8月7日、NVIDIAが次世代CPU「Vera」のメモリ仕様を巡る観測に答えた。Wccftechへの回答で同社は、演算、ネットワーク、メモリを継続的に最適化していると説明し、Veraのモジュール式SOCAMM構成が最大1.5TBに対応するとの公式仕様を改めて示した。これは、出荷機の搭載量を減らすとの報道を全面否定した回答ではない。最大容量を残しながら、供給量や顧客の用途に応じて容量の異なる構成を用意する余地を残している。
争点は「1.5TBが消えたか」ではなく、量産時にどの容量が標準になるかだ。TrendForceは6月10日、Vera Rubin SuperchipのSOCAMM搭載量が半減したと報告した。NVIDIAの回答と公式ページは上限を示す一方、標準構成や96GBモジュールの採用を明らかにしていない。両者を合わせると、仕様表の最大値と市場に多く出る構成を分けて考える必要がある。
「最大1.5TB」は撤回されていない
NVIDIAの公式仕様では、Vera Rubin Superchipは1基のVera CPUと2基のRubin GPUで構成される。Vera側は最大1.5TBのLPDDR5X、Rubin側はGPU当たり最大288GBのHBM4を備え、2基で576GBになる。HBM4の帯域はGPU当たり最大22TB/s、VeraとRubinを結ぶNVLink-C2Cは1.8TB/sだ。ただし、仕様値は暫定であり、すべて「最大」かつ変更される可能性があるとNVIDIAは明記している。
LPDDR5XとHBM4は同じ「メモリ」でも役割が異なる。HBM4はGPUの近くで演算へデータを高速供給し、VeraのLPDDR5XはCPUが扱う大容量のシステムメモリとなる。NVIDIAは両者をコヒーレントに接続し、アプリケーションから一つのアドレス空間として扱える設計を採った。これにより、推論時のKVキャッシュをCPU側へ逃がしたり、複数モデルの実行でデータ移動を減らしたりできる。
Veraの1.5TBは、前世代Graceとの比較でも大きな変化だ。NVIDIAの技術資料は、Graceの最大480GB、512GB/sに対し、Veraを最大1.5TB、1.2TB/sとしている。容量は3倍、帯域は2.4倍になる。ただし、これは最大構成同士の比較であり、報道にある768GB構成の帯域は公表されていない。
192GB量産と60%の供給ギャップ
供給側では、大容量SOCAMM2の製品化が進んでいる。SK hynixは4月20日、Vera Rubin向け192GB SOCAMM2の量産開始を発表した。第6世代10nm級に当たる1cnmのLPDDR5Xを使い、同社は従来のRDIMMに比べて帯域が2倍超、電力効率が75%以上高いと説明する。192GBという容量は、Veraの1.5TB構成を実装できる部品が量産段階に入ったことを示す。
Micronも3月3日、256GB SOCAMM2の顧客向けサンプル出荷を始めた。32GbのモノリシックLPDDR5Xダイを採用し、8チャネルCPUで2TBを構成できる。Micronは標準RDIMMに対して消費電力と実装面積を3分の1に抑え、同社の試験では長文コンテキストLLMの最初のトークン生成までの時間を2.3倍高速化したとする。ただし、サンプル出荷はNVIDIAが必要とする数量の確保を意味しない。
量産可能な部品があっても、割当量が需要に届くとは限らない。TrendForceによると、Samsung、SK hynix、Micronの2027年初期生産計画でNVIDIAに割り当てられるLPDRAMは、同社の需要見積もりの約60%にとどまるという。同社は、NVIDIAが1台当たりの搭載量を減らす一方、Vera CPUの出荷台数を増やそうとしていると分析した。これはメモリ需要の減少ではなく、限られたビット量をより多くのシステムへ配る判断である。
半減とSKUが両立する理由
Wccftechは、192GBモジュールによる1.5TB構成から、96GBモジュールを使う768GB構成へ移すとの観測を伝えている。しかし、NVIDIAが同媒体に確認したのは「最大1.5TB」という上限であり、96GB構成の採用や768GBを標準SKUにする計画ではない。したがって、768GBは報道上の候補であり、確定仕様としては扱えない。
TrendForceは、1台当たりの容量を減らし、Vera CPUの生産台数を増やすことがNVIDIAの狙いだと分析している。搭載量を半分にすれば、同じ量のLPDDR5Xをより多くのシステムへ振り分けられるためだ。容量別SKUが実際に用意されるなら、顧客は必要なCPUメモリ量に合わせて構成を選べる。ただし、価格と消費電力、総保有コストはまだ比較できない。
公式資料によれば、VeraのLPDDR5XはRubinのHBM4と一つのアドレス空間を構成し、KVキャッシュの退避にも使える。したがって、CPUメモリをどこまで使うかはワークロードで変わる。NVIDIAは768GB構成を確認しておらず、容量別の帯域やベンチマークも示していない。性能への影響は、SKUごとの仕様と測定条件が出るまで定量化できない。
Rubin Ultraで確認すべき数字
今回のNVIDIAの回答はVeraのSOCAMM上限を説明したもので、Rubin UltraのHBM構成を直接確認していない。CPUに接続するLPDDR5Xを減らす話と、GPUパッケージ上のHBM4Eを減らす話は別である。Veraの回答を根拠に、Rubin Ultraの容量観測まで否定されたと判断することはできない。
公開済みのRubin仕様では、GPU当たり最大288GBのHBM4と22TB/sの帯域が示されている。まず確認したいのは、このRubin量産機で上限値と主要SKUがどこまで一致するかだ。その次はRubin Ultraの番になる。NVIDIAがGPU当たりのHBM4E容量とスタック数をどう定め、どの帯域でいつ量産するかを正式に示す必要がある。
NVIDIAはVera Rubinの各数値を暫定値としている。1.5TB対応部品の量産開始と、需要の約60%しか満たせないとの供給見通しが同時に存在する以上、製品ページの最大値だけでは市場に出る構成を予測できない。主要サーバーメーカーが容量別SKUと価格を開示した時点で、柔軟な構成が顧客の選択肢を増やすのか、供給不足を吸収するための妥協なのかを判定できる。



