Intelの次世代PC向けCPU「Nova Lake」で、製造分担がTSMC中心との従来想定からIntel Foundry中心へ反転したとの観測が出た。KeyBanc Capital Marketsのリポートは、IntelがNova Lakeのタイルの8〜9割を内製すると予測する。これまで想定されていたのは、6〜7割をTSMCのN2で作る配分だった。
ただし、これらの比率とIntel 18Aの歩留まりは、Intelが公表した数値ではない。Intelの資料が確認しているのは、18Aの歩留まりが社内予測を上回り、生産量が増えていることまでだ。未発表の製造比率を事実として先取りするより、その通りになった場合にIntelの収益と供給網がどう変わるかを見るほうが、この情報の意味を正確に捉えられる。
60〜70%外注から8〜9割内製へ
7月14日にX上で公開されたKeyBancリポートの抜粋は、従来の予想を大きく書き換えた。それによると、Nova Lakeタイルの60〜70%をTSMCのN2に外注する計画だったという。ところがIntel 18Aの性能と歩留まりが改善したことを受け、Intel Foundryでの内製比率を80〜90%まで引き上げる見込みに変わったとされる。
KeyBancは方針変更の理由に、18Aの改善に加え、TSMCの価格上昇を挙げた。Intel FoundryがTSMCの競合として信頼性を増した結果、IntelへのN2の価格条件が他社より不利になり、Nova Lakeチップレットの最適化支援も限られていると分析する。ただ、この価格・支援を巡る説明を、IntelもTSMCも認めていない。
「8〜9割内製」は、TSMCを完全に外すことを意味しない。単純に読めば、外部生産は1〜2割残る。しかも公開抜粋は、デスクトップとノートPCのどの製品群を指すのか、コンピュートタイル以外を母数に含むのかを明らかにしていない。「TSMCを捨てる」とまで広げるには、情報が足りない。
Intelの開示から確認できるのは改善の方向
Intelの開示は、KeyBancの見立てと同じ方向を示している。2026年4月の第1四半期決算で、CEOのLip-Bu Tan氏は18Aの歩留まりが社内予測を上回り、工場から得られる完成品が増えていると説明した。18A製のCore Ultra Series 3も、量産の本格的な拡大に入っている。
ただし数字は公表していない。KeyBancは18Aの歩留まりが前四半期の65%から85%に上がったとするが、この比率がどのダイの、どの欠陥基準を測ったものかは公開抜粋からわからない。Intelの「社内予測を上回る」という表現は改善の方向を裏づけるが、85%を追認する証拠ではない。
6月には改良版のIntel 18A-Pがリスク生産に入った。Intelによると、18A比で同じ消費電力なら性能が9%上がり、同じ性能なら電力を18%減らせる。熱抵抗も20〜40%改善し、18Aと設計ルールの互換性を持つ。とはいえ、IntelはNova Lakeに18A-Pを使うとは発表していない。この数値は、18A系の改良がロードマップ通りに進んでいることを示す材料であり、Nova Lakeの仕様表ではない。
2026年末投入なら、土壇場のノード変更は難しい
Nova Lakeの発売時期について、Intelは2026年末と説明している。そこから逆算すると、7月に入ってから同じ設計のタイルをTSMC N2からIntel 18Aへそのまま移すシナリオは考えにくい。半導体のダイは、製造ノードごとに物理設計とライブラリ、タイミングを作り込むためだ。
Intel自身も2025年のForm 10-Kで、TSMC製タイルの供給が止まった場合、別の供給先に置き換えるには「大幅な遅延」が生じる可能性が高いと記している。各タイルが特定の製造プロセス向けに設計されるからだ。TSMCもN2を2025年第4四半期に高量生産へ移し、N2Pは2026年後半の量産開始を予定している。両社の先端ノードは、すでに製品化を前提とする時期にある。
したがって、KeyBancの見立てが正しいなら、変更は今回のリポートより前に社内で始まっていたか、18A版とN2版を並行開発した上で製品ごとの数量配分を変えたと考えるほうが自然だ。公開情報だけでは、どちらかは確定できない。一つのマスク設計を直前に単純移植したとみなせる根拠もない。
18Aへ寄せるほど、粗利益と稼働率の賭けが大きくなる
Intelが内製比率を高めるなら、技術的な自信に加え、経済上の理由もある。Form 10-Kは、外部ファウンドリへ依存するとIntelの利益率が下がる可能性を明記している。TSMCへのウエハ支払いを自社工場の稼働に振り替えられれば、製品部門と製造部門を合わせた全社の採算は改善しやすくなる。先端ウエハの供給が細る局面で、自社製品の生産量を握れる利点も大きい。
だが、内製に戻せば原価が自動的に下がるわけではない。Intel Foundryは2026年第1四半期に54億2100万ドルの売上高を計上した一方、24億3700万ドルの営業赤字を出した。18A製ウエハの割合が増えたことで、製造原価も押し上げられている。歩留まりが上がり、1枚のウエハから取れる良品ダイが増えて初めて、内製の利点が損益計算書に現れる。
容量配分の難しさも残る。Intelは第1四半期に、社内と外部の供給制約でPC向けの需要を満たせなかったと開示した。同時にサーバーCPUの需要も強く、社内工場の増産を進めている。Nova Lakeを大きく18Aへ戻すなら、PC向けの数量と高利益のサーバー向けウエハを同じ工場網でどう配るかが、出荷と採算の両方を左右する。
確認は製品分解と次回開示で始まる
Intelは、Nova Lakeの製造ノードとタイルの割り当てをまだ公表していない。まず決算資料で確かめるべきは、85%という数字そのものより、18Aの良品数が増える速さとウエハ原価の低下だ。Intel Foundryの赤字が縮小し、製品部門の利益率も上がるなら、内製化の経済性に説得力が出る。
発売後は、ダイ上のマーキングやパッケージ分解から、18A製とTSMC製のタイルがどのモデルに入ったかが見えてくる。デスクトップとノートPCで割り当てが違うのか、TSMC分が1〜2割にとどまるのかがわかれば、KeyBancリポートの正確さも判定できる。Nova Lakeの出荷が2026年末の予定を守り、18Aの原価も下がることが、今回の観測をIntelの競争力改善に結びつける条件になる。