PS5向けゲームをXbox Oneで動作させたと、KytyPS5のXbox移植を手がけるDevran Uenal氏(@maccosmo)が報告した。公開された写真には、『Quake II』のプレイ画面と『MARVEL Cosmic Invasion』のタイトル画面が写っている。これまでXbox Series Xで進められてきた実験が、さらに古いXbox Oneにも広がったことになる。ただし、一般公開されているXbox向けビルドはSeries X|S専用で、Xbox Oneは明確に対象外とされている。今回の実演に使用されたビルドや設定は明らかになっておらず、開発者が動作を確認したことと、一般ユーザーが公開版を使って再現できることは区別する必要がある。

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Xbox Oneでゲームの動作を報告、公開版はSeries X|Sのみ対応

Devran Uenal氏はXへの投稿で、「一部のPlayStation 5ゲームはXbox Oneでも動く」と述べ、実行中の画面を撮影した写真を2枚公開した。そのうち『Quake II』の写真には、銃を構えたゲーム内の場面が写っている。少なくとも作者が公開した実演では、ゲームを起動してタイトル画面を表示する段階を超え、実際のプレイ画面を描画するところまで進んでいる。

ただし、2枚の写真が示す動作状況には違いがある。『Quake II』の画面左上には20fpsと表示されている一方、『MARVEL Cosmic Invasion』の写真には60fpsと表示されている。しかし、後者に写っているのはボタン入力を促すタイトル画面であり、実際の戦闘シーンが60fpsで動作することを示すものではない。また、どちらも静止画に表示された瞬間的なフレームレートであり、継続的な動作性能やゲームを最後までプレイできるかどうかは確認できない。

さらに注意したいのが、現在公開されているKytyPS5のXbox向けビルドの対応機種だ。Uenal氏のGitHubリリースページでは、Xbox版は開発者モードで動作するXbox Series X|S向けの実験的なビルドと説明されており、Xbox Oneは対象外と明記されている。10月11日に公開された初期ビルドには、CPU命令セットのAVX2を必要とするため、Xbox Oneでは動作しないという説明もあった。10月19日に公開された後続のビルドでも、Series X|S向けという対応機種の制限は維持されている。

今回公開された実演と、GitHubで配布されているビルドの違いを整理すると、次のようになる。

公開されたもの 対象機種・動作場面 確認できる内容と制限
『Quake II』の実演写真 作者がXbox Oneで動作したと説明。ゲーム内のプレイ画面 20fpsの瞬間的な表示。継続的な性能測定やゲーム全体の動作確認は示されていない
『MARVEL Cosmic Invasion』の実演写真 作者がXbox Oneで動作したと説明。タイトル画面 60fpsの瞬間的な表示。実際のゲームプレイ中の性能は不明
GitHubで公開されたXbox向けビルド 開発者モードのXbox Series X S | Xbox Oneは対象外。初期ビルドではAVX2が必要と説明されている

この表は、2026年10月19日時点の作者の投稿と添付写真、公開リリースの情報を整理したものであり、同じビルドを使って各機種の性能を比較したものではない。特に重要なのは、Xbox Oneでの実演に使用されたビルドや設定が明らかになっていないことだ。公開版にはXbox Oneで動作しないという制限がある一方、作者は実際にXbox Oneでゲームを動かしたと報告している。この違いを説明するには、実演に使用したビルドと公開版の変更点を確認する必要がある。

したがって、現時点で「KytyPS5の公開版がXbox Oneに対応した」と結論づけることはできない。一方で、公開版がXbox Oneを対象外としているからといって、作者による実験的な動作が原理的に不可能だという意味でもない。今回の報告が示しているのは、少なくとも作者の開発環境では、従来の対応機種より古いXbox OneでPS5向けゲームを動かす試みが進んでいるという点だ。

PS5の描画処理をDirect3D 12へ変換、メモリ使用量にも工夫

今回の実験に使われたKytyPS5は、PS5向けソフトウェアを異なる環境で実行するためのオープンソースプロジェクトだ。オリジナルのKytyPS5は、自らを互換レイヤーと位置づけており、主にWindowsとLinuxを対象としながら、macOSにも実験的に対応している。PS5向けソフトウェアが利用する処理を実行先の環境に合わせて置き換える仕組みで、Xboxへの移植では、さらにXboxのアプリ実行環境やグラフィックス機能に対応させる必要がある。

