NVIDIAの最新世代GPU「GeForce RTX 50」シリーズが登場して間もないが、早くも性能強化版「Super」モデルの噂が業界を駆け巡っている。特に注目されるのは、RTX 5080 Superが24GB、RTX 5070 Superが18GBと、現行モデルからVRAM容量が50%増強される可能性だ。
噂される「Super」モデル:VRAM 50%増強の衝撃
Chiphellフォーラムで報告されている情報によると、NVIDIAはGeForce RTX 5080 SuperとRTX 5070 Superの開発に取り組んでいる可能性があるという。
注目すべきは、そのVRAM(ビデオメモリ)容量だ。
- GeForce RTX 5080 Super: 現行のRTX 5080が搭載する16GBから24GBへと増強されると噂されている。 これは、前世代の最上位モデルRTX 4090や、過去のRTX 3090/3090 Tiと同等の容量であり、ハイエンドユーザーにとっては魅力的なスペックアップと言えるだろう。
- GeForce RTX 5070 Super: 現行のRTX 5070が搭載する12GBから18GBへと増強される可能性がある。 18GBという容量はNVIDIAのコンシューマ向けGPUとしては前例がなく、新たなメモリ構成となる。
この大幅なVRAM増強を実現する鍵として指摘されているのが、「3GB GDDR7メモリモジュール」の採用である。 現在のRTX 50シリーズ(RTX 5090を除く)では、主に2GBのGDDR7モジュールが使用されている。 これを3GBモジュールに置き換えることで、メモリバス幅(データの通り道)を変更することなく、搭載できるVRAM容量を増やすことが可能になるのだ。 例えば、RTX 5080 Superでは256bitのメモリバス幅に8つの3GBモジュールを搭載して24GB (8 x 3GB) を、RTX 5070 Superでは192bitのメモリバス幅に6つの3GBモジュールを搭載して18GB (6 x 3GB) を実現する計算だ。 この方式であれば、GPUチップ(GB203やGB205)や基板(PCB)設計の大幅な変更を避けられる可能性がある。
グラフィックボード | アーキテクチャ (GPU) | VRAM容量 (噂) | メモリバス幅 (噂) | 現行モデルVRAM |
---|---|---|---|---|
RTX 5080 Super | GB203? | 24 GB | 256-bit | 16 GB |
RTX 5080 | GB203-400 | 16 GB | 256-bit | – |
RTX 5070 Super | GB205? | 18 GB | 192-bit | 12 GB |
RTX 5070 | GB205-300-A1 | 12 GB | 192-bit | – |
表: 噂されるRTX 50 Superモデルのスペックと現行モデル比較 (一部スペックは未確定情報や推測を含む)
なぜVRAM増強なのか?背景にあるユーザーの声と技術的背景
NVIDIAが現行RTX 50シリーズ、特にRTX 5080やRTX 5070で採用したVRAM容量については、発売当初からテックメディアやユーザーコミュニティから批判的な声が上がっていた。 特に、高解像度ゲーミングやAI、クリエイティブ用途ではVRAM容量がボトルネックとなりやすく、「価格に見合わない」「ケチすぎる」といった指摘が相次いだ。 RTX 5070の12GBは、もはやエントリーレベルの製品に割り当てるべき容量だという厳しい意見もある。
今回のSuperモデルでのVRAM増強の噂は、こうしたユーザーの声に応える動きと見ることもできるだろう。特に、RTX 5070 Superが18GBを搭載すれば、ミドルハイ~ハイエンド市場において、より高解像度(WQHDや4K)でのゲーミング体験を快適にする可能性がある。
また、3GB GDDR7モジュールの採用には技術的な裏付けもある。NVIDIAはすでに、ノートPC向けの最上位GPUである「GeForce RTX 5090 Laptop GPU」において、256bitバス幅で24GBのVRAMを実現するために3GBモジュールを採用している。 プロフェッショナル向けの「RTX Pro 6000 Blackwell」でも同様のモジュールが使われているという情報もある。
さらに、RTX 5080の発表前には、NVIDIAが当初24GBモデルを計画していたものの、3GBモジュールのコストや供給量の問題から16GB構成に変更したのではないか、という噂もあった。 MSIが誤って24GB版RTX 5080のプロモーション資料を公開した(とされる)出来事も、こうした噂を補強する材料となっている(ただし、これが単なるミスや偽情報の可能性も否定できない)。
もしRTX 5080 SuperやRTX 5070 Superで3GBモジュールが採用されれば、その恩恵はさらに下位のモデルにも波及するかもしれない。例えば、「RTX 5060 Super」が登場する場合、192bitバス幅なら18GB、あるいは128bitバス幅でも12GB (4 x 3GB) のVRAMを搭載できる可能性がある。 フルHD(1080p)ゲーミングにおいてもVRAMは重要な要素であり、12GB搭載のRTX 5060クラスが登場すれば、多くのゲーマーにとって魅力的な選択肢となるだろう。
性能向上は限定的? Superモデルへの期待と現実
VRAM容量が50%も増えるとなると、大幅な性能向上を期待したくなる。しかし、Chiphellフォーラムの投稿者などからは、Superモデルのパフォーマンスは現行モデルと比較して「それほど大きな向上は感じられない」という声も出ている。
これは、過去のSuperモデルの傾向とも一致する。例えば、RTX 4080 Superは、RTX 4080に対して1080pで2%、1440pで3%、4Kで4%程度の性能向上に留まった。 VRAM容量が増えたRTX 4070 Ti Super (16GB) も、RTX 4070 Ti (12GB) に対して3%~5%程度の性能向上だった。
VRAM増強は、特定の条件下(高解像度テクスチャの使用、大規模なAIモデルの処理など)では明確なメリットをもたらすが、GPUコア自体の性能(SM数や動作クロックなど)が大きく向上しない限り、全体的な平均フレームレートの大幅な底上げには繋がりにくい。 もちろん、VRAM不足によるフレームレートの急激な落ち込みが改善される効果は期待できる。
登場時期と信憑性:期待はいつ現実になるか
これらのSuperモデルがいつ登場するのか、現時点では不明である。RTX 40シリーズの場合、最初のモデルが登場してから約15ヶ月後にSuperモデルが発表された。 このスケジュールを踏襲するなら、RTX 50 Superシリーズの登場は2025年中頃以降、あるいは2026年のCES(Consumer Electronics Show)あたりになる可能性が考えられる。 Computex 2025での発表は早すぎるのではないか、という見方が強い。
重要なのは、これらが現時点ではあくまで噂であり、NVIDIAからの公式な発表は何もないという点だ。 Chiphellフォーラムは過去にも正確なリーク情報を提供した実績がある一方で、不確かな情報も混在するため、情報の取り扱いには注意が必要である。 NVIDIAが社内で様々な可能性を検討している段階なのか、あるいは競合(AMDなど)の動きに対応するための準備なのかもしれない。
とはいえ、現行モデルのVRAM容量に対する不満が多いことを考えると、NVIDIAがSuperモデルでVRAM増強に踏み切る可能性は十分にあるだろう。ゲーマーやクリエイターにとって、特にRTX 5070 Superの18GB化は歓迎される動きとなるはずだ。
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