Ludeon Studiosは2026年10月12日、コロニー運営シミュレーションゲーム『RimWorld』のゲームエンジンをUnityから自社開発の「Waylith Engine」に変更するアップデート1.7を発表した。すでにSteamのベータ版で試すことができ、同社によると、ゲームの見た目や遊び方はそのままに、従来比で2〜4倍の性能向上を実現したという。長年プレイしてきたコロニーや大量のMODを抱えるプレイヤーにとって、ゲームが重くなる問題はコロニーの発展を制限する大きな要因だ。今回のエンジン刷新がどれほどの効果をもたらすのか、具体的な性能改善と既存データの互換性を中心に見ていこう。
新エンジンで性能が2〜4倍に向上、その実力は?
Ludeon Studiosの公式発表によると、ゲーム終盤まで発展したコロニーを使った負荷テストでは、バージョン1.6と比較して2.2倍の処理性能を記録したという。ゲームの起動時間や大量のMODを導入した環境でのロード時間が短縮されたほか、マップやワールドの生成、ゲーム内シミュレーションの更新処理など、幅広い場面で性能が改善している。
ただし、公表された「2〜4倍」という数値が、そのまま描画フレームレートの向上を意味するわけではない。画面を1秒間に何回描画できるかを示すフレームレート(FPS)と、ゲーム内部の処理を1秒間に何回実行できるかを示すTPS(Ticks Per Second)は異なる指標だ。『RimWorld』では、画面の描画が滑らかでも、コロニー内のシミュレーション処理が追いつかなければゲームの進行が遅くなる。そのため、どの処理が高速化されたのかを区別する必要がある。
ロード時間については、具体的な測定結果も公表されている。1,500個のMODを導入した環境では、ロード時間が従来の14分から6分へと短縮された。これは約57%の短縮に相当し、従来の半分以下の時間でゲームを読み込める計算だ。
なお、この約57%という数値は、2026年10月12日に公表されたバージョン1.6と1.7のロード時間から算出したもので、プレイ中の処理性能が57%向上したことを意味するものではない。
また、これらはあくまでLudeon Studiosによる社内テストの結果だ。測定に使用したPCの詳細な構成やMODの一覧は公開されておらず、同社も使用環境によって改善幅が異なると説明している。
実際の効果を確認するには、同じセーブデータとMOD構成を使い、ロード時間とゲーム進行中の処理速度をそれぞれ比較するのが有効だろう。
Unity時代から積み重ねてきた独自の最適化
『RimWorld』は、Unityを採用していた頃から、ゲーム固有の処理について独自のシステムを開発してきた。
Ludeon Studiosは公式FAQで、ゲーム内のオブジェクトや時間の進行を管理するため、独自のシステムを構築したと説明している。『RimWorld』のように、タイル状の2Dマップ上で数千ものオブジェクトを管理するゲームと、連続した3D空間を扱うことを得意とするUnityでは、求められる処理の性質が異なるというのが同社の考えだ。
これは、2Dゲームだからといって必ずしも処理が軽いわけではないことを示している。画面の見た目が単純でも、その裏側では膨大な数のキャラクターや動物、設備などの状態を更新し続けなければならない。汎用ゲームエンジンを使っていても、こうしたゲーム特有の処理を独自に最適化する余地は大きい。
ただし、このFAQはWaylith Engineの内部構造を解説したものではない。以前から独自の処理システムを持っていたことは確認できるものの、それが今回のエンジン移行をどの程度容易にしたのかまでは明らかになっていない。
また、『RimWorld』の性能改善は今回が初めてではない。
Ludeon Studiosは2025年6月に発表したアップデート1.6でも、大規模な最適化を実施している。キャラクターの経路探索処理をマルチスレッド化し、複数の処理をまとめて実行する仕組みに変更したほか、照明処理もマルチスレッド化することで、ゲーム終盤に負荷が高まりやすい部分を改善した。
さらに、開発用PCでの測定では、ゲームの起動時間がバージョン1.5の18.57秒から、1.6では4.66秒に短縮されたという。しかも、1.6では拡張コンテンツが1本多い状態での測定だった。
もっとも、この起動時間の比較と、今回発表された1,500個のMODを導入した環境でのロード時間は、測定対象も条件も異なる。そのため、両者の改善率を単純に掛け合わせて、過去のバージョンからの総合的な高速化率を算出することはできない。
