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Microsoft、全従業員の3%の人員削減に踏み切る:約7000人、中間管理職層に大ナタ

Y Kobayashi

2025年5月14日6:55AM

米Microsoftが全従業員の約3%に相当する、およそ6,000人から7,000人規模の人員削減計画を明らかにした。今回の削減は、2023年初頭の1万人規模の人員削減以来、最大規模となる。特に中間管理職層の削減による組織構造のフラット化が主な目的とされており、同社の「ダイナミックな市場」への適応と経営効率化への強い意志がうかがえる。好調な業績報告から間もないこの決断の背景には何があるのか?

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Microsoft、約7000人規模の人員削減を発表 – 2023年以来の規模

Microsoftは、全世界の従業員約22万8000人のうち、約3%を削減する方針をCNBCに対して認めた。 これは、約6,840人、情報源によっては6,000人から7,000人近くの従業員が影響を受けることを意味する。 この規模は、2023年1月に発表された1万人の人員削減に次ぐものであり、同社が継続的な構造改革を進めていることを鮮明に示している。

同社の広報担当者は、「我々は、ダイナミックな市場において会社が成功するための最良の体制を整えるために必要な組織変更を引き続き実施していく」と声明で述べている。 ワシントン州への届け出によれば、本社のあるレドモンドだけで1,985人(うち1,510人はオフィス勤務)が対象となるという。

「管理職の層を減らす」 – 組織フラット化で俊敏性向上へ

今回の人員削減の大きな特徴は、特に管理職層に焦点が当てられている点だ。MicrosoftのCFOであるAmy Hood氏は、4月下旬の第3四半期決算説明会において、「より少ない管理職で階層を減らし、俊敏性と高パフォーマンスのチーム構築に注力している」と述べており、今回の動きを事実上予告していた。 この方針は、意思決定の迅速化と組織運営の効率化を目指すものと考えられる。

今回の削減は、特定の業績不振部門に限定されたものではなく、全社的なレベル、チーム、地域に及ぶものであり、純粋な業績評価に基づくものではないとされている。 傘下のLinkedInやXbox部門も対象に含まれる可能性がある。

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好調な業績下での決断、その真意は?

特筆すべきは、この大規模な人員削減が、Microsoftが好調な業績を発表した直後に行われるという点だ。同社は2025年第3四半期(1-3月期)決算で、売上高が前年同期比13%増の701億ドル、純利益は16%増(あるいは18%増という報道も)の258億ドルと、市場予想を上回る結果を叩き出している。

この状況下での人員削減は、短期的なコスト削減圧力というよりも、より長期的な視点での戦略的な組織再編と見るべきだろう。前述の「ダイナミックな市場への対応」という言葉の裏には、急速に進化するAI技術への対応や、競争が激化するクラウド市場での優位性確保など、将来を見据えた布石を打つ狙いがありそうだ。

囁かれるAIの影 – 「新たなテクノロジー」は人員代替を意味するのか?

Microsoftは今回の人員削減に関して、AIの役割について直接的な言及は避けている。 しかし、「新たなテクノロジーと能力を活用して、残る従業員の雑務を排除する計画」には触れており、これが間接的にAIの活用を示唆している可能性は否定できない。

近年、他のテクノロジー企業では、AIの能力向上を理由とした人員削減の事例が散見される。例えば、言語学習アプリのDuolingoや業務ソフトウェアのWorkdayは、AIが人間のタスクを代替できるようになったことを理由に人員を削減したと報じられている。 米内国歳入庁(IRS)でさえ、AIを税務調査能力の補完に活用する計画を認めている。

さらに注目すべきは、複数の研究が、特に中間管理職の役割がAIによる自動化の影響を受けやすいと指摘している点だ。AIによる業務効率化が進む中で、情報伝達や進捗管理といった従来の中間管理職の役割の一部が、AIツールによって代替される、あるいはその必要性が低下する可能性は十分に考えられる。

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繰り返される人員削減の波 – Microsoftの構造改革は続く

Microsoftにとって、人員削減はこれが初めてではない。今年1月にも、全体の1%未満と比較的小規模ながら、「業績ベース」とされる人員削減を実施している。 また、過去にはゲーム部門での大きな動きがあり、2024年1月にはActivision BlizzardとXboxの従業員1,900人を削減。 同年5月には、「Hi-Fi Rush」を開発したTango Gameworks(後にKraftonとの契約で復活)や「Redfall」を手掛けたArkane Austinなど、複数のゲームスタジオを閉鎖した。 さらに同年9月にはXbox従業員650人、6月にはHoloLensおよびAzureクラウドチームから約1,000人が削減されている。

このような動きはMicrosoftに限ったことではなく、GoogleやMeta、Amazonといった他の巨大テック企業も、AI分野への注力や経営効率化を理由に、過去1年以上にわたり人員削減を断続的に行っている。 この背景には、厳しい経済状況への適応や、AI開発競争における巨額な投資負担、そしてそれに伴う事業ポートフォリオの見直しがあると考えられる。

AI時代の組織変革と人間の役割

Microsoftの今回の大規模な人員削減、特に管理職層への大胆なメスは、単なるコストカット策として片付けるべきではないだろう。むしろ、AI技術の急速な進化と普及を背景とした、より根本的な組織構造の変革、そして働き方の変容を予感させる動きと捉えることができる。

企業がAIを導入し、その能力を最大限に活用しようとするならば、従来の階層的な組織構造や業務プロセスそのものを見直す必要に迫られる。意思決定の迅速化、情報共有の効率化、そして創造的な業務へのリソース集中は、AI時代の企業競争力を左右する重要な要素となる。その過程で、従来型の管理職の役割が問い直され、より専門性の高いスキルや、AIでは代替できない人間ならではの共感力、創造性、戦略的思考が求められるようになるのは必然的な流れかもしれない。

今回のMicrosoftの決断は、同社だけでなく、広くテクノロジー業界全体、ひいてはあらゆる産業における組織のあり方、そしてそこで働く人々の役割について、改めて深く考えるきっかけを与えるものと言えるだろう。AIという強力なツールと共存し、それを最大限に活用していくために、企業も個人も、変化への適応と継続的な学びが不可欠となる時代が本格的に到来したのかもしれない。


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