は対象国・地域でプログラムに登録した場合などに限られる。今回の発表はこの原則を消すのではなく、例外として許される決済経路を広げ、そのうえでGoogleが受け取る料金を再定義する。

料率は「新規インストール」と「既存インストール」で分かれる

新制度の料率は、ユーザーがいつGoogle Playからアプリを初回インストールしたか、またはPlay以外から入手したアプリをいつPlayで初回更新したかで分かれる。地域ごとの新制度開始日以降なら「new install」、それより前なら「existing install」として扱われる。この判定日は、米国、英国、EEAでは2026年6月30日、日本と韓国では2026年12月31日になる。

年間100万ドルまでの収益については、service feeは10%から始まる。自動更新サブスクリプションにも10%のservice feeが適用される。Google Play Billingを使えば、対象地域ではここに5%のbilling feeが加わる。サブスクリプションで自社決済や外部Webリンクを使う開発者は10%のservice feeで済むが、Google Play Billingを使う場合は決済処理分が別に乗る。

年間100万ドルを超える領域では、非継続課金の扱いがインストール時期で変わる。new installの標準service feeは、アプリ内または外部Webリンク経由の非継続取引で20%、有料アプリや有料ゲームの初回購入で20%だ。Apps Experience ProgramやGames Level Up Programの条件を満たせば、この部分は15%まで下がる。

existing installでは負担が重くなる。標準料率は、アプリ内の非継続取引が25%、外部Webリンク経由の非継続取引が20%、有料アプリや有料ゲームの初回購入が25%になる。新しいアプリ・ゲーム向けプログラムに参加して条件を満たすと、それぞれ20%15%20%まで下がる。Google Play Billingを使う取引では、該当する地域のbilling feeが別途加わる。

この設計は、既存ユーザーを抱える大規模アプリほど価格設計を難しくする。同じ商品でも、ユーザーの地域、インストール日、購入経路、SKUが継続課金か非継続課金かによって、開発者側の実質手取りが変わるためだ。外部決済を入れれば手数料表が単純になるわけではなく、決済システムと売上集計の両方でPlayのインストール時期を扱う必要が出る。

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外部決済は自由化ではなく、APIと報告義務を伴う選択肢になる

Billing choice programに参加する開発者は、Google Play Billingと、代替決済または外部Webリンクのどちらかをユーザーに並べて提示しなければならない。開発者はGoogleが描画するchoice screenを使うことも、自社でchoice screenを実装することもできる。ただし自社実装の場合は、Play Consoleで設定し、GoogleのUXガイドラインに従う必要がある。

実装条件は厳しい。Billing choiceを使うにはPlay Consoleでの登録、Play Billing Library 9.1以上、Billing choice APIの組み込みが必要になる。代替決済や外部リンクで成立した認可済み取引は、24時間以内にGoogle Playへ報告しなければならない。APIが発行するexternal transaction tokenは、取引が外部リンク経由かアプリ内代替決済かを識別し、service feeの検証に使われる。

決済面の責任も開発者へ移る。クレジットカードやデビットカードを扱う場合はPCI-DSSへの準拠が求められ、代替決済で販売した商品やWebサイト上の購入については、開発者側が顧客サポート、返金、未承認取引への異議申し立て手段、注文履歴やサブスクリプション管理のリンクを用意する必要がある。Google Play Billingを外すほど決済手数料は下がりやすくなるが、運用責任は開発者側に寄る。

choice screenの見せ方にも細かい制約がある。代替決済の選択肢には、購入を履行しサポートを提供する主体を明確に表示する必要がある。Google Play Billingと代替決済のボタンは、サイズ、文字、コントラスト、タップ領域、ロゴの扱いを同等にし、ユーザーが比較できる位置に置く。外部Webリンクへ進ませる場合は、ユーザーがWebページへリダイレクトされることを明示しなければならない。

Googleは競争上の圧力を受けて決済経路を広げながら、ユーザー体験と課金報告の主導権を手放し切っていない。Google Play Billingを使わない取引でも、ユーザーへの提示、親による管理、取引トークン、報告期限、service feeの検証はPlay側の制度に組み込まれる。外部決済の導入は、課金SDKを差し替えるだけの作業では済まない。

低い料率は、アプリ品質とエコシステム対応の条件付きになる

Googleは手数料を下げる代わりに、Apps Experience Programと刷新版Games Level Up Programを前面に出した。これらは割引だけを配る制度ではなく、Googleが望むアプリ体験やゲーム体験を満たす開発者に、新しいprogram rate cardを与える仕組みである。対象地域での提供開始は、米国、英国、EEA、オーストラリアが2026年9月30日、日本と韓国が12月31日、その他地域が2027年9月30日だ。

Apps Experience Programでは、パスキーや承認済みSSOによる安全なサインイン、デバイス復元時の自動サインイン、Engage SDK、Play Content、Androidのデザイン体系、複数フォームファクターへの対応、クラッシュやANR、メモリ使用量、jankのしきい値などが条件として並ぶ。Googleは、このプログラムがPlayストアのランキングや露出を直接上げるものではなく、利益はprogram rate cardだと説明している。

Games Level Up Programは、ゲーム向けにGoogle Play Games Servicesとの結びつきを強める。Play Games Services v2 SDK、Sidekick、Achievements、Game Stats、Rewards、Cloud Save、大画面対応、Google Play Games on PC、コントローラ・キーボード・マウス入力、60fpsやメモリ使用量、Vulkan対応などがガイドラインに含まれる。既存のLevel Up参加ゲームでも、新しい料率を自動的に得られるわけではない。

この条件設定は、手数料引き下げを価格競争だけで終わらせないための設計だ。Googleは、決済処理を外した開発者からもservice feeを取る一方で、低い料率を得るにはAndroidの複数デバイス対応、Playの発見面、サインイン、ゲームサービス、品質指標へより深く対応するよう促している。開発者にとっては、料率を下げるための交渉材料が、売上規模だけでなく実装ロードマップにも広がる。

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日本の開発者は12月31日までに、決済より先に集計設計を見直す必要がある

日本と韓国でのservice fee変更とExpanded Billing Choiceの開始日は2026年12月31日だ。米英欧から半年遅れるため、国内開発者には準備期間がある。ただし準備すべき範囲は、代替決済事業者の選定だけではない。ユーザーのインストール日、地域、SKU種別、決済経路、Google Play Billing利用有無を組み合わせて、手数料と売上を正しくつかむ仕組みが必要になる。

外部Webリンクを使う場合は、購入完了までの体験も見直さなければならない。アプリ内でユーザーに遷移先と目的を説明し、外部サイトで購入した後の注文履歴、サブスクリプション管理、返金、サポート導線を自社で持つ必要がある。サブスクリプション中心のアプリでは10%のservice feeが見えやすいが、決済、税、返金、カード不正、サポートの総コストを合わせて判断しないと、表面上の料率だけでは採算を読み違える。

今回のGoogle Play改定は、アプリストア手数料の引き下げとしては大きい。だが、開発者にとってより実務的な変化は、手数料が一枚の表から、ユーザーのインストール時期、地域、決済手段、UX要件、品質プログラムを組み合わせた制度へ変わることだ。Play Billingを使い続ける開発者にも、外部決済へ移る開発者にも、2026年後半の焦点は「どの決済手段が安いか」ではなく、「どの条件で、どのユーザーの取引を、どの料率で処理するか」になる。