こうした開発の経緯を踏まえると、Waylith Engineへの移行は、『RimWorld』に特化した最適化を積み重ねてきた開発チームが、ついにゲームエンジン自体の刷新に踏み切った大きな転換点といえる。
どのような内部構造の変更が今回の性能向上につながったのかについては、今後の詳しい技術解説を待つ必要がある。一方、プレイヤーにとっては、こうした恩恵を受けるために、これまで築き上げたコロニーやMOD環境を作り直す必要があるのかどうかも重要な問題だ。
セーブデータとMODの互換性も確保
今回の移行で注目すべきもう一つのポイントが、既存環境との互換性だ。
Ludeon Studiosによると、バージョン1.6のセーブデータは1.7でもそのまま読み込める。さらに、1.7で保存したデータを1.6に戻して使用することも可能だという。
つまり、新エンジンを試した後に従来のバージョンへ戻すことも想定されている。長い時間をかけて発展させたコロニーを最初から作り直す必要がないのは、既存プレイヤーにとって大きな利点だろう。
MODについても、大半は作者による修正なしで動作すると説明されている。
ただし、バージョン番号が変更されたことで、一部のMODには「対応していない可能性がある」という黄色い警告が表示される場合がある。これは必ずしも動作上の問題を意味するものではなく、単に対応バージョンの情報が更新されていないことが原因の場合もある。
Ludeon StudiosはMOD作者に対し、1.7で正常に動作することを確認したうえで、対応バージョンを明示したMODを公開するよう呼びかけている。
もっとも、セーブデータの互換性とMODの正常動作は別の問題だ。セーブデータを読み込めたとしても、導入しているすべてのMODが問題なく動作するとは限らない。
また、同社は製造から10年以上経過した古いPCでは、バージョン1.7が動作しない可能性があるとも説明している。従来のバージョンをプレイできたPCであれば、必ず新エンジンも動くというわけではない。
一方、MOD開発者にとっては、Waylith Engineへの移行による新たな利点もある。
Ludeon Studiosは、新エンジンによって最新のC#言語機能が利用できるようになるほか、ゲームの性能に悪影響を与えずに複雑なMODを開発しやすくなると説明している。大規模なグラフィック変更や独自の視覚効果も実装しやすくなるという。
既存MODの互換性を維持しながら、新しい表現や機能を追加しやすくなるのであれば、今後のMOD開発にも好影響が期待できる。ただし、こうした可能性が実際にどこまで広がるかは、開発者が新エンジンを活用していく中で明らかになるだろう。
Waylith Engineは新作にも採用、アップデート1.7はベータテスト中
Waylith Engineが使われるのは『RimWorld』だけではない。
Ludeon Studiosは今回の発表で、同エンジンを採用した別の新作を開発していることも明らかにした。ただし、現時点ではタイトルやゲーム内容、発売時期などは発表されていない。
自社エンジンを複数の作品で活用する方針が示された形だが、この新作が『RimWorld』の続編なのか、それともまったく別の作品なのかは不明だ。
なお、アップデート1.7は現在、Steamのベータ版として公開されている。
試す場合は、Steamライブラリで『RimWorld』を右クリックして「プロパティ」を開き、「ベータ」タブから「unstable」ブランチを選択する。自動的に更新が始まらない場合はSteamを再起動し、起動時に選択肢が表示された場合は「Play 1.7 Unstable」を選べばよい。
通常の配信ブランチは引き続きバージョン1.6のままであり、すべてのプレイヤーが自動的に新エンジンへ移行する段階ではない。
ベータ版で確認したいのは、普段プレイしているコロニーでどの程度の性能向上が得られるのか、そして使い慣れたMODが正常に動作するかという点だ。
今回のエンジン刷新によって、従来は処理の重さが原因で難しかった大規模コロニーの運営が、より快適になる可能性がある。特に、多数の住民や動物を抱え、100個以上のMODを導入しているような環境では、その恩恵を実感しやすいかもしれない。
長年にわたって蓄積されたセーブデータやMOD環境を維持しながら、大幅な性能向上を実現できるのであれば、既存プレイヤーにとっても大きな進化となる。今後は、さまざまなPC環境やMOD構成でどの程度の改善が確認できるかが注目される。
