2025年10月9日、中国商務部は公告第62号を発出した。レアアースの採掘、製錬分離、金属精錬、磁材製造、リサイクルに関連するすべての技術の輸出を許可制にするというものだ。対象は技術そのものにとどまらず、生産ラインの組み立て、デバッグ、保守、修理、アップグレードのノウハウまで含む。さらに中国公民や法人が、許可なく海外のレアアース関連活動に「実質的な助け」を提供することも禁じた。

この規制は2002年に始まった技術輸出管理の延長線上にあるが、2025年版は適用範囲が桁違いに広い。海外で製造された製品に中国由来のレアアース金属が0.1%以上含まれていれば中国の輸出許可が必要になるという、域外適用条項まで設けられた。米国が半導体で使う「外国直接生産品ルール(FDPR)」を、レアアース版として模倣した構造だ。

その中国が、わずか10か月後にイランとの学術協力プログラムに「レアアース元素の探査と加工」を組み込んだ。自国技術の海外流出を厳しく締め上げながら、特定の相手には扉を開く。この非対称性こそが、今回の動きを読み解く鍵になる。

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3万元のワークショップが持つ地政学的重量

NSFCが8月10日に公表した2026年度の共同ワークショップ募集要項によると、イラン国立科学財団(INSF)との間で5分野が採択された。レアアースの探査・加工のほか、疾病検出用ナノ材料、汚染モニタリング、耐震建築、環境配慮型製造が並ぶ。助成額は1件あたり3万元(約70,000円)。中国側が会議費、宿泊費、国内交通費を負担し、イラン側がイラン人参加者の国際旅費と中国人研究者の訪イラン時の宿泊費を出す。募集期間は2026年8月10日から9月24日まで、研究実施期間は2027年1月から12月で、執行期間は1週間。予定採択件数は7件程度だ。

数字だけ見れば、国家間の資源戦略としては拍子抜けする規模である。だが、この枠組みが「レアアース加工技術」を公式の協力対象として名指しした事実は、3万元という助成額を遥かに超える地政学的な重みを持つ。NSFCとINSFは2017年に北京で覚書(MOU)を締結して以来、数学、生物学、医学、再生可能エネルギー、材料科学などの分野で共同研究を続けてきた。ワークショッププログラム自体は2024年に始まったが、レアアースが対象になるのは今回が初めてだ。

韓国メディアのSeoul Economic Dailyは、このタイミングが9月に予定される米中首脳会談の直前であることを指摘し、米国を刺激する意図があるとの分析を伝えた。

イランの地質が秘めるポテンシャルと、産業化までの距離

イラン中部には、レアアース含有が期待される地質構造が広がっている。オランダのHague Research Instituteが2026年2月に発表した分析によれば、中部イランの約7,000平方キロメートルの範囲でレアアース異常が確認された。対象はリン酸塩鉱床(Esfordi鉱床)と鉄・アパタイト鉱床(Chadormalu鉱床)で、モナズ石やアパタイト結晶内にランタン、セリウム、ネオジムなどの軽希土類元素が高濃度で含まれている。

イラン政府も独自に動いている。2025年4月、産業鉱山貿易省のMohammad Atabak大臣がテヘラン近郊のAbbas Abad工業団地で同国初のモナズ石生産プラントを稼働させた。Yazd州の2鉱山では約1億2,500万トンの埋蔵量が確認され、1日あたり60トンの土壌を処理している。ただし、これはパイロット規模の施設であり、商業的な産業規模には達していない。

探査範囲はさらに拡大しつつある。イラン国営メディアPress TVによれば、現在の探査は中部イランの2万4,000平方キロメートルに集中しており、北東部や北西部でもオーガイト、ジルコン、アパタイト、黄鉄鉱を含む岩石が確認されている。

指標 イランの現状 中国(比較基準)
レアアース鉱山生産量 商業生産なし(パイロット段階) 年間約27万トン(2025年、USGS推計、世界全体の約69%
精製・分離能力 パイロットプラント1基(2025年4月稼働) 世界の精製産出量の91%(IEA、2024年)
永久磁石生産シェア ゼロ 焼結NdFeB磁石の94%(IEA、2024年)
確認異常帯の面積 約7,000平方キロメートル(中部イラン) 鉱区は全国に分散(内モンゴル、江西、四川など)

