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Samsung 2nmプロセス、驚異の歩留まりでNVIDIA採用が現実に?TSMC一強体制に風穴を開けるか

Y Kobayashi

2025年5月14日5:49PM

長らくTSMCの後塵を拝してきたSamsungの半導体ファウンドリ事業が、次世代2nm(ナノメートル)プロセスで目覚ましい進展を見せているという。韓国の朝鮮日報の報道によると、Samsungの2nmプロセスはその歩留まりを劇的に改善させており、AI半導体の巨人NVIDIAやモバイルチップの雄Qualcommといった大手顧客が採用に向けた最終評価段階に入ったというのだ。

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Samsung 2nmプロセス、驚異の歩留まり改善が意味するもの

半導体製造において、最先端プロセスの開発は熾烈を極める。特に、回路線幅が原子レベルに近づくほど、その製造難易度は指数関数的に増大し、「歩留まり(良品率)」の確保が最大の関門となる。Samsungは、世界で初めてGAA(Gate-All-Around)構造を導入した3nmプロセスで、この歩留まりの壁に直面し、苦戦を強いられてきた。当初、期待された性能と安定供給に至らず、一部では「Exynos 2500」のような自社製品計画にも影響が出たとされる。

しかし、その3nmでの苦難の経験が、2nmプロセスの改善に繋がったのかもしれない。朝鮮日報によれば、Samsungの3nm GAAプロセスの歩留まりは最近60%を超え、安定化の兆しを見せているという。そして、この3nmの経験を活かして改良された2nmプロセスでは、さらに大きな飛躍が期待されている。情報筋によれば、Samsungの2nmプロセスの歩留まりは既に40%を上回っているとされ、これは量産に向けた重要なマイルストーンと言えるだろう。

TSMCの2nmプロセスの歩留まりが現在60%程度と報じられていることを考慮すると、Samsungは猛追を見せている。Samsung社内からも「3nmでのGAA導入初期の試行錯誤が、2nmの安定化への貴重な土壌となった」との声が聞かれるほどだ。

なぜNVIDIAとQualcommはSamsungを評価するのか?背景にあるTSMC依存への警戒感

では、なぜNVIDIAやQualcommのような巨大企業が、Samsungの2nmプロセスに熱視線を送っているのだろうか。その背景には、いくつかの複合的な要因が存在すると考えられる。

第一に、TSMCへの過度な生産依存からの脱却だ。現在、最先端プロセスの大部分をTSMC一社が担っており、その生産キャパシティは常に逼迫している。Apple、NVIDIA、AMD、Qualcommといった名だたる企業がTSMCの主要顧客リストに名を連ねており、供給不足や価格交渉力の低下は常に懸念材料だ。これらの企業にとって、信頼できる第二の供給源を確保する「デュアルソーシング戦略」は、事業継続性の観点からも極めて重要なのだ。

第二に、地政学的リスクの増大も見逃せない。台湾海峡を巡る緊張は、万が一の事態が発生した場合、世界の半導体供給網に壊滅的な打撃を与えかねない。このリスクを分散させるためにも、韓国や、将来的にはSamsungが建設を進める米国テキサス州テイラーの新工場のような代替生産拠点の価値は高まっている。

そして第三に、Samsung自身の技術的進歩への期待だ。初期のGAAプロセスでは苦戦したものの、Samsungがそこで得た知見とデータは膨大だ。もしSamsungの2nmがTSMCと同等、あるいは特定の用途において競争力のある性能とコストを提示できるならば、顧客にとっては魅力的な選択肢となる。実際、業界関係者からは「初期評価では予想より低い歩留まりだったものの、最近の評価では肯定的な結果が出ている」との声も聞かれる。

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TSMCとの覇権争いの行方 – 2nmが握る次世代半導体の主導権

Samsungが2nmで本格的に市場参入を果たせば、長らくTSMCが築いてきた牙城に風穴を開けることになるだろう。TSMCは既にAppleの次世代AP(アプリケーションプロセッサ)やAMDのAIアクセラレータなどを2nmで受注し、量産準備を進めているとされ、その技術力と顧客からの信頼は依然として盤石だ。TSMC自身も、2nmの潜在需要は3nmを大きく上回ると予測しており、この次世代プロセスへの注力は明らかだ。

しかし、Samsungの猛追は、この状況に一石を投じる。もしNVIDIAが消費者向けGPUやAI GPUの一部にSamsungの2nmを採用するとなれば、そのインパクトは計り知れない。Qualcommの次世代Snapdragonに採用される可能性も、モバイル市場におけるSamsungファウンドリの復権を意味する。

この競争は、単に技術開発の競争に留まらない。それは、今後のAI、モバイル、ハイパフォーマンスコンピューティングといった成長分野における主導権争いであり、ひいては国家間の技術覇権争いの様相をも呈している。

競争がもたらす恩恵と残された課題

このSamsungとTSMCの熾烈な競争は、最終的に私たち消費者にどのような影響をもたらすのだろうか。健全な競争は、技術革新を加速させ、製品価格の適正化を促す。もしSamsungが信頼性の高い2nmプロセスを安定供給できるようになれば、より高性能で、あるいはより安価なスマートフォン、PC、AI搭載デバイスが私たちの手元に届く日が早まるかもしれない。

もちろん、Samsungの前途が全て順風満帆というわけではない。2nmプロセスの歩留まりを現在の40%超から、TSMCに匹敵するレベル、そしてそれ以上に引き上げ、かつ大規模生産体制を確立するには、まだ多くのハードルが残されている。しかし、その挑戦が花開き、私たちのデジタルライフをより豊かにするイノベーションが起こることを期待したいところだ。


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