Googleが、Geminiのモデル構造の一部をハードウェアへ固定するサーバーチップ「Frozen v2」を開発していると、The Informationが2026年7月20日に報じた。計画では、消費電力当たりに処理するAIトークン数をGoogleの最新カスタムAIチップ比で6〜10倍へ引き上げ、最短で2028年に使い始める。ただし、Googleは製品を発表しておらず、回路へ組み込むモデル情報の量も決まっていない。すでに推論向けTPUを持つGoogleが、なぜGemini専用に近いチップをもう一系統必要とするのか。答えは、柔軟性を残すTPUと、モデル固有の情報を回路へ固定する設計の間にある。

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6〜10倍を狙うGemini固有の回路

The Informationの報道によると、Frozen v2はGeminiの要素を回路へ直接組み込み、推論時の効率を高める。比較指標は、1ワット当たりに処理できるAIトークン数だ。したがって、6〜10倍は回答速度が同じ倍率で上がるという意味ではない。電力と処理量をそろえ、遅延やモデル品質も同条件で測った製品ベンチマークは、まだ公表されていない。

電力当たりの処理量は、データセンターに置けるチップ数と同じくらい供給能力を左右する。Googleは第8世代TPUの公式発表で、現在のデータセンターでは電力が制約になっていると説明した。同社のデータセンターが供給する電力当たりの計算量は、過去5年間で6倍になったという。Frozen v2の目標が実現すれば、既存の電力枠から返せるGeminiの応答を増やせる。

設計はまだ確定していない。Googleは2028年にも導入する計画だと報じられたが、エンジニアはモデル情報をどこまで固定するかを詰めている段階にある。固定範囲を広げれば、汎用的な処理を省いて効率を上げやすい。一方で、将来のGeminiが異なる構造を採ったとき、回路との食い違いも大きくなる。

Google Cloudの広報担当者はReutersに対し、同社のチームが新技術を継続的に研究・実験し、ハードウェアとソフトウェアを一から共同設計することでシステムを統合・最適化していると説明した。この発言はGoogleの設計方針を示すが、Frozen v2の名称、性能、投入時期を公式に確認したものではない。現時点の6〜10倍は、開発計画の目標値として扱う必要がある。

TPU 8iより狭く、モデル構造へ踏み込む

Googleの第8世代TPUは、学習向けのTPU 8tと推論向けのTPU 8iに分かれている。TPU 8iは288GBの高帯域メモリと384MBのオンチップSRAMを備え、SRAM容量を前世代の3倍に増やした。Mixture of Experts(MoE)モデル向けのチップ間帯域も19.2Tb/sへ倍増し、集合演算を受け持つ専用エンジンはオンチップ遅延を最大5分の1にする。推論でプロセッサがデータを待つ時間を削る設計だ。

それでもTPU 8iは、さまざまなワークロードを動かせる。GoogleはJAXとPyTorchに加え、SGLangやvLLMなどの主要ソフトウェアをネイティブで支援し、クラウド利用者にも提供する。モデルや推論エンジンを載せ替えられることが、TPUの計算基盤としての価値になる。

Frozen v2は、この柔軟性をさらに狭める方向へ進む。報道どおりGemini固有の構造を回路側へ移せば、実行時に繰り返す演算やデータ移動の一部を減らせる可能性がある。その代わり、同じ回路で異なるモデルを動かす自由は小さくなる。Googleが公式に説明するTPUの共同設計が「モデルを意識した汎用アクセラレーター」だとすれば、Frozen v2は「特定モデルに合わせた推論回路」に近づく試みだ。

公式資料でGoogleは、第8世代TPUの性能対電力を前世代Ironwood比で最大2倍、TPU 8iの性能対価格を前世代比で80%高いとしている。Frozen v2の6〜10倍は別の指標であり、基準となるチップの型番も公開情報から確定できない。数字の大きさを並べて、Frozen v2がTPU 8iを同じ倍率で上回ると結論づけることはできない。

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効率の代償はモデル更新への追随力

チップの開発周期は、AIモデルの更新より長い。Google自身も第8世代TPUの発表で、ハードウェアを市場へ出すまでには数年かかるため、将来の技術と需要を先回りして設計すると説明している。2028年にFrozen v2を動かすなら、現在決める回路が、その時点のGeminiにも適合しなければならない。

モデル構造を固定する設計には、二つの時間軸が衝突する。シリコンは製造後に大きく変えられないが、Geminiはソフトウェアとして更新を続ける。固定した部分が長く使えるなら、同じ電力とデータセンター設備から取り出せる推論量を増やせる。逆にGemini側が構造を変えれば、新しいモデルを既存チップへ合わせるか、効率向上を諦めるか、次のチップを待つかの判断が生じる。

この制約は、Frozen v2がTPUを置き換えないという報道とも整合する。幅広いモデル、学習、外部顧客の処理はTPUが担い、十分に安定したGeminiの大量推論だけをFrozen系へ移すなら、Googleは柔軟性を全体から失わずに済む。計算資源の逼迫を緩和するという目的にも合う。もっとも、Googleは対象ワークロード、量産規模、外部提供の有無を明らかにしていない。

投入判断は固定範囲と実測値で決まる

Frozen v2の評価には、まず回路へ何を固定するかという仕様が要る。「Geminiの要素」という説明だけでは、どの演算とデータ移動を省けるのか、モデル更新がどこまで可能なのかを判断できない。固定範囲が分かれば、6〜10倍の効率と引き換えに失う互換性も測れる。

次に必要なのは、同じモデル品質と遅延条件で測ったトークン数当たりの電力である。推論チップは、処理量を増やしても応答が遅くなったり、利用率の低い場面で効率が落ちたりすれば、サービス全体の原価を狙いどおり下げられない。設計目標がデータセンターで再現されるかは、チップ単体ではなく、メモリからネットワーク、冷却までを組み合わせたシステムで決まる。

最後に、TPUとの役割分担が事業上の意味を決める。GoogleがFrozen v2をGeminiの安定した大量推論へ限定できれば、TPUを外部顧客や新しいモデルへ回し、同じ設備から供給できるAI処理を増やせる。2028年までに固定範囲と比較条件が開示され、Geminiの世代更新後も効率が維持されると確認できたとき、Frozen v2はモデル固有シリコンを大規模サービスへ組み込む新しい階層になる。