市場調査会社DFC Intelligenceが発表した最新分析によると、Nintendo Switch 2は2025年末までに世界で1,500万台という記録的な販売台数が見込まれるという。当初予測の1,700万台から下方修正されたものの、依然として「史上最速のコンソール販売ペース」となる見通しだ。この販売予測は、初代Switch、PlayStation 4、Wiiなど歴代の人気ゲーム機がそれぞれ1年以上かけて到達した数字を大幅に上回るものとなる。
DFCが予測する「1500万台」の意味:下方修正でも史上最速ペース
市場分析会社DFC Intelligenceは、2025年6月5日に発売予定のNintendo Switch 2について、最新の販売予測を発表した。それによると、2025年末までの全世界における販売台数は1500万台に達する可能性があるという。
この数字は、当初DFCが予測していた1700万台からは200万台引き下げられたものだ。下方修正の主な理由は、後述する米国の新たな輸入関税導入に伴う価格上昇への懸念である 。
しかし、この1500万台という数字が持つ意味は大きい。仮に達成されれば、Nintendo Switch 2は発売から約半年間でこのマイルストーンに到達することになり、これは初代Switch、Wii、そしてソニーのPlayStation 4といった過去のベストセラー機でさえ1年以上を要した記録を大幅に塗り替える、文字通り「史上最速の販売ペース」となる。
DFC Intelligenceは、この驚異的なスタートダッシュが、Nintendo Switch 2の長期的な成功の基盤を築くと分析している。
なぜSwitch 2は売れるのか?DFCが挙げる成功要因
DFC Intelligenceが、関税という逆風の中でもNintendo Switch 2の成功に自信を見せる背景には、いくつかの明確な理由が存在する。
1. 大幅な性能向上と魅力的な新機能
Nintendo Switch 2は、初代Switchのコンセプトを踏襲しつつも、大幅な性能向上を実現している。DFCのレポートやこれまでもたらされた情報によると、主な特徴は以下の通りである。
- 処理能力: 初代Switchの10倍とも言われるグラフィック性能向上。
- ディスプレイ: 7インチの1080p LCDディスプレイを搭載(初代Switchの6.2インチ、Liteの5.5インチから大型化)。TVモードでは最大4K解像度をサポート。
- Joy-Conの進化: 平らな面でマウスのように操作できる機能や、インスタントチャット・画面共有を可能にする新しい「Cボタン」を搭載 。
- 新機能: フレンドとのチャットやライブ画面共有が可能な「GameChat」機能、オプションのカメラアクセサリーによるビデオチャットやゲームプレイへのライブビデオ統合 。
- 後方互換性: 初代Switchのゲームもプレイ可能。一部タイトルは有料または無料(Nintendo Switch Online + Expansion Pack加入者向け)のアップグレードパックでSwitch 2版に強化可能。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』と『ティアーズ オブ ザ キングダム』は加入者向けに無料アップグレードが提供される。
- ゲームキューブタイトル: Nintendo Switch Online + Expansion Pack加入者は、Switch 2限定でゲームキューブのクラシックタイトルもプレイ可能になる。
これらの強化点は、既存のSwitchユーザーの買い替え需要を喚起するだけでなく、新たなゲーム体験を求める層にもアピールするとDFCは分析している。PlayStation 5やXbox Series X/Sがハードウェア性能向上に留まったのに対し、Switch 2は性能向上に加えて、携帯性やコミュニティ機能といった任天堂ならではの強みを活かした独自の価値提案を行っている点が評価されている。
2. かつてない規模のサードパーティサポート
初代Switchでは、ソフトウェア売上の約80%を任天堂の自社タイトルが占めていた。これは、PlayStationプラットフォームでソフトウェア販売本数の約85%がサードパーティ製であるのと対照的だ。
しかし、Nintendo Switch 2ではこの状況が大きく変わる可能性がある。任天堂はAAA(大作級)サードパーティタイトルの誘致に注力していると見られ、既に発表されているラインナップはその本気度を示している。
発表済みの主なサードパーティタイトル:
- 『Elden Ring』
- 『Cyberpunk 2077』(ローンチ日エディションあり)
- 『Street Fighter 6』
- 『Hogwarts Legacy』
- 『HITMAN: World of Assassination』
- 『Project 007』(IO Interactive)
- 『Final Fantasy VII Remake Intergrade』
- 『Borderlands 4』
- 『Civilization VII』
- Electronic ArtsやTake-Two Interactiveの主要スポーツゲーム
特筆すべきは、フロム・ソフトウェアが『Elden Ring』の移植だけでなく、Switch 2独占タイトルとなる完全新作『The Duskbloods』を発表したことである。これは、フロム・ソフトウェアに投資し、親会社KADOKAWAの筆頭株主でもあるSonyとの関係性を考えると、非常に驚きをもって受け止められている。
このような強力なサードパーティサポートは、これまでPlayStationやXboxを主戦場としてきたコアゲーマー層や、より幅広い年齢層のユーザーをNintendo Switch 2のエコシステムに取り込む原動力になるとDFCは期待している。これにより、Switch 2は単なる任天堂ファン向けのプラットフォームではなく、より広範な市場でSonyやMicrosoftと直接競合する存在になる可能性がある。
