TSMCが、2nmと3nmの生産能力を2027年半ばにかけてさらに拡大する見通しだ。台湾の経済日報は9月14日、供給網関係者の情報として、2026年末からの増加率を2nmで22%、3nmで16%超と報じた。先端パッケージングのCoWoSにも2028年末までの倍増予測が出ているが、前工程と後工程では増産の期間も、処理する対象も異なる。AI半導体の供給がどこまで増えるかを考えるには、工場の月産能力に加え、そこで作る製品の大きさにも目を向ける必要がある。
増産の時期は前工程とCoWoSで異なる
経済日報の9月14日付報道によると、TSMCの2nmの月産能力は2026年末の9万枚から2027年半ばに11万枚へ増える見込みだ。3nmは同じ期間に18万枚超から21万枚へ拡大するという。いずれも今後の能力に関する情報であり、9月現在の生産実績を示す数字ではない。
TSMC自身は、報道にある増産率を正式には認めていない。同紙は、TSMCが9月13日に市場の噂へのコメントを控え、生産能力に関する説明は会社の発表に従うよう回答したと伝えている。したがって、月産の具体値は供給網から伝わる計画として読むのが妥当だ。
一方、9月11日付の経済日報が紹介した市場関係者の分析では、CoWoSの月産能力は2026年末の13万枚から2028年末に26万枚へ増えると予測されている。拡大の中心になるのは台湾のAP7と米アリゾナの拠点という。
2nm・3nmの増産見通しは2026年末から2027年半ばまでの約半年、CoWoSの倍増見通しは2026年末から2028年末までの2年間を対象とする。 報道上の始点と終点を、工程ごとに並べると次のようになる。
| 対象 | 2026年末の月産能力見通し | 到達時期と月産能力見通し | 情報の位置付け |
|---|---|---|---|
| 2nmの前工程 | 9万枚 | 2027年半ばに11万枚 | 9月14日報道の供給網情報 |
| 3nmの前工程 | 18万枚超 | 2027年半ばに21万枚 | 9月14日報道の供給網情報 |
| CoWoS | 13万枚 | 2028年末に26万枚 | 9月11日報道の市場関係者の予測 |
出典は上記の経済日報2本。CoWoSの原文にある「kwpm」は千枚/月として換算した。3nmには同じ記事内で「18万枚」「21万枚超」という記述もあり、表の値は厳密な端点ではなく報道上の概数である。「16%超」は同紙が示した増加率として扱い、丸められた月産値から細かな率を計算し直すことは避けたい。
表から分かるのは、前工程で比較的近い時期の積み増しが見込まれ、CoWoSではより長い期間の増設が想定されていることだ。将来の2026年末を起点とするため、現在からの伸びをそのまま表しているわけでもない。増加率の大小だけで、どの工程の供給が先に潤沢になるかまでは判断できない。
3nmも増やす、設備の転用と新工場
TSMCは台湾、米アリゾナ、日本で3nm工場を追加し、台湾では5nmの設備を3nmの生産に転用していると経済日報は伝える。新工場を建てる投資と、既存設備を別の世代に振り向ける対応が並行する姿だ。ただし、今回の月産見通しから、3地域の工場がすべて2027年半ばまでに稼働すると読み替えることはできない。
2nmが立ち上がっても、3nmの増産は続く。同紙は、最先端の世代ではなくなった3nmにも強い市場需要が残ると説明している。顧客の製品が一斉に新しい製造技術へ移るのではなく、複数の世代の需要に設備を配分する必要があることを示す報道といえる。
この違いは、AI半導体の供給を追う際にも効いてくる。2nmの能力が増えたからといって、その分が3nm製品を求める顧客の供給枠に直結するわけではない。工場全体の規模とともに、顧客が必要とする製造世代の能力を確かめる必要がある。
2028年のCoWoS大型化と完成品の供給
TSMCが4月に公表した技術シンポジウムの発表には、CoWoSの製品そのものを大型化する計画がある。同社は5.5倍レチクルのCoWoSを生産中と説明し、2028年には14倍レチクルの製品を投入する予定を示した。大型の演算ダイを約10個、広帯域メモリであるHBMのスタックを20個、ひとつのパッケージに統合できるという。
レチクルは、半導体製造の露光で回路パターンを転写する際の原版だ。ここでの「14倍」は面積の規模を表す呼び方で、生産能力が14倍になるという意味ではない。CoWoSは演算チップとメモリなどを高密度につなぐ技術であり、TSMCの計画は、1パッケージに収める演算とメモリの量を増やす方向を示している。
つまり、工場が処理できるウェハー枚数と、そこから供給できる完成品の個数は、別々に考える必要がある。製品の大きさや構成が変われば、同じ月産枚数でも完成品への換算条件が変わる。9月のCoWoS能力倍増予測を、そのままAI向けGPUの出荷倍増と結び付ける根拠はない。
もっとも、4月の大型化計画が示すのは、新たな製品の選択肢だ。2028年にすべてのCoWoS製品が14倍レチクルへ移るという説明ではない。大型化が増設効果をどれほど相殺するかを数値で測るには、製品ごとの構成比や実際の良品数の情報が必要になる。公式発表が確かめるのは製品の大型化という方向であり、月産26万枚という予測とは確度を分けて受け止めるべきだ。
経済日報の9月11日付報道は、需要の急増を受けて顧客がTSMC以外の供給網も検証していると伝えた。増設が進む間にも、必要なパッケージング能力を複数の供給先で確保しようとする動きがある。各拠点の設備が実際に稼働し、必要な製造世代とパッケージで良品を安定供給できるようになれば、月産能力の積み増しは顧客が使えるAI半導体の供給増へつながる。



