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Xbox次世代機、心臓部は再びAMD製に。AIと携帯機で描く新戦略

Y Kobayashi

2025年6月23日

Microsftが次世代Xboxの心臓部を担う半導体開発で、AMDとの複数年にわたる戦略的提携を発表した。後方互換性は維持しつつ、家庭用機と携帯機の両輪で展開することが明らかになり、Xbox責任者Sarah Bond氏の言葉の端々からは、コンソール、PC、携帯機、そしてクラウドの垣根を溶かし、「どこでもXbox」体験を完成させようとするMicrosftの壮大な野望が透けて見える。

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Xboxの未来を託されたAMD、後方互換性も確約

Xbox事業の責任者であるSarah Bond氏がビデオメッセージを通じて明らかにした今回の発表は、業界が固唾をのんで見守っていた次世代機の方向性を明確に示すものだ。提携の骨子は、AMDとの共同設計によるカスタムシリコンを、次世代の家庭用Xboxコンソールと、新たに投入が示唆された携帯型デバイスの両方に採用するというもの。

Xbox + AMD: Powering the Next Generation of Xbox

長年のXboxユーザーにとって最大の朗報は、後方互換性の維持が明言されたことだろう。ボンド氏は「既存のXboxゲームライブラリとの互換性を維持しながら」と強調しており、これまで築き上げてきたデジタル資産が無駄にならないことを約束した。これは、アーキテクチャの根幹が、現行機と同じくAMDのx86系CPUとGPUであり続けることを強く示唆している。

「我々はAMDと共に、ゲーミングシリコンの最先端を前進させ、次世代のグラフィックス革新を実現します」 – Sarah Bond氏(Xboxプレジデント)

この発表は、ASUSとの提携で生まれたWindowsベースの携帯PC「ROG Ally」シリーズの発表後、一部で囁かれていた「次世代Xboxは純粋なPCとなり、従来のコンソールゲームとの互換性が失われるのではないか」という懸念を払拭する決定的な一撃となった。

技術の核心:「AI」が変えるゲーム体験と囁かれる「Zen 6 / RDNA 5」

Bond氏の言葉で特に注目すべきは、「AIの力によって強化された」という一節だ。これは、単なる描画性能の向上に留まらない、次世代機の体験の質を左右する重要な要素となるだろう。

具体的には、NVIDIAのDLSSやAMDのFSRに代表されるAIを活用した超解像技術が、より高度な形で統合される可能性が高い。これにより、演算負荷を抑えつつ高フレームレートと高解像度を両立させ、これまで以上に没入感のあるビジュアルが実現される。さらに、NPCの挙動やプロシージャル生成など、ゲームプレイそのものにAIが深く関わってくることも想像に難くない。

では、その心臓部となる具体的なチップ構成はどうなるのか。Microsoftは詳細を明らかにしていないが、発売時期はこれまでにも2026年のホリデーシーズンが囁かれており、AMDの未発表アーキテクチャである「Zen 6」CPU「RDNA 5」GPUが採用される可能性が報じられている。これはあくまで現時点での推測に過ぎないが、コンソールの開発サイクルを考えれば、十分に現実的なシナリオと言える。

興味深いのは、Bond氏がかつて口にした「コンソール史上最大の技術的飛躍」という表現を今回は用いなかった点だ。これは期待値を現実的なレベルに調整する意図があったのかもしれないが、いずれにせよ、そのパフォーマンスが業界の新たな基準を打ち立てることは間違いないだろう。

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戦略の真髄:「壁の破壊」と「自社製携帯機」への意志

今回の発表の真の価値は、技術仕様の先にあるマイクロソフトの壮大な戦略を読み解くことにある。

垣根を越えるプラットフォーム戦略

Bond氏は「単一のストアに縛られたり、一つのデバイスに紐付けられたりしないXbox体験」というビジョンを語った。これは、コンソール業界の長年の常識であった「ウォールドガーデン(壁に囲まれた庭)」モデルからの脱却を示唆するものだ。TechSpotなどが報じているように、将来的に次世代XboxがSteamやEpic Games StoreといったサードパーティのPCゲームストアをサポートする可能性も浮上してくる。Windowsとの連携を深めることで、コンソールとPCの垣根を限りなく低くしようという狙いが透けて見える。

自社製携帯機への揺るぎない意志

「あなたのリビングルーム、そしてあなたの手の中に」というBond氏の言葉は、携帯機市場への強いコミットメントを物語る。ASUSとの提携はあくまで布石であり、Microsoftが自社設計による最適化された携帯型Xboxの開発を断念していないことの証左だろう。Steam Deckが切り拓いた携帯ゲーミングPC市場に、Microsoftが「本命」を投入する日はそう遠くないのかもしれない。

この動きは、Sonyや任天堂といった競合を強く意識したものだ。Sonyもまた次世代機(通称PS6)でAMDとの協業を続けると見られ、任天堂はNVIDIAとの強力なタッグで市場を席巻している。2026年頃を境に、三つ巴の次世代コンソール戦争の火蓋が切られることは、もはや確実な情勢だ。

今回の発表は、単なるハードウェアの更新予告ではない。それは、Microsoftのゲーム事業が、特定の「箱」を売るビジネスから、あらゆる場所、あらゆるデバイスで楽しめる巨大な「エコシステム」を提供するビジネスへと、その重心を完全に移したことの宣言である。この野心的な挑戦が、プレイヤーにどのような新しい自由と体験をもたらすのか、楽しみなところだ。


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