Microsoftは2026年、Windows 11でプリンターを新たに追加する際、OS標準の印刷ドライバーを優先する方向へ移行を進めている。従来のメーカー製ドライバーを使い続ける方法は残る一方、エプソンやブラザーは、Windows更新後にインストールが途中で止まったり、専用アプリや一部機能が使えなくなったりする場合の対処方法を案内している。

この変化を、古いプリンターが使えなくなる問題だけとして捉えると実態を見誤る。同じプリンターでも、Windowsがどのドライバーを選ぶか、機種固有の機能をどのソフトウェアで提供するかによって、導入手順や普段の使い方が変わるためだ。

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2027年までの移行日程と、今後も残る導入方法

Microsoftが段階的に終了するのは、従来のv3・v4プリンタードライバーをWindows Update経由で新規配布・更新する仕組みだ。対象はWindows 11以降とWindows Server 2025以降で、2023年9月に発表された計画は2025年5月に日程が調整された。公式の移行計画で示されている主な節目は次のとおりだ。

日付 Windows Updateとドライバー選択の変更
2026年1月15日 新規プリンタードライバーの掲載を制限。既存ドライバーの更新は個別審査で承認
2026年7月1日 OS標準のIPPクラスドライバーを優先するよう、ドライバーの選択順位を変更
2027年7月1日 セキュリティ修正を除き、サードパーティ製ドライバーの更新を原則として受け付けなくなる

この日程を、「既存のプリンターが使えなくなる期限」と受け取るのは誤りだ。Microsoftは、移行計画に伴って従来ドライバーを利用する印刷機能を無効化する予定はないと明記している。

2027年7月1日を過ぎても、Windows Updateですでに配布されている既存ドライバーや、メーカーが自社サイトなどで提供するインストールパッケージを利用できる。

ドライバーへの署名も全面的に終了するわけではない。Windows 11向けの新規ドライバーは個別審査となるが、Mopria認証を取得できないプリンターや、ネイティブARM64ドライバーなどには署名を認める条件が設けられている。また、従来の印刷基盤に関するセキュリティ問題については、OS自体がMicrosoftのサポート期間内である限り修正を継続する方針だ。

つまり、Windows Updateから自動でドライバーを入手できるかどうかと、メーカーから入手したドライバーを使って印刷できるかどうかは分けて考える必要がある。

Windows Updateでの配布範囲が縮小しても、メーカー自身がドライバーを配布する方法は残る。ただし、その方法が残るからといって、すべての機種やメーカー独自機能が将来も利用できることまで保証されるわけではない。

「配布」「自動選択」「利用制限」は別の変更

Microsoftは2026年6月、標準規格を利用する印刷プラットフォームの名称を「Windows Ready Print」に変更すると発表した。

中心となるIPPは、プリンターとの通信方法を標準化するプロトコルだ。対応機種ではWindows標準のドライバーを利用し、メーカーごとの専用ドライバーへの依存を減らす方向へ移行する。

6月の公式告知では、7月から対応プリンターを新たに追加する際、Windows Ready Printを既定で優先すると説明している。

同時に、標準ドライバーを優先するか、従来と同じドライバー選択に戻すかを設定できるようにした。この設定が影響するのは新たに追加するプリンターだけで、すでに導入済みの機器には影響しない。

これとは別に、「Windows保護印刷モード(WPP)」という機能がある。

WPPはWindows Ready Printに対応する印刷方式だけを使うモードで、有効にすると、サードパーティ製ドライバーを使って登録されているプリンターは削除される。Microsoftの説明によると、Mopria認証済みのプリンターであっても、メーカー製ドライバーを利用して登録されていれば削除対象になる。

ただし、Windows Ready Printに対応する機種であれば、標準の印刷方式を使って再び追加できる。

Windows Updateでのドライバー配布制限、新規追加時のドライバー選択、Windows保護印刷モードによる利用制限は、それぞれ別の仕組みだ。

変更・設定 主に影響する場面 既存の印刷環境への影響
従来ドライバーの配布・更新制限 Windows Updateからドライバーを入手・更新するとき 移行計画だけを理由に既存の印刷機能を無効化する予定はない
Windows Ready Printを優先する設定 プリンターを新しく追加するとき この設定を変えるだけでは既存のプリンターに影響しない
Windows保護印刷モードの有効化 PCで利用できる印刷方式そのものを制限するとき サードパーティ製ドライバーを使うプリンターが削除され、対応機種は標準方式で再登録する

この表は、2026年10月6日時点のMicrosoftによるドライバー配布計画、新規導入時の仕様変更、Windows保護印刷モードの説明を、それぞれ影響する場面ごとに整理したものだ。

「標準ドライバーを優先する設定」と、「メーカー製ドライバーを使えなくする設定」は、既存環境への影響が異なる。

また、Windows保護印刷モードを有効にすると、Windows Ready Printを優先する設定も無効化できなくなる。メーカー製ドライバーへ戻したい場合は、両方の設定状態を確認する必要がある。

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国内メーカーが案内する、USB接続や専用機能の問題

エプソンは、Windows 11 24H2以降で2026年6月以降の更新を適用した環境について、Windows Ready Printが有効になる場合があると案内している。

9月18日更新のFAQでは、USB接続時にプリンターを認識できずインストールが止まる例や、メーカー製ドライバーパッケージの導入に失敗する例を挙げている。

LAN接続では、インストール自体は正常に完了したように見えても、エプソン製ドライバーではなくMicrosoft製ドライバーが選択される場合があるという。

同社が案内する対処方法は、設定画面でWindows Ready Printを優先する項目をオフにすることだ。

それでも改善しない場合は、プリンターのプロパティで現在使われているドライバー名を確認し、「Microsoft IPP Class Driver」が選択されていればプリンターを一度削除する。その後、PCを再起動してメーカー製ドライバーを改めて導入する。

