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OpenAI, 中東アブダビに巨大AIデータセンター「Stargate」を構築か?

Y Kobayashi

2025年5月17日

OpenAI が、アラブ首長国連邦 (UAE) の首都アブダビに、世界最大級となる可能性を秘めた巨大AIデータセンターの建設計画に協力することが明らかになった。事情に詳しい関係者の話としてBloombergが報じたもので、この野心的なプロジェクトは「UAE Stargate」と名付けられ、AI開発の世界的ハブを目指す中東の動きを象徴するものとなりそうだ。この壮大な構想には、NVIDIA、Cisco、Oracleといった米国の名だたるテクノロジー企業も名を連ねている。

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砂漠に出現する「モナコ超え」のAI都市? 規格外のスケール

報じられている計画の規模は、まさに圧巻の一言だ。

  • 圧倒的な電力容量: UAE Stargate データセンターは、完成すれば5ギガワットという驚異的な電力容量を持つことになる。これは、およそ原子力発電所5基分に相当する電力であり、既存のデータセンターの規模を遥かに凌駕する。
  • 広大な敷地: 施設は10平方マイル(約25.9平方キロメートル)に及ぶ広大な敷地に建設される予定だ。これは、モナコ公国(約2平方キロメートル)の実に10倍以上の面積であり、まさに「AI都市」とも呼べるスケール感である。
  • OpenAI が主要テナントに: ChatGPTの開発元であるOpenAIは、この巨大施設の主要なアンカーテナントの一つになる見込みだと報じられている。ただし、5ギガワットの全てをOpenAIが占有するわけではなく、複数の企業で共有される計画だという。

この UAE Stargate は、OpenAI がSoftBank、Oracleと共に1月に発表した最大5000億ドル規模のAIインフラ投資構想「Stargate」イニシアチブの一環と見られている。 米国テキサス州 アビリーンで既に建設が始まっている米国内の Stargate データセンター(計画容量1.2ギガワット)と比較しても、アブダビのプロジェクトはその4倍以上の規模を誇ることになり、OpenAIのグローバルなAIインフラ拡張戦略における中東の重要性が際立つ。

米テック大手集結の背景と、G42 の役割

この巨大プロジェクトには、OpenAIだけでなく、AIチップの巨人NVIDIA、ネットワーク機器大手のCisco、データベースとクラウドの雄Oracleといった米テクノロジー企業が支援を表明している。 特にNVIDIAは、最新のAIチップ「Blackwell GB300」システムを供給すると報じられており、UAE Stargateが最先端のAI開発拠点となることを示唆している。

建設と運営の主体となるのは、アブダビを拠点とするAI企業 G42 だ。 G42 は UAE の国家安全保障顧問であるSheikh Tahnoon bin Zayed Al Nahyan氏が会長を務める企業で、UAEの国策としてのAI戦略推進において中心的な役割を担っている。アブダビの政府系投資会社MGXも、このプロジェクトへの参加を検討しているという。

このプロジェクトは、Trump大統領の中東歴訪によって、UAEとのAI分野における協力案件が協議されていたタイミングで発表されたことも注目される。 NVIDIA CEOのJensen Huang,氏、OpenAI CEOのSam Altman氏、SoftBank CEOの孫正義氏、Ciscoの社長Jeetu Patel氏といったテック業界の重鎮たちが、発表時期に UAE に滞在していたことも報じられている。

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地政学的配慮と米中技術覇権の狭間で

OpenAIとG42 の関係は2023年から続いており、中東地域でのAI活用推進を目的としていた。 しかし、G42の過去の中国企業との関係(HuaweiやBeijing Genomics Instituteなど)については、米国内で安全保障上の懸念が指摘されていた時期もあった。

こうした懸念に対し、G42は2024年初頭に中国関連の投資から撤退する方針を表明。 その後、OpenAIの主要株主でもあるMicrosoft が G42に15億ドルを投資し、同社の Microsoft 社長のBrad Smith氏が G42 の取締役に就任するという動きがあった。 これは、米国の影響力を維持しつつ、UAEの豊富な資金力とAIへの強いコミットメントをグローバルなAI開発エコシステムに取り込もうとする戦略の一環と見ることができるだろう。

AI開発競争は新たな次元へ、しかし課題も

UAE Stargat計画は、AI開発に必要な計算資源の需要が爆発的に増大している現状を浮き彫りにしている。OpenAIをはじめとするAI開発企業にとって、このような超巨大データセンターの確保は、次世代AIモデルの開発競争を勝ち抜くための生命線となりつつある。

このプロジェクトは、中東がオイルマネーを背景に、新たなテクノロジーハブとしての地位を確立しようとする野心的な試みでもある。一方で、これほどの巨大施設を稼働させるための電力供給の安定性や、環境への影響(特に水資源の乏しい中東地域における冷却の問題など)は、今後大きな課題となる可能性も否定できない。

UAE Stargateの第一フェーズでは、1ギガワット規模のコンピュートクラスターが稼働する予定とされている。この壮大な計画が、AI技術の未来、そして世界のテクノロジーバランスにどのような変革をもたらすことになるのだろうか?

だが、中東の壮大な計画は、その多くが、最初に盛大にぶち上げて、その後尻すぼみとなるか、頓挫することが多い為、あまり真に受けずに見ておくことも必要かも知れない。


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