この表が示すのは、イランが地質学的には有望でも、産業チェーンの構築には膨大な時間と投資が必要だという現実だ。鉱石からレアアース元素を分離する工程は、化学的に極めて複雑である。17種の元素が化学的に酷似しているため、一つずつ高純度で取り分けるには、溶媒抽出を数百段繰り返す必要がある。この工程を産業規模で安定運用できる国は、現時点では中国以外に存在しない。

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「技術封鎖」と「技術共有」が同時に成立する論理

中国のレアアース戦略を理解するには、1980年代まで遡る必要がある。1985年に輸出税還付制度を導入してレアアース製品を安価に世界へ供給し、競合する米国Mountain Pass鉱山などを価格競争で駆逐した。2002年から2005年にかけて中国国内のレアアース価格は1キログラムあたり約5.50ドルという歴史的低水準まで下落し、海外鉱山のほとんどが閉山に追い込まれた。

その後、中国は段階的に輸出規制を強化する。2005年に輸出税還付を廃止、2006年に輸出割当制を導入、2010年には割当を大幅に削減して国際的な価格急騰を引き起こした。2014年にWTOでこの輸出割当が裁定違反とされた後も、生産割当や環境規制、業界再編を通じて支配力を維持してきた。

2025年の公告第62号は、この40年にわたる戦略の最新版である。ただし、今回のイランとの協力はこの論理と矛盾しない。中国が禁じているのは、自国と競争しうる主体への技術移転だ。イランは現時点で商業生産能力を持たず、中国の市場シェアを脅かす存在ではない。むしろ、中国の技術体系に依存する新たなパートナーを育てることは、供給網における中国のハブとしての地位を強化する方向に働く。

RUSI(英国王立防衛安全保障研究所)が2026年6月に発表した報告書は、この構造を明確に記述している。たとえ他国がレアアース原鉱の調達先を多様化しても、分離、金属精錬、磁石製造の各段階で中国への依存は続く。これらの工程への投資は、採掘よりもはるかに資本集約的で技術的に困難だからだ。

米国が30億ドルを投じる「脱中国」の現在地

この構図に対して、米国は巨額の投資で応じようとしている。2026年8月7日、Trump大統領は国務省で鉱業業界との円卓会議を開き、総額30億ドル(約4,400億円)以上の連邦投資を発表した。内訳には、国防省の戦略資本室(OSC)によるSila Nanotechnologiesへの14億ドルの条件付き融資(シリコンカーボン電池陽極の生産拡大)、Niron Magneticsへの1億5,000万ドル(レアアース不使用の永久磁石開発)、Sunrise Energy Metalsへの4億ドル(スカンジウムのフルバリューチェーン構築)などが含まれる。

White HouseのFact Sheetは、これらの投資が「敵対的外国への依存を減らし、国家安全保障を強化する」ことを目的とすると明記している。CNBCの報道によれば、イラン紛争で枯渇した兵器在庫の補充も動機の一つだ。

しかし、米国の取り組みが直面する根本的な問題は、資金ではなく時間と人材だ。レアアース分離の産業ノウハウは、中国が40年かけて蓄積したものであり、数億ドルの投資で即座に代替できるものではない。中国が2002年から技術輸出を制限し続けてきたのは、まさにこの時間的優位を固定するためだった。

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学術交流から産業移転へ、越えなければならない壁

NSFCとINSFの共同ワークショップは、1週間の学術交流として設計されている。参加資格も厳格で、中国側の申請者は3年以上の国家自然科学基金プロジェクトを主催または参加している必要がある。募集要項に「合作交流应密切围绕所依托在研基金项目的研究内容」(協力交流は依托する進行中の基金プロジェクトの研究内容に密接に関連すべき)とあるように、基礎研究の枠組みの中に位置づけられている。

イラン側にも独自の動きがある。Tehran大学の研究者は、中国の手法とは独立した分離技術を開発したと報じられている。分離工程では副産物としてトリウム(低レベル放射性廃棄物)が発生するため、この処理技術の確立が産業化のボトルネックの一つになっている。

Hague Research Instituteの分析が指摘するように、イランのレアアース資源は「有望だが未確認」の段階にある。7,000平方キロメートルの異常帯が商業的に採掘可能な鉱床に転化するかどうかは、今後の詳細探査次第だ。仮に鉱床が確認されても、分離・精製プラントの建設には通常5〜10年を要する。

中国がイランに提供するものが学術的な知見交換に留まるのか、それとも将来的に産業レベルの技術協力に発展するのか。3万元のワークショップから始まった関係が、世界のレアアース供給網の地図を塗り替えるまでには、まだ多くの未検証の工程が残されている。