つまり、プリンターを接続して印刷キューが作成されたからといって、意図したメーカー製ドライバーで正しく導入できたとは限らない。

ブラザーも、6月23日以降の更新から標準ドライバーが段階的に優先されると案内している。

Microsoftの計画表では節目が7月1日となっている一方、メーカー側は6月からの更新による影響を説明している。全PCが特定の日に一斉に切り替わったと考えるよりも、Windowsのバージョンや適用済みの更新、設定状況を個別に確認する方が実態に合う。

影響は、普通紙に印刷できるかどうかだけではない。

ブラザーのUSB接続向けFAQでは、Brother iPrint&ScanやPCファクス、ファームウェア更新ツールなどが使えなくなったり、一部機能が正常に動作しなくなったりする場合の対処方法を案内している。

手順としては、関連ソフトウェアを一度アンインストールし、標準ドライバーを優先する設定をオフにしたうえで、最新のフルパッケージを改めて導入する。

ラベルプリンターでは、用紙サイズを選べないこと自体が業務停止につながる場合もある。

ブラザーはQL・RJ・TDシリーズについて、Windows 11でUSB接続した際にラベルサイズを選択できず、印刷時にエラーが発生する場合の対処方法も案内している。

この手順ではドライバーの再導入に加え、インストーラーから指示されるまでUSBケーブルを接続しないことも求められる。

接続するタイミングによっても似た問題が発生する可能性があるため、すべてをWindows Ready Printの優先化だけが原因と決め付けることはできない。

これらは各メーカーが特定の条件下で発生する可能性を案内している事例であり、すべての機種で問題が起きる割合を示したものではない。

それでも、標準ドライバーへの移行を確認するときに、「テストページを印刷できたか」だけでは不十分であることは分かる。

メーカー専用アプリからの操作や、機種固有の用紙設定なども実際に試して初めて、従来どおりの作業を続けられるか判断できる。

なぜMicrosoftは印刷の仕組みそのものを変えるのか

Windowsの印刷スプーラーは、印刷ジョブの管理やデータ変換を担うサービスで、高い権限を持つSYSTEMとして動作する。

Microsoftの技術解説では、この印刷基盤が必要に応じてサードパーティ製のコードを読み込む仕組みを、セキュリティを高めるうえでの課題として挙げている。

プリンタードライバーに脆弱性が見つかっても、メーカーがすでに事業を終了していたり、製品サポートを終えていたりすれば、修正版を提供してもらうことが難しい場合がある。

Windows保護印刷モードでは、サードパーティ製プリンタードライバーを読み込まず、文書の描画など一部の処理をユーザー権限で実行する。

外部コードへの依存を減らし、問題が起きてもSYSTEM権限へ直接つながりにくくする設計だ。メーカー専用ドライバーへの依存を減らす狙いには、導入を簡単にするだけでなく、セキュリティを高める目的もある。

ただし、印刷方式を標準化したからといって、メーカーごとの独自機能まで同じになるわけではない。

Microsoftは「印刷支援アプリ(PSA)」を利用し、プリンター固有の機能や設定を追加できると説明している。従来は専用ドライバーがまとめて担当していた役割を、Windowsの共通印刷機能とメーカー製アプリに分ける考え方だ。

拡張手段が用意されていることと、自分が使っているプリンター向けに必要な機能が実際に提供されていることは、別に確認する必要がある。

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プリンターの年式より、普段使う機能が残るかを確認する

Mopria認証を取得しているプリンターでも、印刷とスキャンをまとめて「対応」と判断することはできない。

Microsoftは、Windows保護印刷モードで印刷できる機器であっても、スキャナー機能が利用できない場合があると説明し、スキャン機能については別途対応状況を確認するよう求めている。

移行前には、機種名だけでなく、現在利用しているドライバー名や接続方法を確認し、普段の作業を実際に試す必要がある。

例えばラベルプリンターなら、必要なラベルサイズを選択できるか。複合機なら、スキャンやPCファクスを従来のアプリから利用できるかを確認する。

メーカー独自の機能を必要とする環境では、各機種のFAQに従って導入方法を選ぶ必要がある。

Windows保護印刷モードが組織のポリシーによって有効化されている場合、一般ユーザーが自分で設定を変更できないこともあり、その場合は管理者による対応が必要になる。

仮想プリンターも確認対象だ。

Windows保護印刷モードでは、非対応のソフトウェアプリンターも削除されるため、OneNoteへの出力など、紙に印刷しない作業にも影響する可能性がある。

Microsoftは対応するOneNote向けの保護された仮想プリンターを用意しているが、従来使っていた仮想プリンターをそのまま引き継げるとは限らない。

また、Windows保護印刷モードを無効に戻しても、モード有効化時に削除された非対応プリンターが自動的に復元されるわけではなく、必要に応じて手動で再導入する必要がある。

MicrosoftのWindows保護印刷モードに関するFAQでは、将来的にこのモードを既定で有効にする方針が示されている。

ただし、具体的な実施日は記載されていない。2027年7月1日に予定されているサードパーティ製ドライバーの更新制限を、そのままWindows保護印刷モードの強制適用日と解釈する根拠はない。

移行できるかどうかを判断する基準は、普段必要としている機能を、Windows標準の印刷方式とメーカーの支援アプリの組み合わせで再現できるかどうかだ。

そこまで確認できれば、機種ごとの専用ドライバーを管理する負担を減らしながら、必要な印刷・スキャン業務を続けられる環境へ移行できる。