HOMOLABが、iPhone 18 Pro Maxの1TBモデルで長時間の書き込み性能が大きく落ちる測定結果を公開した。容量を60%使った状態から書き込みを続けると、後半の一段階で平均45MB/s、最低約1.1MB/sまで低下したという。QLC NANDを搭載するとされる大容量構成について、保存できる量と、高速に書き込み続けられる量の違いが数字で見えてきた。大きなファイルを扱う人にとって気になる結果だが、最低値だけで普段の使い勝手を判断すると、この試験が示す問題を取り違える。

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最低1.1MB/sを記録した、連続書き込みの後半

HOMOLABの測定で対象になったのは、QLC構成とされるiPhone 18 Pro Maxの1TBモデルだ。公開された測定図には「128K LT」と記され、空き状態と、容量を60%使った状態での連続書き込みが示されている。以下の数値は転載されたHOMOLABの測定図をもとにしており、動画全編や生ログは確認できていない。

試験では、最初の高速なSLCキャッシュ、その後の疑似TLCキャッシュ、さらにQLCへの書き戻しという段階が区別されている。SLCキャッシュに余裕がある間は約3,000MB/sで書き込めるが、その速度が最後まで続くわけではない。

HOMOLABの1TBモデル連続書き込み試験 空き状態から開始 容量60%使用から開始
SLCキャッシュ容量 249.7GB 58GB
疑似TLCキャッシュ段階の平均 578MB/s 396MB/s
QLCへの書き戻し段階の平均 79.4MB/s 45MB/s
QLCへの書き戻し段階の最低 25.6MB/s 1.142MB/s

出典:空き状態の測定図容量60%使用時の測定図。速度と容量は図中の表記に沿った。

この比較で目を引くのは、最低速度の落ち込みに加え、書き込みを速く受け止めるキャッシュ自体も小さくなっていることだ。データが入った端末では、空き状態の端末と同じ量を同じ速さで保存できるとは限らない。

ただし、60%という数字は試験開始時の使用率である。そこから負荷をかけ続けた後の結果を、「容量が60%を超えると毎秒1.1MBになる」と読み替えることはできない。最低1.142MB/sがどの程度の時間続いたかも、確認した図だけでは分からない。同じ段階の平均45MB/sと併せて読む必要がある。

空き容量約400GBでも、高速キャッシュは58GB

容量60%使用時の図には、使用済み600GBに対して「残り398.5GB」とある。一方、SLCキャッシュは58GBだ。まだ約400GB保存できることと、その全量を高速に書き込めることは別の話である。

違いの背景には、NANDフラッシュの記録方式がある。TLCは1つのセルに3ビット、QLCは4ビットを保存する。Samsungの技術資料が説明するように、QLCでは16段階の電圧状態を識別する必要があり、TLCの8段階よりも細かい制御が要る。同じセル数なら多くのデータを収められる半面、書き込み性能との両立が難しくなる。

そこで一部の領域を、1セルに1ビットを記録するSLC相当として使う。記録密度を下げる代わりに、データを速く受け取るための場所にする仕組みだ。保存量が増えれば、キャッシュに回せる領域や制御の仕方も変わる。今回の249.7GBから58GBへの変化は、空き容量を多く持つことが、書き込み性能にも関係する例になっている。

HOMOLABは中間の段階を「疑似TLCキャッシュ」と説明している。これはQLCのセルをTLC相当の方式で利用するという意味で、別のTLCチップが追加されていることを示すものではない。キャッシュへ一時的に置いたデータは、容量を効率よく使うために書き戻す必要がある。

さらにNAND内部では、有効なデータを移して古いブロックを消去し、新たな書き込みに使えるようにする。ガベージコレクションと呼ぶ処理だ。KIOXIAの技術資料は、この処理によって、端末から渡された量より多くのデータがNAND内部で書き込まれる「書き込み増幅」が起きると説明している。

測定図も、速度が落ちた段階をQLCへの書き戻しと記している。したがって、平均45MB/sをQLCセル単体の書き込み速度と決めつけるのは適切ではない。キャッシュの制御や内部のデータ移動を含めた、端末としての結果と捉えるべきだ。逆に、最初の約3,000MB/sだけを見ても、大量保存時の待ち時間は分からない。

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38%差は、どちらを基準にするかで意味が変わる

HOMOLABの混合読み書きの比較図では、1TBのQLC構成と512GBのTLC構成が比較されている。低い並列度の「Q1T1 MIX」の掲載スコアは、それぞれ8,168と11,285。この差を百分率に直すと、基準にした側によって数字が変わる。

HOMOLABの混合試験 1TB QLC構成 512GB TLC構成 TLC構成を基準にしたQLC構成の低下率
Q1T1 MIX 8,168 11,285 約27.6%
Q4T4 MIX 32,219 35,992 約10.5%

Q1T1 MIXのQLC 8168対TLC 11285は、QLCを基準にTLCが38.2%高く、TLCを基準にQLCが27.6%低い。

低下率は「両者のスコア差÷TLC構成のスコア」で算出した。Q1T1 MIXなら、(11,285−8,168)÷11,285で約27.6%となる。一方、同じ差をQLC構成の8,168で割ると約38.2%になる。

つまり「TLCが約38%高い」と「QLCが約38%低い」は同じ意味ではない。比率を比較するときは、元の値と分母をセットで見る必要がある。

また、容量も端末構成も揃え、NAND方式だけを入れ替えた比較ではない。図のスコア算出に使う重みや試験の全設定も確認できていないため、この表からアプリが約27.6%遅くなるとは言えない。確認できるのは、掲載された混合負荷の指標ではQLC構成が低く、その差の大きさも並列度によって変わることだ。

動画撮影への影響は、保存先を分けて考える

AppleはiPhone 18 Proの仕様で、ProResの最大4K・120fps撮影に「外部録画」という条件を付けている。この条件の撮影データは外部ストレージへ書き込むため、今回の内蔵NANDの結果をそのまま録画可否の判定に使うことはできない。内蔵ストレージへ保存する撮影と、外付けストレージへ直接録画する撮影では、調べるべき保存先が異なる。

内蔵ストレージを使う場合も、連続書き込み試験と撮影アプリの動作は一致しない。入力されるデータ量と、キャッシュから内部へ書き戻せる量の釣り合いが関係する。キャッシュが58GBだからといって、それを動画のビットレートで割るだけで「何分後に録画できなくなる」と計算するのも早計だ。

大量のファイルコピーやバックアップ復元は、書き込みが続く用途として確かめる価値がある。長時間の高ビットレート撮影も同様だ。ただ、今回確認した図は実アプリでの録画失敗や復元の遅延を示してはいない。普段の操作に必ず影響するという結論も、影響しないという保証も出せない。

耐久性も、速度とは分けて評価したい。QLCには一般にTLCより書き換え耐久性で不利な面があるが、製品としての寿命は容量や内部の書き込み量、誤り訂正などにも左右される。Appleの当該仕様ページにはNAND方式や書き込み耐久量の記載がなく、この測定から使用可能な年数を推定することはできない。1TBモデルの全個体が同じNAND構成かどうかも、今回の図では確定しない。

大容量モデルを選ぶ人が欲しいのは、多くのデータを保存した後も、撮影や移行作業を無理なく続けられる端末だ。判断に役立つのは、データが入った状態で、実際のアプリを使い、必要な時間だけ保存を続けた試験になる。その際に温度条件と保存先も揃えば、容量を増やすことで得られる余裕と、長い書き込みで生じる待ち時間を、用途に即して比べられる。