2026年第2四半期、NANDフラッシュ市場は売上高で急反発した。TrendForceによると、上位5社のNAND売上高合計は前四半期比77%増の688.7億ドルに達し、第1四半期の同83.7%増と合わせた伸びは約3.25倍となる。ただし、増収は出荷量の急増ではない。AIサーバー向けエンタープライズSSD(eSSD)の需要を受け、限られた供給能力の下でASP(平均販売価格)が上がり、eSSDへの製品構成シフトとともに売上高や利益率を押し上げたためだ。供給が増えれば単価が下がり得るため、2027年後半に供給超過へ向かうとの見通しを含め、今回の急増は価格主導の局面として読む必要がある。
2四半期で約3.25倍、Micronが3位へ
TrendForceの推計では、第2四半期の首位はSamsungで、売上高は230.6億ドル、前四半期比70.7%増だった。SK hynix Groupは142.7億ドルで同89.5%増、Micronは118.5億ドルで同99.2%増となり、3位へ浮上した。Kioxiaは107.2億ドルで同79.9%増、SanDiskは89.7億ドルで同50.7%増だった。5社の合計688.7億ドルは、前四半期の389億ドル超から大きく伸びた。
第1四半期の上位5社合計は前四半期比83.7%増で、Samsungは135.1億ドル、SK hynix Groupは75.3億ドル、Kioxiaは59.6億ドル、MicronとSanDiskはそれぞれ59.5億ドルだった。第1四半期の1.837倍に第2四半期の1.77倍を重ねると、2四半期で約3.25倍となる。売上規模の変化は際立つが、これは上位5社の合計であり、市場全体の売上高ではない。Samsungの第2四半期売上高と市場シェア29.3%という推計を併せても、5社合計を市場の分母とみなすことはできない。
また、TrendForceの数値は市場調査会社による推計である。各社の公式決算は対象期間や事業区分、為替前提が異なるため、調査会社の順位表とそのまま足し合わせることはできない。例えばTrendForceはMicronの第2四半期NAND売上高を118.5億ドルと推計する一方、Micronの公式発表におけるFQ3のNAND売上高は99億ドルである。両者は同じ指標ではない。市場の勢いを測る推計と、個社の収益構造を確認する公式資料は、役割を分けて読むべきである。
売上高77%増を生んだ価格効果
NANDの売上高は、おおまかには販売ビット量とビット単価の掛け算に、製品構成や為替の影響が重なる。第2四半期の77%増をそのまま数量増と呼べない理由はここにある。TrendForceは、AIサーバー、とりわけeSSDの需要増と供給不足がASPを引き上げたと説明する。
Micronの公式数値は、価格効果の大きさを最も明瞭に示す。FQ3のNANDビット出荷量は前四半期比で一桁台半ばの増加にとどまった一方、価格は80%台半ば上昇した。売上高は前四半期比99%増となった。出荷量が小幅に増えた段階でも、単価と製品構成が変われば売上高は急増する。
SanDiskも同じ方向を示す。FY2026第4四半期の売上高は89.65億ドルで、増収寄与のおよそ3分の1が数量、3分の2が価格だった。データセンター部門の売上高は29.77億ドルで前四半期比103%増となり、粗利率は前四半期の78.4%から84.6%へ上がった。価格が売上と利益率の双方に波及したことが分かる。
KioxiaはFY2026第1四半期の全社売上高を1兆7671億円とし、前四半期の1兆29億円から増加した。SSD & Storage部門は1兆1747億円で、前四半期は6003億円だった。同社は生成AIデータセンター需要に伴うASPの大幅上昇を主因に挙げる。平均為替レートも前四半期の1ドル155円から160円へ変わっており、円建て売上の比較には為替も含まれる。ここでも、価格と製品構成、通貨を数量と切り分ける必要がある。
AIはなぜNANDを大量に必要とするのか
AI向けNANDの需要経路は、HBMと異なる。HBMは演算の近くで高帯域のメモリとして働くのに対し、NANDは大容量ストレージとしてデータやモデルを保持する。学習用データセットから訓練途中のチェックポイント、推論時のデータまでを扱うAI基盤では、eSSDの容量と性能が必要になる。需要が集中すれば、サーバー向けの製品構成が厚くなり、NANDメーカーはより高付加価値の製品を多く売れる。
SK hynixは321層NANDの立ち上げを進め、傘下のSolidigmは大容量QLC eSSDを供給している。QLCは読み出し中心の用途で密度を高め、TB当たりのコストを改善できる。SK hynixはNAND価格の大幅な上昇、eSSDの高付加価値化、321層製品の生産比率拡大を挙げ、年末までに韓国内のNAND生産能力のおよそ半分を321層へ移す計画を示した。SamsungもeSSDの比率上昇で収益を改善した。ただし、Samsungの市場シェアは29.3%へ低下しており、需要が強い局面でも競合の伸び方次第で順位やシェアは動く。
積層数を増やし密度を高めれば、既存のウェハーから取り出せるビット数は増える。しかし、その増加は即時の供給増ではない。プロセス移行には歩留まりの改善や製造装置の切り替えがあり、その後に顧客認定を通す必要がある。AI向けの高容量eSSDでは、NANDダイの製造後に製品設計と検証も待つ。この時間差が、需要が強い局面で価格上昇を長引かせる要因となる。
2027年後半に需給が反転する条件
TrendForceは2026年について、DRAMとHBMを優先する投資判断によりNANDの新規能力が限られ、需給は4〜5%の供給不足になるとみる。サーバー分野はビット需要の40%以上を占め、スマートフォンとノートPCも合わせて約40%を占める見通しである。第3四半期はスマートフォンとPCの需要が弱くても、AIサーバー需要とNANDの新規能力制約が価格を支えるという。
この構図では、消費者機器が弱くてもeSSDの強さが市場の売上とASPを押し上げうる。ただし、eSSDの需要が強いことは、民生向けを含む全品種が同じ幅で値上がりすることを意味しない。用途、容量、契約時期によって価格の動きは異なる。市場全体の急増を個別製品の価格へ機械的に当てはめることは避けるべきである。
反転条件は供給側にある。TrendForceは2027年後半、プロセス移行によるビット増と消費者需要の弱含み、既存拠点での選択的な増産により、NAND市場が供給超過へ向かうと予測する。中国メーカーのビットシェアも2027年には19%近くまで高まる見通しだ。これは予測であって確定した結果ではないが、価格主導の増収局面が永続しないことを示す。
価格主導の増収が続く条件は、eSSD需要の伸びがプロセス移行によるビット供給増を上回ることだ。TrendForceの予測通り2027年後半に供給超過へ転じるなら、売上高を支えた単価は逆方向に働き始める。まず確かめるべきは、SK hynixの321層移行が年末に韓国内能力の約50%へ届くか、そして第3四半期も各社のビット出荷よりASPが速く伸びるかである。