Uenal氏が公開したSeries X向けの実装資料には、UWP(Universal Windows Platform)アプリへの移植と、Direct3D 12を使った描画処理の実装が記録されている。UWPは、Windows系の環境でアプリを実行するための仕組みだ。移植版では、オリジナルのVulkan向け実装と共通化できる処理を維持しながら、GPUで実行するプログラムであるシェーダーを、SPIR-VからDirect3D 12向けのDXILへ変換している。この変換には、オープンソースのグラフィックスソフトウェア群であるMesaのツールが使われている。

つまり、KytyPS5をXboxへ移植するには、アプリの画面や操作方法を変更するだけでは不十分だ。GPUに送る命令や、画像データをメモリ上に配置して読み書きする方法まで、Xboxで利用できる機能に合わせなければならない。実装資料にも、Xbox側のグラフィックス機能の制限に対応するための処理変更が数多く記録されている。PCで正常に描画できたゲームでも、Xbox向けに変換した描画処理で同じ結果が得られるとは限らず、実機での検証が必要になる。

メモリ管理にも、限られた資源でゲームを動かすための工夫が加えられている。作者は、PS5向けゲームが想定する大きなメモリ領域を最初から一括確保するのではなく、実際にアクセスされた領域だけを64KiB単位で確保する方式を導入した。さらに、しばらく使用されないメモリ領域を一時ファイルへ退避し、再び必要になった際に読み戻す仕組みも実装している。これにより、ゲーム側が想定するメモリの使い方と、Xbox上のアプリに許されたメモリ容量の違いに対応しようとしている。

ただし、メモリ使用量を削減できても、CPUの命令セットに関する制約が解消されるわけではない。Series X向けの実装資料では、公開UWPビルドをAVX2などに対応したCPU向けに構築し、Xbox Series Xが搭載するZen 2アーキテクチャに合わせて最適化したと説明されている。Xbox OneのCPUはAVX2に対応していないため、同じ実行ファイルをそのまま動かすことはできない。描画品質や解像度を下げてもCPU命令セットの違いは解消されないため、Xbox Oneでの実演を再現するには、この制約にどう対処したのかを確認する必要がある。

なお、ここまでの技術的な説明は、あくまでSeries X向けの実装資料に基づいている。今回のXbox Oneでの実演に使用されたビルドにも、同じ描画処理やメモリ管理機能が組み込まれていたかどうかは明らかになっていない。作者による追加の技術情報が公開されれば、Xbox Oneでの動作を可能にした変更点を、より具体的に理解できるだろう。

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Xbox Oneでの再現には、ビルドと動作条件の確認が必要

Xbox上でKytyPS5を動かす際には、ハードウェアの性能だけでなく、アプリに割り当てられるシステム資源も重要になる。Microsoftが公開しているUWP向けのシステム資源配分資料では、Xboxで実行するアプリに対して、種類や実行方法に応じた資源の制限が設けられている。旧版の資料によると、前面で動作する一般的なアプリのメモリ上限は1GB、Xbox Live Creators Programのゲームとして実行する場合は5GBだ。また、Visual Studioのデバッガーから起動する場合には、これらのメモリ制限が適用されないという例外も記載されている。

公開されているKytyPS5のXbox版も、インストール時にアプリの種類を「Game」に設定するよう案内している。また、作者のSeries X向け実装資料には、アプリのメモリ上限が5120MBのままだったという観測結果も記録されている。ただし、これは今回のXbox One実演で実測されたメモリ使用量ではなく、実演時に適用されていた資源制限を示すものでもない。ゲーム機本体のメモリ容量やCPU性能だけでなく、どのアプリ区分で、どのような実行環境を使用したかによって、利用できる資源が変わる点に注意が必要だ。

さらに、Series X向けの移植でも描画処理には未解決の問題が残っている。実装資料では、三角形の頂点に関する情報を利用する一部の処理で画面に黒い斑点が現れることや、特定の画像書き込み処理によってゲームが停止することが報告されている。また、変更一覧には、コードのビルドには成功していても、実際の動作確認を行っていない項目も含まれている。機能が実装されたことと、実機で正常に動作することは別であり、個々のゲームについて検証を重ねる必要がある。

今回、『Quake II』の実際のゲーム画面が公開されたことは、Xbox OneでPS5向けソフトウェアをどこまで動かせるのかを探るうえで、具体的な進展といえる。ただし、現時点で確認できるのは作者による動作報告と静止画であり、一般ユーザーが再現できる環境が整ったわけではない。次に必要なのは、実演に使用されたビルドや設定を明らかにし、同じゲームの同じ場面でフレームレートや描画の不具合、動作停止の有無などを継続的に検証することだ。使用したビルドと実行手順が公開され、第三者による再現結果が得られれば、Xbox Oneで実用的に動作するゲームの範囲や、ハードウェアの制約による限界も、より明確になるだろう。