NVIDIAとドイツの原子力発電所解体会社PreussenElektraが、廃止された原発の跡地をAIデータセンター「AIファクトリー」に転用する可能性を共同で検討する。PreussenElektraは2026年10月、公式LinkedInでこの方針を明らかにした。広大な産業用地や既存の電力インフラを活用する構想だが、現時点で具体的な建設地や投資額は決まっていない。

旧原発の再利用は、AIデータセンターの建設に必要な土地やインフラを確保する手段として注目される。ただし、既存の変電所や冷却設備がそのまま使えるとは限らない。PreussenElektraが公開するグラーフェンラインフェルト原発の物件資料からは、設備の存在と実際の利用可能性に大きな隔たりがあることが分かる。

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NVIDIAとPreussenElektra、旧原発のAIファクトリーへの転用を共同検討

PreussenElektraは公式LinkedInへの投稿で、NVIDIAと協力し、自社が管理する原子力発電所の跡地がAIファクトリーに適しているかを調査する方針を示した。E.ON傘下の同社は、ドイツ国内で8か所の原子力発電所の解体を担っており、これまで進めてきた跡地再利用の取組に、AIデータセンターとしての適性評価を加える。

共同検討では、既存の電力インフラや土地の利用可能性を調べ、AIデータセンターの技術的・運用上の要件と照らし合わせる。ドイツの公共放送NDRが伝えた同社の説明によると、現時点で具体的な投資や建設地の決定は伴わない。解体を担当する原発が8か所あるからといって、すべての跡地にAI施設を建設する計画があるわけではない。

今回の構想は、運転を停止した原子力発電所の土地やインフラを再利用するものであり、原子炉の再稼働や原子力発電によるAI施設への電力供給を発表したものではない。データセンターの建設規模や導入するGPU、必要な電力についても、具体的な計画は明らかになっていない。

変電所が隣接していても電力供給は保証されない

旧原発のAIデータセンターへの転用を考えるうえで参考になるのが、グラーフェンラインフェルト原発の跡地だ。PreussenElektraが公開する公式物件資料(PDF)によると、敷地には110kVおよび380kVの変電所が隣接している。しかし、現在稼働している系統接続はなく、新たな施設で電力を使用するには個別の接続手続きが必要となる。

同資料には、土地や冷却設備についても、再利用を検討するうえで重要な条件が記されている。

項目 現在の状況 AIデータセンターへの転用に必要な確認
電力インフラ 110kV・380kVの変電所が隣接するが、稼働中の系統接続はない 系統接続の申請、確保できる受電容量、供給開始時期
土地 所有面積31ha、利用可能な総面積26ha。事業用地の再利用は2037年以降の見込み 実際に利用できる区画、建設可能時期、規制上の条件
冷却設備 冷却塔2基は2024年に撤去。冷却水の取水・排水路は残存 既存水路の再利用可能性、冷却能力、必要な許認可

重要なのは、変電所が隣接していることと、データセンターが必要な電力を確保できることは別だという点だ。110kVや380kVは送電設備の電圧を示すものであり、AI施設が何MWの電力を受け取れるかを表す数値ではない。実際の受電容量や供給開始時期は、送電網の状況や系統接続の手続きを踏まえて判断する必要がある。

土地の利用にも時間的な制約がある。グラーフェンラインフェルトでは、通常の建物解体が2036年末まで続く見通しであり、事業用地の本格的な再利用は原子力関連の規制対象から解除された後、2037年以降になるとされる。一部の土地を先行して利用できる可能性はあるものの、資料に記された26haすべてを直ちに建設に使用できるわけではない。

なお、グラーフェンラインフェルトがNVIDIAとの共同検討の候補地に選ばれたという発表はない。また、PreussenElektraが管理する他の原発跡地も同じ状況にあるとは限らない。今回の資料は、旧原発の再利用に伴う技術的・制度的な課題を示す具体例として捉える必要がある。

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冷却塔は撤去済み、既存の冷却水路は活用できるか

AIデータセンターの運営には、大量の電力だけでなく、GPUやその他の計算設備が発する熱を取り除く冷却システムも欠かせない。旧原発の跡地には、発電所で使用していた冷却関連設備が残っている場合があるが、それらが新しい用途に適しているかは別途検証する必要がある。

グラーフェンラインフェルトでは、2020年12月以降、施設内に核燃料がない状態となっており、2024年には2基の冷却塔が爆破解体された。一方、冷却水の取水・排水路は埋め戻されずに残っている。これらの水路は跡地の再利用を検討するうえで注目される設備だが、存在すること自体がデータセンターの冷却用途に利用できることを意味するわけではない。必要な流量や水質、冷却性能に加え、水の利用に関する許認可などを確認する必要がある。

通信インフラについても同様だ。物件資料には、広域通信向けの光ファイバー回線について最大10Gbit/sという数値が記載されている。しかし、AIデータセンターに必要な通信容量は、施設規模や運用形態によって異なるため、この数値だけでは十分かどうか判断できない。大規模なAI計算拠点として利用するのであれば、施設の要件に応じて通信インフラの増強が必要になる可能性もある。

このように、原発跡地には再利用できる可能性のある設備が残る一方、すでに撤去された設備や、新たな用途に合わせた改修・許認可が必要な設備も存在する。既存インフラを活用することで建設費や工期を抑えられるかどうかは、個々の施設の状態を調べて初めて評価できる。

事業化の鍵は電力容量と土地の利用開始時期

NVIDIAとPreussenElektraの共同検討が実際の建設計画に進むためには、候補地ごとに電力供給と土地利用の条件を具体化する必要がある。特に重要なのは、何MWの電力をいつから受電でき、その時点でどの範囲の土地を使用できるのかという点だ。十分な電力を確保できても建設用地が利用できなければ施設は稼働できず、土地が使える状態でも系統接続が整わなければ計算設備を動かせない。

ドイツ国内でも、原発跡地の再利用に向けた状況は施設ごとに異なる。NDRは別の原発事業者であるRWEにも取材しており、同社の広報担当者は、エムスラント原発の解体が2030年代まで続くことから、現時点では具体的な跡地再利用計画がないと説明した。これはNVIDIAとPreussenElektraの共同検討とは別の案件だが、原発ごとに解体の進捗や再利用の見通しが異なることを示している。

今回の発表は、AIデータセンターの建設地として旧原発の可能性を探る初期段階の取組であり、既存インフラの活用によって建設費や工期をどの程度削減できるかは明らかになっていない。今後、具体的な候補地と受電容量、土地の利用開始時期が示され、冷却設備や通信インフラ、許認可、投資主体などの条件が整えば、事業としての実現性を評価できるようになる。

AIデータセンターの建設では、計算設備の調達だけでなく、電力と土地を確保できる時期が重要な制約となる。原発跡地に残る資産がその課題の解決にどこまで役立つのかは、今回の共同検討で明らかになる具体的な条件によって判断する必要がある。