PCI-SIGは、PCI Express 7.0仕様の最終ドラフトとなるバージョン0.9を会員向けに公開した。PCIe 7.0は前世代の2倍となる128GT/sの転送速度を実現し、x16構成で最大512GB/sの双方向帯域幅を提供する。正式版は2025年内に公開される見込みである。
PCIe 7.0の主要仕様と特徴
PCI Express 7.0の最終ドラフトは、当初からの技術目標をすべて達成している。最も注目すべき点は、PCIe 6.0から倍増した128GT/s(ギガトランスファー/秒)の生データ転送速度だ。これによりx16レーン構成において、双方向で最大512GB/sという圧倒的な帯域幅が実現される。

この飛躍的な高速化を支えるのが、PCIe 6.0で初採用されたPAM4(4レベルパルス振幅変調)信号方式である。PCIe 7.0ではこの技術を継承しつつ、チャネルパラメータとリーチの最適化、電力効率の向上、そして低レイテンシと高信頼性の確保に重点を置いた改良が施されている。
また特筆すべきは、PCIe 7.0が過去のすべてのPCI Express世代との下位互換性を完全に維持している点だ。これにより、古い規格のデバイスも新世代のマザーボードで問題なく動作することが保証される。
PCI-SIGによれば、このバージョン0.9の仕様では今後機能的な変更は予定されておらず、2025年内の最終版公開に向けて順調に進んでいるという。
PCIe規格の進化と市場展望
PCI-SIGは約3年周期で新世代のPCI Express規格を発表し、その都度転送速度を倍増させるという一貫したロードマップを維持してきた。PCIe 6.0は2022年1月に正式承認されたものの、現時点では一般向けハードウェアへの実装には至っていない。現在の主流PCマザーボードはPCIe 5.0を採用しており、市場には多くのPCIe 4.0デバイスも流通している状況だ。

技術進化の速さを示す興味深い事実として、PCIe 3.0でx16レーン構成が提供していた32GB/sの双方向帯域幅と同等の性能が、PCIe 7.0では単一のx1レーンだけで実現できるようになる。わずか数世代で16分の1のレーン数で同等の性能を発揮できるようになったことは驚異的である。
PCIe 7.0の開発が最初に発表された2022年、Insight 64のリサーチフェロー、Nathan Brookwood氏は次のように述べている。「30年間、PCI-SIGの指導原理は『我々が構築すれば、彼らはやってくる』でした。1990年代のグラフィックス、ストレージ、ネットワークの需要に対応する数百メガバイト/秒の速度をサポートしていた初期のPCI技術から、2003年には高速SSDや100MbEイーサネットに対応するギガバイト/秒の速度をサポートするシリアル設計へと進化しました。まるで時計仕掛けのように、PCI-SIGは新興アプリケーションと市場の課題に対応するため、ほぼ3年ごとにPCIe仕様の帯域幅を倍増させてきたのです。」
また、PCI-SIG会長のAl Yanes氏も当時、「PCIe 7.0仕様により、PCI-SIGはイノベーションの境界を押し広げる業界先導の仕様を提供するという30年にわたる取り組みを継続します」と述べていた。
PCIe 7.0は当初から一般PC市場というよりも、クラウドコンピューティング、800ギガビットイーサネット、AI/機械学習、量子コンピューティング、ハイパースケールデータセンター、高性能コンピューティング(HPC)、軍事・航空宇宙分野などの先端領域をターゲットとしている。これらの分野では、加速器間や加速器とCPU間の膨大な帯域幅が要求されるためだ。
製品化の時期については、最終版のv1.0仕様は2025年内に公開され、一部のPCIe 7.0アクセラレーターが2026年に登場する見込みである。しかし、一般消費者向けマザーボードへの搭載はさらに先になることが予想される。現在ようやくRTX 50シリーズやRX 9070シリーズといったPCIe 5.0対応GPUが市場に登場し始めたばかりであり、PCIe 7.0が主流となるまでには数年を要するだろう。
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