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Google Play、2025年11月よりアプリに「16KBページサイズ」対応を義務化へ:Androidのスマホ体験はどう変わる?

Y Kobayashi

2025年5月9日

GoogleがAndroidのパフォーマンス向上に向け、大きな一歩を踏み出した。これまで長らく標準とされてきた4KBのメモリページサイズから、新たに16KBページサイズへの対応をアプリ開発者に求めるという。この変更は、2025年11月1日より、Android 15以降をターゲットとする全ての新規アプリおよび既存アプリのアップデートに適用される。一体なぜ今、このような変更が行われるのか?そして、私たちのスマートフォン体験にどのような影響を与えるのだろうか?

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Androidの“メモリ”の仕組みが変わる?「メモリページサイズ」とは何か

私たちのスマートフォンがアプリを動かす際、CPUはメモリ上のどこに何のデータがあるかを管理している。この管理を効率的に行うため、メモリは「ページ」と呼ばれる固定サイズの区画に分割される。Androidは歴史的に、このページサイズを4KBとして最適化されてきた。

しかし、デバイスに搭載されるRAM(メモリ)の容量が増え続ける現代において、この4KBという単位は必ずしも最適とは言えなくなってきた。メモリ管理ユニット(MMU)という専用ハードウェアが、プログラムが使用する仮想的なメモリアドレスを物理的なメモリアドレスに変換する際、ページサイズが小さいと、より多くの管理作業(ページテーブルエントリの記入など)が必要になる。 想像してみてほしい。小さな箱で大量の荷物を整理するより、大きな箱を使った方が手間が省けるように、ページサイズを4KBから16KBへと4倍にすることで、OSの「事務処理」が大幅に削減されるのだ。 これにより、システムはアプリの動作やゲームの描画といった、ユーザー体験に直結する処理により多くのリソースを割けるようになる。

Android 15では、OS自体がこのページサイズの変更に対応できるようリファクタリングされ、特定のページサイズに依存しない設計となった。 これにより、より大容量のRAMを搭載したデバイスが16KBのような大きなページサイズを採用し、その恩恵を最大限に引き出す道が開かれたのだ。

Google Playが示す新たな指針:2025年11月1日からの変更点

Googleは、この16KBページサイズへの移行を本格的に推進するため、Google Playストアにおけるアプリの提出要件を変更する。

主な変更点:

  • 適用開始日: 2025年11月1日
  • 対象アプリ: Android 15以降をターゲットとする全ての新規アプリ、および既存アプリのアップデート
  • 要件: 16KBページサイズへの対応が必須となる。

Googleによれば、この変更に対応しない場合、将来的に16KBページサイズが主流となったAndroidデバイスでアプリが正常に動作しない可能性があるという。

具体的に何が改善されるのか?期待されるパフォーマンス向上

16KBページサイズへの移行によって、具体的にどのようなパフォーマンス向上が見込めるのだろうか。Googleは以下の数値を公表している。

  • アプリの起動速度向上: 様々なアプリで3%から最大30%の高速化
  • バッテリー駆動時間の改善: 平均で4.5%の消費電力削減
  • カメラの起動速度向上: 4.5%から6.6%高速化
  • システム起動時間の短縮: Androidデバイスの起動が約8%速くなる

これらの数値は、特にアプリの起動速度において「最大30%」という点が目を引くが、全てのアプリで一律にこの効果が得られるわけではない点に注意が必要だ。しかし、全体としてシステムの効率が向上し、よりスムーズで快適な操作感が期待できることは間違いないだろう。Pixel 8およびPixel 9シリーズでは、既にこの16KBページサイズ対応のテストが可能となっている。

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開発者はどう対応すべきか?互換性確保への道筋

今回の要件変更に対し、アプリ開発者はどのような準備を進めるべきだろうか。Googleは、多くのアプリは既に互換性を持っているか、最小限の修正で対応可能だと見ている。

  • ネイティブコードを含まないアプリ: 基本的に変更の必要はないとされる。
  • ネイティブコードを含むライブラリやSDKを使用しているアプリ: 利用しているライブラリやSDKを、16KBページサイズに対応したバージョンにアップデートする必要があるかもしれない。
  • 独自にネイティブコードを記述しているアプリ: より新しいツールチェーンを使用してアプリを再コンパイルし、低レベルのメモリ管理に互換性のないコードが含まれていないか確認する必要が出てくるだろう。

Googleは、開発者が自身のアプリの互換性を確認できるよう、Play Consoleの「アプリアセットエクスプローラ」で情報を提供している。 また、実際に16KBページサイズの環境でアプリをテストし、ユーザーが問題なく利用でき、最高のパフォーマンスを発揮できることを確認するよう推奨している。

主要な開発プラットフォームの対応状況としては、React NativeやFlutterといった人気のSDKプロバイダーは既に対応バージョンを提供済みだ。 ゲーム開発者にとって重要なゲームエンジンでは、Unityは16KBに対応しており、Unreal Engineも近日中に対応予定とされている。 開発者にとっては、依存しているライブラリやSDKの対応状況を早期に確認し、計画的に準備を進めることが重要となるだろう。

Googleはなぜ今、この変革を推進するのか?

今回の16KBページサイズへの移行は、単なる技術的なアップデートに留まらない、Googleの明確な戦略に基づいていると考えられる。

まず、ハードウェアの進化への追随だ。スマートフォンに搭載されるRAMは年々大容量化しており、従来の4KBページサイズではメモリ管理のオーバーヘッドが無視できないレベルになってきている。より効率的なメモリ管理は、高性能なハードウェアのポテンシャルを最大限に引き出すために不可欠だ。

次に、Android 15における布石。前述の通り、Android 15ではOSレベルでページサイズ非依存のアーキテクチャが採用された。これは、今回の16KBページサイズへの移行をスムーズに進めるための重要な下準備と言えるだろう。Googleは、OSとアプリエコシステム全体で、この新しいメモリ管理方式への移行を協調して進めようとしているのだ。

そして何より、ユーザー体験の向上への強いコミットメントが伺える。アプリの起動が速くなり、バッテリーが長持ちし、カメラが素早く起動する。これらは全て、ユーザーが日常的にスマートフォンを利用する上で直接的なメリットとなる。Googleは、こうした細かな改善を積み重ねることで、Androidプラットフォーム全体の競争力を高め、ユーザーにとってより魅力的なエコシステムを構築しようとしているのではないだろうか。

より快適なAndroid体験への期待

この技術的な変更は、最終的にAndroidユーザーにどのような恩恵をもたらすのだろうか。

最も直接的なメリットは、やはりパフォーマンスの向上だろう。アプリの起動が速くなれば、日常のちょっとした待ち時間が短縮され、よりストレスフリーな操作が可能になる。バッテリー消費の改善は、スマートフォンの利用可能時間を延ばし、充電の心配を少しでも軽減してくれるはずだ。

しかし、これは恩恵の一部に過ぎない。効率的なメモリ管理は、将来的により高度で複雑なアプリや機能をスムーズに動作させるための基盤となる。AI機能のさらなる統合、よりリッチなグラフィック表現、マルチタスク性能の向上など、16KBページサイズがもたらす恩恵は、今後数年かけて徐々に明らかになっていくだろう。

今回のGoogleの決定は、Androidエコシステムが新たな成長段階へと進むための重要な一歩と言える。開発者にとっては一定の対応が求められるものの、その先には、より快適でパワフルなAndroid体験が待っているはずだ。


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