米国PC市場が、これまでとは大きく様変わりしている事が調査によって明らかになった。Omdiaが2026年6月30日に公表した調査によると、2026年第1四半期の米国PC出荷台数はタブレットを除いて1,580万台となり、前年同期比で7.0%減少した。四半期の前年割れとしては2023年第3四半期以来の大きさで、同社は2026年通年の米国PC出荷も前年比14.4%減になると見込む。
落ち込みの主因は、需要が急に消えたことではない。2025年にはWindows 10のサポート終了を前に、企業や一部消費者がWindows 11対応機へ更新する動きが出た。関税リスクを見込んだ在庫の前倒しもあり、比較対象となる2025年第1四半期は強かった。その反動が2026年に出たところへ、PC用メモリとストレージの価格上昇が重なった。
Omdiaは、DRAMとNANDの供給がAIサーバー用途へ振り向けられる中で、エントリー機の採算が削られていると説明している。PCメーカーは高い部材を使って安いPCを作るか、価格を上げるか、構成を落とすかを迫られる。500ドル未満のPC出荷は第1四半期に前年同期比18.7%減った。数字が示すのは、低価格PCが販売不振に陥ったというより、その価格帯を維持するための部品配分と利益率が細っているということだ。
14.4%減予測が示すのは一時的な在庫調整ではない
Omdiaの見通しが厳しいのは、第1四半期の減少を単発の反動で片付けていない点にある。同社は供給逼迫が続くとして、2026年通年の米国PC出荷を前年比14.4%減と予測した。消費者向けは第1四半期に9.5%減り、企業向けは5.0%減にとどまった。企業向けが相対的に持ちこたえたのは、Windows 11更新の残りと、さらなる値上がりを見越した在庫購入が支えたためだ。
この構図では、需要の強い企業向けや高価格帯ほど部品を確保しやすい。平均販売価格は第1四半期に前年同期比4%上昇し、Omdiaは第2四半期に12%、2026年後半には12%超の伸びを見込む。AI対応PCの比率も全出荷の44%に達しており、大企業が高価なAI対応機を採用する動きが平均価格を押し上げている。
ただし、平均価格の上昇はPCメーカーにとって必ずしも健全な高付加価値化を意味しない。部材費が上がったため価格が上がる場合、買い手が得る性能や容量が同じ割合で増えるとは限らない。教育、自治体、低所得世帯向けのPCでは、価格上昇そのものが調達延期の理由になる。
500ドル未満PCを苦しめる部材費の比率
低価格帯が苦しい理由は、DRAMやSSDの値上がりが本体価格に占める割合で見ると分かりやすい。Gartnerは2026年末までにDRAMとSSDを合わせた価格が2025年比で130%上昇し、PC価格を17%、スマートフォン価格を13%押し上げると予測している。同社は、PCの部品表に占めるメモリ費用が2025年の16%から23%へ上がるとも見る。
高価格帯のPCなら、メーカーは値上げ、上位構成への誘導、販促費の削減で一部を吸収できる。500ドル未満のノートPCでは余地が小さい。数十ドルの部材費上昇でも利益が消えやすく、メモリ容量やSSD容量を削れば製品価値が落ちる。Gartnerが500ドル未満のエントリーPC市場は2028年までに消滅すると予測するのは、この採算構造が続くと見ているためだ。
Omdiaの米国データも同じ方向を指す。教育分野の出荷は第1四半期に6.2%減と、直近3四半期の二桁減からは改善した。同社は、教育機関がエントリー機を多く使うため、価格上昇の影響が今後も残るとみる。教育向け平均販売価格は2026年に横ばいとされるが、これは安定というより、急な値上がりを前に更新を先送りする動きが出るためだ。
Windows 10更新需要の後に残る古いPC
今回の落ち込みは、Windows 10のサポート終了ともつながっている。MicrosoftはWindows 10の通常サポートを2025年10月14日に終了し、技術支援、機能更新、通常のセキュリティ更新を提供しなくなった。条件を満たすPCはWindows 11へ無料でアップグレードできるが、要件を満たさない機器は、2027年10月12日まで保護を延ばせるConsumer Extended Security Updatesに入るか、Windows 11対応PCへ置き換える必要がある。
この期限は2025年のPC更新を押し上げた。一方で、2026年は価格上昇が更新判断を難しくしている。Gartnerは、メモリ高騰によってPCの利用期間が2026年末までに企業で15%、消費者で20%延びると予測する。買い替えを延ばせば短期の支出は抑えられるが、古い機器の管理、セキュリティ、修理部品の確保は難しくなる。
企業にとっても問題は単純ではない。Windows 11対応機への更新はセキュリティや管理の観点で進めたいが、AI対応PCや大容量メモリ構成は価格が高い。低価格機は部材配分の優先順位が下がりやすい。結果として、必要な端末更新を先送りする部門と、高価な端末を先に押さえる部門の差が広がる。
調達力の差がメーカーの順位にも出始めた
メーカー別の数字を見ると、部品を確保できる規模と販売先の構成が差を生んでいる。Omdiaによると、2026年第1四半期の米国PC市場ではDellが25.0%のシェアで首位となり、出荷は前年同期比1.1%増だった。Lenovoも1.2%増で20.0%のシェアを得た。一方、HPは21.6%減と主要メーカーで最も大きく落ち込み、Appleは1.6%減ながら全体よりは小幅な減少にとどまった。
小規模メーカーはさらに厳しい。Omdiaは、小規模ベンダーの出荷が13.1%減ったとしており、部品調達力の差が圧力になっているとみる。DRAMやNANDがAIサーバー用途へ優先的に配分される環境では、大口契約、在庫、価格交渉力を持つ企業ほど影響を受けにくい。低価格帯への依存が大きい売り手ほど、部材費を価格へ転嫁しても需要を失いやすく、吸収すれば利益率を削られる。
米国PC市場の7%減は、PC需要が終わったという話ではない。PCがまだ必要だからこそ、安く作って広く配るモデルの弱さが表に出た。Windows 10後の更新需要、AI対応PCの増加、AIサーバーによるDRAM/NANDの吸収が同時に進む中で、2026年後半は出荷台数よりも、どの価格帯のPCが市場に残るのかが問われる。