ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は、PlayStationコンソール向け新作ゲームのディスク版生産を2028年1月に終了する。[1]同月以降に発売される新作は、PlayStation Storeと販売店でダウンロード版として提供される。すでに発売済みのタイトル、または2028年1月より前にディスク版として発売されるタイトルは、今回の変更の対象外だ。
PlayStationから小売店が消えるわけではない。SIEは販売店での購入経路を残すとしている。変わるのは、店頭で扱われる商品がゲームデータを収めたディスクから、ダウンロード版などのデジタル商品へ移る点だ。中古売買、貸し借り、コレクション、オフライン保管といった物理メディアの性質は、新作の流通から外れていく。
この発表は、同日に公表されたPS3およびPS Vita向けPlayStation Storeの終了計画とも重なる。[2]SIEは一部地域で2026年からPS3向けStoreを閉鎖し、2027年7月には日本を含むその他の国・地域でPS3とPS Vita向けStoreを終了する。購入済みコンテンツについては、サービス終了後も当面の間ダウンロードできるとしている。新作の流通と旧世代機のストア運営は別の問題だが、どちらもPlayStationの商流とサポート対象を現行のデジタル基盤へ寄せる動きとして読める。
2028年以降も販売店は残り、商品はデジタル版へ移る
SIEが示した変更範囲は明確だ。2028年1月以降にPlayStationコンソール向けに発売されるすべての新作ゲームについて、ディスク版の生産が終わる。ダウンロード版はPlayStation Storeに加え、販売店でも扱われる。既存タイトルや、2028年1月より前にディスク版として発売されるタイトルへの影響はない。
SIEの狙いは小売チャネルを切り捨てることではなく、販売店で扱う商品をディスク版からデジタル版へ移すことにある。販売店は予約、ギフトカード、キャンペーン販売の接点として残り得る。一方で、ゲーム本体を記録したディスクを流通させる仕組みは、新作では終わる。
ユーザー側の変化は、インストール方法よりも権利と流通に表れる。ディスク版では、購入者がパッケージを保管し、他人に貸し、売却し、ネットワーク障害時にも手元の媒体を起点にできた。ダウンロード版中心になると、購入履歴、アカウント、ライセンス、ストアの運営条件が遊ぶための前提になる。利便性は増すが、手元の物を移すだけで権利も動くという感覚は薄れる。
ソニーの数字では、ディスク販売は売上の小部分になっていた
SIEが挙げた理由は、購買トレンドの変化とエンタテインメント業界全体のデジタル移行である。ソニーグループの2025年度第4四半期補足資料を見ると、この説明は事業数字ともつながる。
2025年度のゲーム&ネットワークサービス分野の売上高は4兆6856億5100万円、営業利益は4632億5800万円だった。このうちゲームソフト売上は2兆6410億2300万円で、物理ソフト売上は1251億600万円にとどまる。単純に割ると、物理ソフトはゲームソフト売上の約4.7%である。フルゲームのダウンロード版売上は1兆556億8800万円、追加コンテンツは1兆3596億1700万円だった。
販売本数の側から見ても、デジタルへの寄り方ははっきりしている。2025年度のPS4/PS5向けフルゲームソフト販売本数は3億1790万本で、そのうちフルゲームのデジタルダウンロード比率は通期で78%、第4四半期には85%だった。ディスクを買うユーザーが消えたわけではない。しかし、PlayStationの収益構造では、フルゲームのダウンロード、追加コンテンツ、ネットワークサービスが中心になっている。
この構造では、ディスク版の維持は売上の大きさよりも、製造、物流、在庫、返品、ローカライズされたパッケージ、レーティング表記、販売店ごとの陳列といった運用負荷として見えやすくなる。少なくとも数字の上では、ディスク版を新作の標準として維持する理由は弱まっていた。
ハードウェアは先に「ディスクを追加する」形へ変わっていた
今回の発表は突然の転換に見えるが、PS5世代のハードウェアは先にディスクドライブを標準装備から選択肢へ移していた。SIEは2023年10月、薄型化したPS5とPS5 Digital Editionを発表した際、Digital Editionに後からUltra HD Blu-ray Disc Driveを追加できる設計を示した。ドライブは別売りで、日本価格は1万1980円だった。
