Samsungは2026年7月15日、次世代Galaxy折りたたみ製品向けのディスプレイ技術「Flex Titanium」を発表した。OLEDパネルの下に極薄のチタン合金フィルムを置き、さらにチタンプレートで支える。折り目の部分ではプレートに微細な穴を設け、硬い金属を曲げられる構造へ変えた。折り目を減らす仕事をヒンジや表面の超薄板ガラスだけに任せず、OLEDを下から支える積層全体へ広げた点が今回の変化である。

Flex Titaniumは、次世代Galaxy折りたたみ製品群で初めて使われる。Samsungは製品名をまだ明かしておらず、詳細は日本時間7月22日22時からのGalaxy Unpackedに持ち越した。公開済みの情報からは、折り目をどこまで浅くできたか、何回の開閉に耐えるかも分からない。それでも、Samsungが薄さと耐久性を同時に狙う方法はかなり具体的に見えてきた。

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チタン初採用ではない、支持層を2層に増やした

Flex Titaniumの新しさは、折りたたみ画面にチタンを持ち込んだことではない。2025年のGalaxy Z Fold7は、メインディスプレイの下にチタンプレートをすでに採用していた。Samsungは同時に、Ultra-Thin Glass(UTG)を前世代より50%厚くし、水滴型ヒンジをマルチレール構造へ改めた。ヒンジが開閉時の応力を広く分散し、厚いUTGと下側のプレートが衝撃を受け止める設計だった。

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今回増えたのは、OLED直下のチタン合金フィルムである。その下には加工を改めたチタンプレートが続く。Samsungはポリマーフィルムを性能比較の対象にしているが、Z Fold7の同じ層がポリマーだったとは明記していない。したがって確定できる変化は、チタン合金フィルムを新たに加え、2種類のチタン部品でOLEDを支える構造を製品へ投入することだ。

項目 Galaxy Z Fold7(2025年) Flex Titanium(2026年発表)
OLED直下の支持フィルム 材質の公式記載なし チタン合金フィルム。ポリマーフィルム比で20倍の機械的剛性
下側の支持板 チタンプレート チタンプレート。折り目部分にマイクロパターンホール
画面・ヒンジ側の改良 UTGを50%厚くし、マルチレール式Armor FlexHingeを採用 完成品のUTG厚、ヒンジ構造は未公表
公開された耐久試験 25度で50万回の折りたたみ後も機能 折りたたみ回数、温度条件とも未公表

Z Fold7のパネルは、Bureau Veritasの試験で25度の環境下を13日間、50万回折りたたんだ後も動作した。Samsung Displayが従来基準としていた20万回の2.5倍である。そこにはチタンプレートに加え、従来材より4倍を超える回復性能を持つ高弾性接着剤と、衝撃を面へ分散する平坦化構造も使われていた。Flex Titaniumは、この既存の支持設計をチタン2層へ進める。

20倍の中身は耐久寿命ではなく剛性

Samsungの英語発表は、チタン合金フィルムがポリマーフィルムの20倍の「mechanical stiffness」を持つと記している。日本語発表では「機械的強度」と訳されたが、工学上の剛性と強度は別の量だ。剛性は力を受けたときの変形しにくさを示し、強度は降伏や破断に至るまでにどれだけの荷重へ耐えられるかを表す。20倍という数字から、落下耐性や寿命、折りたたみ回数が20倍になったとは言えない。

剛性が高いフィルムをOLEDのすぐ下に置く利点は、画面を薄いまま広く支えられることにある。指で押したときや端末を開いたとき、柔らかい積層は局所的に沈み、表面のうねりや折り目を目立たせやすい。変形しにくいフィルムなら、その荷重を周囲へ逃がせる。Samsungは精密な圧延によって、チタン合金フィルムを平均的な毛髪の約3分の1まで薄くしたという。

薄さは材料名と同じくらい効く。部材の曲がりやすさは材料の弾性率に加え、厚さと形状で大きく変わるためだ。高い剛性で展開時の面を支えながら、フィルム自体を極薄にして折りたたみ時の負担を抑える。Flex Titaniumという名称の中核は、硬いチタンを使った事実より、この相反する条件を加工で両立させた点にある。

