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Amazon Alexa+、目玉のAI機能は非搭載ながらも限定公開開始

Y Kobayashi

2025年4月2日

AmazonはAI(人工知能)で強化された新しい音声アシスタント「Alexa+」の早期アクセス提供を開始した。しかし、発表時に注目された主要機能の一部が実装されておらず、利用は一部のユーザーと対応デバイスに限定されている。

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限定的ながら始まったAlexa+の早期アクセス

Amazonは2025年2月の発表イベントで、AIを活用してより高度な対話やプロアクティブな支援を可能にする「Alexa+」を披露し、大きな期待を集めていた。同社広報担当のKristy Schmidt氏がThe Vergeに認めたように、このAlexa+が3月末、ついに早期アクセス(Early Access)プログラムとして米国の一部ユーザー向けに提供開始されたとのことだ。

ただし、この「早期アクセス」は文字通り限定的なものだ。Amazonの早期アクセスページによると、現時点でAlexa+を利用できるのは、スマートディスプレイ搭載の「Echo Show 8」「Echo Show 10」「Echo Show 15」「Echo Show 21」の所有者の中から選ばれた「少数」の顧客に限られる。将来的には他のEchoデバイスへの展開も予定されているとのことだが、具体的な時期は明示されていない。

利用料金は月額19.99ドルと設定されている。しかし、Amazon Prime会員であれば追加料金なしでAlexa+の機能を利用できる点は注目に値するだろう。

期待された主要機能の多くが未実装

今回の早期アクセス版では、2月の発表イベントでデモンストレーションされた、あるいはマーケティング資料で強調されたAlexa+の目玉機能のいくつかが利用できない状態であることが判明している。The Washington Postが報じたAmazonの内部文書によると、これらの機能は「公開のためのAmazonの基準をまだ満たしていない」ために遅延しているという。

具体的に、現時点で利用できない、あるいは提供が遅れている主な機能は以下の通りである。

  • 会話内容に基づいたGrubhubでのテイクアウト注文: ユーザーの好みや会話の流れから文脈を理解し、シームレスに食事を注文する機能。
  • 家族の顔認識と家事のリマインダー: カメラ付きEcho Showデバイスで家族構成員を視覚的に認識し、個別に家事などをリマインドする機能。
  • ギフトアイデアのブレインストーミングとAmazonでの注文: プレゼント選びの相談に乗り、そのままAmazonで注文まで完了できる機能。
  • 子供向けの物語生成(Stories With Alexa): 子供を楽しませるための物語をAIが生成する機能(Kids+の一部)。
  • 買い物リストの作成と店舗からの注文: 日常の買い物リストを作成し、連携する店舗へ注文する機能。
  • ウェブブラウザでのAlexa+利用: PCなどのウェブブラウザを通じてAlexa+と対話する機能。

これらの機能は、Alexa+が単なる音声コマンド応答システムから、より能動的でパーソナルな「エージェント」へと進化することを示すものとして期待されていた。Alexa+は開発が当初からAIインフラの課題に直面していたことも報じられており、今回の機能不足はその影響が続いている可能性がある。

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現状で利用可能な機能と課題

機能が限定的とはいえ、早期アクセス版のAlexa+で全く何もできないわけではない。Amazonの早期アクセスページや各メディアの報道によると、現時点で利用可能な機能には以下のようなものがある。

  • Uberの配車手配
  • カメラを使った物体の識別
  • メールの下書き作成
  • 特定商品の検索
  • 料理のレシピやアドバイスの提供
  • アップロードされた文書の要約: 取扱説明書、法的文書、メールなどのファイルをアップロードし、その内容を要約させる機能。

しかし、この文書要約機能には重大な問題点が指摘されている。Amazonの早期アクセスページ自身が認めているように、現時点ではアップロードしたファイルをユーザー自身で削除する機能が実装されていないのだ。削除を希望する場合、ユーザーはAmazonのカスタマーサービスに連絡する必要がある。

さらに、The Washington Postが報じた内部メールによると、カスタマーサービス経由で削除を依頼しても、ファイル自体は削除されるものの、「関連する全てのデータが消去されるわけではない」可能性があるという。スタッフはユーザーに対し、「ファイルが永久に削除される」や「家の誰もそのファイルの情報を見つけられなくなる」といった断言を避けるよう指示されているとのことだ。Amazonはこの問題の修正に取り組んでおり、「数週間以内」に提供される見込みだと報じられている。

今後の展望とユーザーへの影響

Amazonの広報担当者はThe Vergeに対し、「まず多数の機能をリリースし、今後も新しい機能を段階的に提供し続ける」と述べている。つまり、今回提供されなかった機能も、今後数ヶ月かけて順次追加されていく可能性が高い。

Alexa+は、ChatGPTの台頭やApple Intelligenceの発表など、競争が激化するAIアシスタント市場におけるAmazonの回答として位置づけられている。しかし、今回のローンチは、大規模言語モデル(LLM)を活用した高度なAI機能の実装がいかに困難であるかを改めて示すものとなった。

ユーザーにとっては、月額19.99ドル(Prime会員は無料)という価格に見合う価値が現状で得られるかは慎重に判断する必要があるだろう。特にPrime会員でない場合は、機能が充実し、安定性が向上するまで、有料での利用開始を待つのが賢明かもしれない。Amazonが約束した機能が全て実装され、Alexa+が真価を発揮するには、まだしばらく時間が必要となりそうだ。


Sources

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