Metaの新型AIモデル「Muse Spark 1.1」が、独立した評価環境でGLM-5.2と同じ総合点に達した。Artificial Analysisが2026年7月10日に公表した結果では、両モデルのIntelligence Indexは51。Muse Spark 1.1はコード分野で71.3を記録し、GLM-5.2の68.8を上回った。評価タスク1件当たりの推定費用も0.26ドルで、GLM-5.2の0.37ドルより約3割低い。ただし、この差をそのまま「Museの全面勝利」と読むことはできない。Metaのモデルは米国で公開プレビュー中の閉鎖型APIであり、GLM-5.2は重みを入手して自社運用できる。開発者は点数に加え、実行基盤をどこまで自分で管理したいかも合わせて選ぶことになる。
総合51点で並び、コード評価は2.5点差
Artificial AnalysisのIntelligence Index v4.1は、9種類の評価を一つの指数へまとめる。構成比はエージェント課題が34%、コーディングと科学推論が各24%、一般能力が18%だ。コード生成の競技に限定せず、端末内の実タスクや銀行業務でのツール利用、長文理解、知識の信頼性まで測る。運営側は指数の95%信頼区間を1点未満と見積もっている。
この枠組みで、Muse Spark 1.1の総合点は初代の43から51へ上がった。GLM-5.2のmax設定、GPT-5.4のxhigh設定、GPT-5.6 Lunaのmax設定と同点である。伸びが大きかったのはコード関連で、Coding Indexは59から71へ12点上昇した。科学コード生成を測るSciCodeも52%から58%へ6ポイント伸び、Artificial Analysisが評価したモデルの中では3位に入った。
GLM-5.2との違いは、総合点より内訳に出る。Coding IndexはMuse Spark 1.1が71.3、GLM-5.2が68.8で、差は2.5点だった。一方、両者の総合点は51で並ぶ。Museがコード評価で先行したことと、あらゆる能力で上回ったことは同義ではない。
Meta自身も、7月9日の発表で1.1の重点をコーディングと長時間動くエージェントへ置いた。100万トークンの文脈を管理し、過去の行動を検索して必要な手順だけ残すよう圧縮する。主エージェントが計画を立て、副エージェントへ仕事を並列に渡す訓練も施した。3カ月で8点伸びた背景には、モデル単体の知識に加えて、道具を使いながら作業を続ける能力の強化がある。
0.26ドルを作った9400万トークン
料金表だけを見ても、費用差の理由は分からない。Artificial Analysisは、各評価で使った入力とキャッシュの費用を集計し、推論と回答に使った分も加える。そのうえでタスク数と指数の構成比によって加重平均する。Muse Spark 1.1は一連の評価で9400万出力トークンを使い、GLM-5.2は1億4100万だった。Museは出力を約3分の1少なく抑えたことになる。
そこへMetaの低い単価が重なる。Meta Model APIの料金は入力100万トークン当たり1.25ドル、出力は4.25ドルだ。推論中に生成したトークンも出力として請求されるため、長く考えるモデルほど費用が増える。Artificial Analysisが算出したタスク単価はMuseが0.26ドル、GLMが0.37ドル。0.11ドルの差は、約29.7%に当たる。
| Artificial Analysisの測定 | Muse Spark 1.1 xhigh | GLM-5.2 max |
|---|---|---|
| Intelligence Index | 51 | 51 |
| Coding Index | 71.3 | 68.8 |
| 評価全体の出力トークン | 9400万 | 1億4100万 |
| 推定タスク費 | 0.26ドル | 0.37ドル |
| 出力速度 | 116.3トークン/秒 | 191.4トークン/秒 |
低コストには別の面もある。Museの出力速度は毎秒116.3トークンで、GLM-5.2の191.4トークンには届かない。大量の処理を短時間で流したい場合、1件当たりの安さと処理量のどちらを優先するかで判断は変わる。MuseはGLM-5.2より出力を33.3%少なく抑えたが、9400万トークンが市場全体の最少という意味ではない。
「GLM-5.2より上」と言える範囲
ベンチマークの順位は、評価項目と実行環境を固定したときに成立する。Artificial Analysisの71.3対68.8は、同社のCoding Indexで各モデルを指定の推論強度に設定した結果だ。利用者のコードベース、プログラミング言語、道具の設計が変われば、成功率も順序も動き得る。
Metaの112ページに及ぶ評価報告も、別の限定を示している。同社の総合能力表はMuse Spark 1.1をGPT-5.5、Claude Opus 4.8、Gemini 3.1 Proと比べており、GLM-5.2を含まない。コーディング評価では、MuseがTerminal-Bench 2.1で80.0、SWE-Bench Proで61.5、DeepSWE 1.1で53.3を記録した。だがTerminal-BenchではGPT-5.5が83.4、Claude Opus 4.8が82.7、DeepSWEではGPT-5.5が67.0だった。Museがすべてのコード課題で首位に立ったわけではない。
評価報告は、競合モデルの自己申告値を使う場合があることや、共通のハーネスが各社モデルの強みに最適化されていない可能性も明記する。Metaの発表値とArtificial Analysisの独立評価は、対象モデルも手順も異なる。両方を足し合わせて新しい順位表を作ることはできない。
知識の信頼性にも同じ注意が要る。Artificial AnalysisのAA-Omniscienceでは、Muse Spark 1.1の幻覚率が初代の73%から38%へ下がった。一方、回答を試みた割合は95%から82%へ低下し、試みた問題の正答率は45%から41%でほぼ横ばいだった。スコア改善の主因は、分からないときに答えない判断である。誤答を減らした成果は大きいが、知識そのものの正確さが上がったとまでは言えない。
閉鎖型APIと公開重みでは価格の意味が違う
Muse Spark 1.1とGLM-5.2は、提供形態が対照的である。MuseはMetaのAPIを通じて使う独自モデルで、公開プレビューは米国の開発者に限られる。OpenAI互換とAnthropic互換の形式を備え、既存のエージェントを接続しやすい。だが実行場所、料金改定、提供地域はMetaが決める。
GLM-5.2はZ.aiがMITライセンスで重みを公開した7530億パラメータのモデルだ。100万トークン文脈に対応し、4層ごとに索引器を共有するIndexShareで長文処理の計算量を抑える。利用者はAPI事業者を選べるほか、十分な設備があれば自ら運用できる。Artificial Analysisの0.37ドルは同社が追跡するAPI料金に基づく値であり、自前のGPU、電力、運用要員まで含めた総保有費用ではない。
したがって、0.26ドル対0.37ドルはAPIで同じ評価を走らせた場合の有力な比較材料になるが、閉鎖型と公開重みの経済性を決着させる数字ではない。短期導入なら、MuseのAPI単価と既存ツールへの接続性が判断材料になる。データ管理、地域要件、推論基盤の管理権を重視する組織には、GLM-5.2の公開重みが別の価値を持つ。
採用前に測るべき数字は明確だ。自社の課題を固定し、成功1件までの再試行を含む総トークン、所要時間、請求額を記録する。その結果が0.26ドルという評価値に近づくかどうかで、Muse Spark 1.1の低価格はベンチマーク上の利点から実務上の優位へ変わる。