3. 幅広いゲーマー層への訴求力
DFC Intelligenceが実施した消費者調査の結果も、Nintendo Switch 2への期待の高さを裏付けている。
- ハイエンドPCゲーマー: 定期的にPCを自作・アップグレードするハイエンドPCゲーマーのうち、44%が初代Nintendo Switchを所有し、アクティブに利用していることが判明。これはPlayStation 5を所有・利用している割合(23%)やXbox Series X/S(17%)を大きく上回る。彼らはPCをメインとしつつも、Switchの携帯性やユニークなゲーム体験に価値を見出している。

- PlayStation/Xboxユーザー: 1,000人以上のPlayStation/Xboxユーザーを対象とした調査では、83%が週に1回以上、複数のゲーム機を利用していると回答。そのうち67%が、メインのコンソールと並行してNintendo Switchも利用している。これは、Switchが他のプラットフォームと共存できる強みを示している。
- Switch 2への関心度: 600人以上のPlayStation/XboxユーザーからSwitch 2に関する意見を収集したところ、全体の61%が肯定的(「興奮している/早期購入予定」20%、「肯定的だが慎重」41%)な反応を示した。否定的/無関心は30%に留まった。

これらの調査結果から、Nintendo Switch 2は既存の任天堂ファンだけでなく、PCゲーマーや他のコンソールユーザーといった、より広範な層からも高い関心を集めていることがわかる。DFCは、これがSwitch 2が市場を再定義するポテンシャルを持つと考える根拠の一つであるとしている。
残る懸念:関税問題と価格への影響
多くの期待を集めるNintendo Switch 2だが、最大の懸念材料は米国の新たな輸入関税である。
任天堂は当初、Nintendo Switch 2の米国での予約開始日を2025年4月9日と発表していたが、その後「関税と変化する市場状況の潜在的な影響を評価するため」として延期を発表した。新たな予約開始日は未定だが、発売日自体(6月5日)に変更はないとしている。
問題となっているのは、Trump政権下で発表された、あるいは引き上げられた輸入関税である。特に、日本からの輸入品に対する24%、ベトナムに対する46%、そして中国に対する104%といった高い関税率が報じられている。Nintendo Switch 2は、製造拠点を中国からベトナムに移したと報じられているが、そのベトナムも高関税の対象となっている。部品調達などを考慮すると、複数の国からの関税が複合的に影響する可能性がある。
Nintendo Switch 2の本体価格は450ドル、ローンチタイトルである『マリオカート ワールド』は80ドル(共に米国での販売価格)と、従来の任天堂製品よりも高価に設定されている。DFCは、450ドルという価格自体は、性能向上を考えれば納得のいく物であり、経済状況を考慮しても500ドル以上にならなかったことに安堵感を示していた。
しかし、関税が上乗せされれば、価格はさらに上昇する可能性がある。DFCは、今後2年間で価格が20%上昇する(530ドル程度になる)シナリオもモデル化している。もし価格が大幅に上昇した場合、購入を躊躇する消費者が増え、結果的に任天堂が生産規模を縮小する可能性も否定できないとDFCは指摘している。任天堂は関税施行前に相当数のSwitch 2を米国に出荷したとも報じられているが、その在庫がいつまで持つかは不透明だ。
この関税問題の動向は、Nintendo Switch 2の販売予測、ひいてはゲーム市場全体に大きな影響を与える可能性があり、DFCは引き続き状況を注視していくとしている。
ソフトウェア価格設定への見方
本体価格と並んで、『マリオカート ワールド』などの主要タイトルが80ドルという価格設定であることも一部で懸念されている。
しかしDFCは、ソフトウェア価格全体については、現時点では大きな懸念材料とは見ていない。その理由として、多くのサードパーティ製AAAタイトルは70ドル以下で発売されると見られること、そして前述の通り、初代Switchタイトルからのアップグレードパスが用意されていることを挙げている。
少額で、あるいは無料でのアップグレードが可能であれば、ユーザーの負担感は軽減される。価格設定は、タイトルの需要やゲームプレイの価値に応じて、幅広いレンジになる可能性が高いと分析している。
まとめ:Nintendo Switch 2はゲーム市場を変革するか?
DFC Intelligenceの分析によれば、Nintendo Switch 2は、関税という不確定要素を抱えながらも、2025年末までに1500万台という記録的な販売台数を達成するポテンシャルを秘めている。これは、強化されたハードウェア性能、魅力的な新機能、そして何よりも、これまでの任天堂プラットフォームでは見られなかった強力なサードパーティサポートが、既存ファンに加えてPCゲーマーや他のコンソールユーザーといった新規層をも惹きつけているためである。
関税問題が価格に与える影響は依然として最大の懸念材料であり、今後の動向次第では販売予測がさらに変動する可能性もある。しかし、DFCはSwitch 2の高い需要には自信を持っており、長期的に見れば初代Switchを超える市場シェアを獲得し、任天堂がWiiとDSでピークを迎えた2007~2009年(年間合計4000~5000万台販売)のような規模に再び近づく可能性も示唆している。
Nintendo Switch 2の登場は、単なる新型ゲーム機の発売に留まらず、任天堂がより広範な市場でSonyやMicrosoftと本格的に競合し、ゲーム業界全体の勢力図を塗り替える「変革の瞬間」となるかもしれない。DFC Intelligenceは、今後も消費者動向や市場状況を注意深く追跡し、分析を更新していく予定である。
Sources
- DFC Intelligence: The Evolution of Console Gaming: Insights on the Switch 2’s Debut