なお、Samsungは高解像度の画素構造と次世代有機材料によって消費電力も減らしたと説明している。これはOLED側の改良であり、チタンを使ったから電力効率が上がるわけではない。改善率も発表されていない。材料と画素構造を同時に刷新した技術パッケージとして切り分ける必要がある。

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硬いチタンを、なぜ折り曲げられるのか

答えは、プレート全体を同じ硬さにしないことだ。Flex Titaniumのチタンプレートは、折り目に当たる部分へ精密なマイクロパターンホールを並べる。穴のない領域は展開した画面を支え、穴を開けた領域は断面が減るため曲がりやすくなる。硬さを材料の選択だけで決めず、必要な場所へ配分する設計である。

Samsungはもう一つ、高度な穴加工によってディスプレイモジュールとプレート上の接着剤との間に空気が残らない構造にしたと説明する。接着面の空隙が減れば、OLEDを下から支える力は均一になり、接着層の剥離や表面のうねりも起きにくくなると考えられる。ただし、Flex Titaniumで剥離やうねりがどれだけ減ったかという実測値は公表されていない。

折りたたみOLEDは、発光部からUTG、支持フィルムまで多数の層を重ねた構造だ。層どうしは接着剤で結ばれている。曲げると内側には圧縮、外側には引張の力がかかり、その中間には伸び縮みの小さい「中立面」ができる。査読研究では、各層の厚さとYoung率、接着剤の特性を一緒に調整しなければ、中立面の位置と剥離リスクを制御できないことが示されている。OLED直下のフィルムと支持板を同時に変えるFlex Titaniumは、パネル全体の応力分布を動かす改良と考えられる。ただし、Samsungは応力解析や中立面の位置を公表していない。

折り目の見え方にも、評価できる数字がある。Seoul National Universityの研究チームは、25人が17種類の試作品を見比べた実験で、折り目の深さが視認性へ強く影響し、深さ60マイクロメートル未満の試作品が「良好」以上と評価されたと報告した。これは業界規格ではなく一つの知覚研究だが、「折り目が目立ちにくい」という宣伝を実測値へ置き換える目安になる。SamsungはFlex Titaniumの折り目深さをまだ示していない。

50万回の実績と、まだないFlex Titaniumの数字

Samsung Displayは2026年1月のCESで、従来品より折り目を浅くした次世代折りたたみパネルを展示していた。斜めからの光が折り目で反射し、影を作る度合いが減ったと説明している。7月のFlex Titanium発表と共通するのは、折り目を浅くするという開発目標だ。CESの展示パネルがFlex Titaniumを使っていたのか、同じパネルが量産製品へ入るのかは確認されていない。

7月22日に確かめたい数字は三つある。第一は、新旧パネルの折り目深さと、開閉を重ねた後にどこまで変化するか。第二は、常温に加えて低温・高温で何回折りたためるかである。第三は、完成品の厚さと重量だ。チタン合金フィルムを増やしながら薄型化を保てたかどうかで、材料変更の実益が見える。

採用範囲もまだ分からない。Samsungは「次世代Galaxy折りたたみ製品」とだけ記し、Fold型とFlip型の両方に入るのか、機種ごとに構造が異なるのかを公表していない。合金の種類、フィルムの絶対厚、穴の寸法と配列も伏せられている。20倍という剛性値の試験方法と比較したポリマーフィルムの仕様が出なければ、他社方式との横比較はできない。

Flex Titaniumの価値は、チタンという看板より、硬さを画面内で配分する発想にある。展開時にはOLEDを広く支え、折り目では穴で曲げ、接着面の空隙も減らす。7月22日に折り目深さと温度別の開閉回数、完成品の厚さ・重量がそろえば、Samsungは「薄いほど壊れやすい」という折りたたみ端末の前提を一段崩せる。写真と形容詞だけで終わるなら、評価は優れた設計思想の段階から先へ進まない。