メタマテリアル(自然界には存在しない性質を持つように人工的に作られた材料)は、日常生活を変革し得る段階に来ている。その独自の特性は、スポーツ用品からコンシューマー向けエレクトロニクスまで、幅広い製品の性能向上に寄与している。

筆者はスポーツエンジニアであり、UKRIが資金提供するUK Metamaterials Networkにおいてヘルス分野の応用を主導する立場にある。このため、メタマテリアルがスポーツ用品をどのように強化しているかについて、独自の知見を得ている。

具体的には、スポーツや運動を、より利用しやすく、インクルーシブで、より安全なものにする助けとなっている。

メタマテリアルは、メタアトム(図1)によって構成される。これらの構成要素は、特定の機能を発揮し、特定の特性を持つように設計された幾何学形状を備える。機能は、音響、化学、電磁気、磁気、あるいは材料の力学特性に関係する場合がある。

図1。複数次元で繰り返される下位構造によって形成されるセルラー・メタマテリアルの概念。(Credit: IMechE『Unlocking the potential of metamaterials』)

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メタマテリアルとスポーツ

メタマテリアルは、製品と材料の中間に位置付く。従来の意味での「材料」ではない。なぜなら、その設計が、性能を高めるために組み込まれる製品の設計と不可分に結び付いているからである。

導入が速く、数十億ドル規模のスポーツ用品産業は、市場参入の障壁が比較的低い。したがって、新規かつ新興の技術を試す場として理想的である。

その結果、この分野はメタマテリアル、とりわけ機械メタマテリアル(図2)の早期採用者となってきた。これは、Institution of Mechanical Engineersのスポーツ工学に関する報告書でも述べられている。

図2。メタマテリアル形状を取り入れたスポーツ用ボディープロテクションの例。(Credit: Rheon Labs Ltd)

オーセティック・メタマテリアル(Auxetic metamaterials)は、スポーツ用品分野で広く研究され、採用されてきた。オーセティック挙動は、メタマテリアルによって実現可能な「負の特性」の一例である(図3)。負の特性を持つ材料は、従来の予想とは逆のふるまいを示す。一般的な材料を長手方向に引き伸ばすと、断面は収縮する。

一方、オーセティック・メタマテリアルは逆に、長手方向に引き伸ばすと断面が拡大する。この необыで直感に反する挙動は、スポーツ用品の性能を改善し得る。この特性は、ポアソン比(Poisson’s ratio)と呼ばれる量で説明される。これは、荷重(力)の方向に対する材料の変形の応答を表す指標である。

図3。負のポアソン比(オーセティック)を示す図。著者作成、著者提供(再利用不可)

オーセティック・メタマテリアルは、ボディープロテクションやヘルメットなどの製品において、快適性、フィット性、および耐衝撃保護を向上させ得る。また、シンクラスティック曲率を示し、曲げると「ドーム形状」を形成する。これは、たとえばヘルメットや膝当てのフィット性を改善し得ることを意味する。

さらに、押し込み抵抗の向上により、柔軟性を高めたボディープロテクションであっても、岩やスタッドとの衝突など、局所的に集中する荷重から保護できる可能性がある。オーセティック構造は、不要な振動の制御にも役立つ。これは、バット、自転車、ラケット、スキー、スノーボードなどの装備で有用である。機械メタマテリアル形状を取り入れたスポーツ用品の他の例としては、空気不要のバスケットボール、自転車用サドル、フットウェアなどが挙げられる。

メタマテリアルの可能性は、従来型のスポーツ用品にとどまらない。障害やけがのある人がスポーツや運動を行う際の助けにもなり得る。応用先は、装具、義肢、装具(orthotics)、リハビリテーション機器などに及ぶ。ただし、これらは通常、医療機器に分類されるため、スポーツ用品よりも厳格な規制の対象となり、メタマテリアル導入の課題となっている。

機械系以外のメタマテリアルも、スポーツ・運動分野に利益をもたらし得る。たとえば、メタマテリアルを組み込んだ製品が、使用者の動作パターン、形状、サイズに合わせて、能動的に特性を適応させることが考えられる。こうした理由から、メタマテリアルは、より多様な利用者にとってスポーツ・運動製品をよりインクルーシブにする可能性を持つ。

英国におけるメタマテリアル研究

メタマテリアルは、製品をより小型に、より軽量に、より単純に、そしてより高性能にする、特別な特性を持つように設計される。2025年12月1日、Institution of Mechanical Engineersは、メタマテリアルの可能性を引き出す(unlocking the potential of metamaterials)という政策報告書を公表した。この報告書は、UK Metamaterials Networkと共同で作成されたものである。そこでは、メタマテリアルを活用してイノベーションを推進し、産業を強化し、世界的課題に対処するための視点が示されている。

とはいえ、その潜在力を全面的に実現するには、いくつかの課題に対処する必要がある。第1に、英国はこの分野で世界的競争力を維持するため、基礎研究を継続しなければならない。第2に、産業界による採用は遅く、研究と商用化をつなぐ取り組みの必要性が浮き彫りになっている。

第3に、メタマテリアルの試作は、大量生産に適さない手法で行われることが多く、スケールアップの可能性を制約している。第4に、これらの技術を効果的に開発・展開するには、熟練した人材が必要である。認知度の向上、共通定義の確立、合意された標準に基づくメタマテリアル搭載製品の試験は、採用を促進し、社会的信頼を醸成する上で重要である。

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スポーツにおけるメタマテリアルの課題

スポーツにおける適切な標準と規制は、設計者を支援し、製品に対する消費者の信頼を高め、国際貿易を支える。スポーツ製品は、多くの場合、安全基準およびスポーツ統括団体が定める規則に適合しなければならない。統一的な定義や試験フレームワークを提供するという意味で、メタマテリアルに特化した標準を設ける価値もあり得る。

製造も別の課題である。スポーツ用品に組み込まれるメタマテリアルは、通常、3Dプリンティング、機械加工、射出成形などの既存手法で製造される。しかし、メタマテリアルの強化された特性は複雑な幾何学配置に依存することが多く、大量生産では高コストかつ時間を要し得る。このため、効率的な製造方法が必要である。

こうした課題があるにもかかわらず、メタマテリアルはスポーツ用品の中でますます一般的になりつつある。本稿で取り上げたのはごく一部であるが、今後さらに普及していくと考えられる。機能に合わせて独自の材料特性を設計できること、さらに個々人に適合させられることは、スポーツエンジニアにとってメタマテリアルを強力な道具にしている。

英国におけるメタマテリアル、そしてとりわけスポーツ工学分野にとって、今は非常に刺激的な時期である。この専門技術が、スポーツや運動をより利用しやすく、よりインクルーシブで、より安全なものにし続ける姿を見るのを楽しみにしている。


本記事は、マンチェスター・メトロポリタン大学 工学部 上級講師 Thomas Allen氏によって執筆され、The Conversationに掲載された記事「‘Metamaterials’ could transform our lives – and sports equipment is at the vanguard」について、Creative Commonsのライセンスおよび執筆者の翻訳許諾の下、翻訳・転載しています。