2024年9月に発表されたPS5 Proでは、この方向がさらに進んだ。PS5 Proは2TB SSDを搭載する一方、ディスクレスの本体として発売され、必要なユーザーは既存のPS5用Disc Driveを別途購入する形になった。高性能版の本体でさえ、ドライブは同梱品ではなく周辺機器扱いになったのである。
ハードウェア側でドライブを外付け化し、ソフトウェア側で新作ディスクの生産を終える。二つの動きは、PlayStation事業がディスクを前提にした設計から離れてきたことを示している。ソニーは2026年度のゲーム&ネットワークサービス分野について、ハードウェア売上の減少を見込む一方、ファーストパーティーソフトの売上増を想定している。決算資料では、次世代プラットフォームへの投資増も織り込んでいる。
ただし、ここから次世代PlayStationにディスクドライブが存在しないと断定することはできない。SIEが今回発表したのは、2028年1月以降の新作ゲームをディスク版として生産しないという流通方針であり、未発表ハードの仕様ではない。既存ディスクの互換や別売りドライブの扱いは、今後の正式発表を待つ必要がある。
ダウンロード版の便利さは、ライセンスへの依存と表裏一体になる
ダウンロード版への移行は、発売日の在庫切れを減らし、パッチ適用済みのデータを配信しやすくし、地域ごとの在庫調整を軽くする。ユーザーにとっても、ディスクの入れ替えが不要になり、セールや事前ダウンロードを使いやすい。PlayStationの月間アクティブユーザー数は2025年度第4四半期末で1億2500万アカウントに達しており、SIEが現行のオンライン基盤に合わせて流通を設計したい理由はある。
その一方で、ダウンロード版は「買ったものを手元に置く」感覚を弱める。日本のPlayStationオンラインサービス利用規約は、オンラインサービス上で提供されるプロパティーを、個人的かつ非営利的な利用のために非独占的かつ撤回可能な形式でライセンスすると定めている。また、オンラインサービス上や関連して使われる「購入」「販売」「売る」「買う」といった表現は、知的財産権や所有権の譲渡を意味しないとしている。
これはゲーム販売に限った特殊条項ではなく、デジタル配信サービス全般に近い構造である。だが、PlayStation新作がダウンロード版へ一本化されると、この構造は選択肢の一つではなく、新作を遊ぶ標準条件になる。ユーザーの関心は、ダウンロード速度や容量から、アカウント停止時の扱い、返金条件、地域移動、家族共有、販売店で扱う商品の有効期限、ストア終了時の再ダウンロードへ広がっていく。
旧世代Storeの終了は、保存とアクセスの問題を前面に出す
PS3とPS Vita向けPlayStation Storeの終了計画は、2028年の新作ディスク終了と同じ日に発表された。SIEは、PS Storeが最新の購入・決済システムへの対応を進める一方、PS3とPS Vitaでは必要な要件を満たすことが難しいと説明している。メキシコ、ホンジュラス、ニカラグアでは2026年8月からPS3向けStoreを終了し、そのほか一部地域では2026年後半、その他の国・地域では2027年7月にPS3とPS Vita向けStoreを終了する。
過去に買ったゲームがただちに消えるわけではない。SIEは購入済みコンテンツを当面の間ダウンロード可能にするとしている。とはいえ「当面の間」という表現は恒久保証ではない。旧世代機の決済や認証は、最新の購入・決済システムから外れていく。物理ディスクには、この種のストア運営から切り離された保存手段としての価値があった。
ソニー全体でも、光ディスク関連の消費者向け製品は縮小している。ソニーストレージメディアソリューションズは2025年2月に、ブルーレイディスクメディア、録音用ミニディスク、記録用MDデータ、ミニDVカセット全モデルの生産を終了した。これはゲームディスクのプレス生産とは別の話だが、家庭用の記録メディア市場が細っていることを示す材料ではある。
2028年のPlayStationは、ディスクを捨てるというより、新作ゲームの流通をアカウントに結びつくデジタル商品へ寄せていく。販売店、出版社、ユーザーが次に確認すべきなのは、その商品がどれだけ扱いやすい形になるかだ。ギフトとして渡せるのか、返品や年齢制限はどう処理するのか、パッケージ版に近い限定版や特典は何で代替するのか。ディスク版終了後の不満は、ダウンロードそのものより、所有、移転、保存をどう設計するかで決まる。