AMDの次世代GPUアーキテクチャ「RDNA 5」は、2027年後半の発表になる可能性がある。ハードウェア情報を発信するKepler_L2が、AnandTech Forumsで「早くてもComputex 2027だが、年内のそれより後になる可能性が高い」との見通しを示した。AMDが発売の延期を発表したわけではないが、予測どおりなら、現行のRDNA 4を使う期間は長くなりそうだ。その間にも次世代向けのコンパイラ対応と現行RadeonのAI描画機能は進んでおり、RDNA 5を待つ意味は、発売時期とチップの性能だけでは判断しにくくなっている。

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発売延期より先に、発表時期の予測を読む

発端となったのは、利用者が「今後3〜5か月以内にRDNA 5カードを公開する可能性はあるか」と尋ねた投稿だ。Kepler_L2はこれを否定し、別の利用者の「では2027年6月か」という問いに、Computex 2027が最も早い機会になるとの見方を返した。本人の回答は、年内のより遅い時期を有力としている。

質問の対象はカードの「公開」だった。店頭で購入できる日を尋ねたものではなく、回答も発売日を指定していない。2027年後半という見通しを、そのまま「後半に全モデルが発売される」という予定表へ置き換えることはできない。上位モデルから順に出るのか、限られた製品だけを先に投入するのかも、この回答からは分からない。

また、延期と呼ぶには、変更前の予定が必要になる。今回示されたのはリーカーの見通しであり、AMDが公表済みの発売日を変更したという情報ではない。既存の予測より遅い印象を与えるとしても、開発上の問題が起きたのか、製品投入の判断が変わったのかまで説明する材料はない。

一方、次世代の準備そのものは公開情報から追える。予定表の噂とは別に、AMD向けのソフトウェアがどの設計へ対応し始めているかを見ると、待つ先にある変化が少し具体的になる。

公開コードに現れたRDNA 5の設計

コンパイラ基盤LLVMのAMDGPU公式資料には、すでに「GFX13(RDNA 5)」が載っている。対象の識別子は「gfx1310」で、単体GPUを意味するdGPUに分類されている。ただし、製品名の欄は未公表を示すTBAのままだ。開発用の名称と対象は確認できるが、Radeonの製品名や投入時期まで明らかになったわけではない。

LLVMは、プログラムをGPUが実行する命令へ変換する役割を担う。公開コードに新しい対象が加わるのは、そのGPUへ命令を生成し、ソフトウェアを動かすための準備が進んでいるということだ。コードがあるだけで実チップの完成や量産状況を判断することはできない。それでも、RDNA 5という名称を噂だけの呼び方として扱う段階は過ぎている。

演算の使い方にも手掛かりがある。LLVMの命令処理コードには、条件の合う2命令を組み合わせるVOPDのGFX13向け分岐がある。さらに命令の定義は、従来のGFX12向け形式とは別に、GFX13向けのVOPD3形式を明示している。同じ形式はGFX1250という別の対象にも定義されており、RDNA 5だけの専用機能ではない。

VOPD3の制約を説明するコードによると、この形式では、演算結果を置くレジスタの番号が偶数か奇数かという条件が緩和され、独立した第3の入力も扱える。レジスタは、演算に使う値を一時的に置く場所だ。命令形式の定義と、その形式に適用される制約を合わせることで、GFX13向けのコードがどんな処理を扱おうとしているかを確認できる。

これは演算器の数を増やす話とは異なる。同時に処理できる命令の組み合わせが狭ければ、演算器に余力があっても使い切れない。組み合わせの自由度を広げる変更には、同じ演算資源を使える場面を増やす意味がある。ただし、実際にどれだけ効くかは、ゲームの命令列とコンパイラが作る組み合わせ次第となる。

VOPD3の「3」を、3命令の同時発行と読むのも誤りだ。コードはXとYの2成分を扱っており、第3入力への対応と命令の本数は別である。こうした開発上の変更を「ゲームが倍速になる」といった性能予測へ直結させることはできない。次世代GPUを見る際は、演算ユニットの数や理論演算性能に加え、どの処理で演算器を有効に使えるかも問う必要がある。

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RDNA 4は、待っている間にも変わる

AMDは2026年のComputexでも現行世代を拡充した。5月31日の公式発表では、RDNA 4を使うRadeon RX 9070 GREの世界発売を6月2日とした。次の世代を準備する間にも、現行製品を広げる動きは続いている。

描画機能の改良は、さらに別の時間軸で進む。AMDのFSR SDK 2.3では、機械学習によるアップスケーリングはRX 7000/9000が対象で、機械学習によるフレーム生成・Ray Regeneration・Radiance CachingはRX 9000以降が対象となる。

FSR SDK 2.3の機能 役割 AMDが示す対応GPU
Upscaling 4.1.1 低解像度の画像から高解像度の画像を復元する RX 7000/9000シリーズの単体GPU
Frame Generation 4.0.1 前後の画像から中間フレームを生成する RX 9000シリーズ以降
Ray Regeneration 1.2.0 レイトレーシングの結果に残るノイズを減らす RX 9000シリーズ以降
Radiance Caching 0.9.0 学習した照明の情報を使って光線追跡の計算を減らす RX 9000シリーズ以降。技術プレビュー

表は2026年10月13日に確認したGPUOpenのFSR SDK 2.3の機能説明と「Requirements」を、機械学習方式の機能ごとにそろえたものだ。速度や画質を比べた表ではない。利用にはゲーム側の導入が必要で、Shader Model 6.6などのソフトウェア要件もある。旧世代で使える従来方式のアップスケーリングやフレーム生成とは区別している。

RX 7000のユーザーなら、機械学習による画像復元のために必ず新しいカードへ買い替える必要はない。一方、それが使えることと、機械学習によるフレーム生成や光線追跡のノイズ除去まで使えることは別だ。FSRという一つの名前で対応を判断すると、この差を見落とす。

ゲームへの届き方にも条件がある。AMDは、FSR 3.1以降を導入したDirectX 12ゲームについて、将来のAdrenalinドライバからRX 7000/9000向けの機械学習アップスケーリングへ更新できると説明している。機械学習によるフレーム生成は、FSR 3.1.4を導入したDirectX 12ゲームとRX 9000が対象となる。対応GPUを持っていても、すべてのゲームが直ちに新機能へ切り替わるわけではない。

つまり、RDNA 5まで待つ間の画質や機能は固定されない。現行GPUに届く改良を確認したうえで、チップを買い替えないと得られない性能や機能が何かを見極める余地がある。

次世代GPUを測る、光とAIの処理時間

AMDのRadiance Cachingの開発者資料は、光を描く計算と機械学習が、すでに一つの描画処理の中で協調することを示している。各フレームで少数の光の経路を実際に追い、その結果でニューラルネットワークを徐々に学習させる。同時に、蓄えた照明の情報を使って、不要な光線追跡を省く仕組みだ。

光が面に当たり、さらに別の面へ反射する過程を細かく追うほど、計算は重くなる。Radiance Cachingは、その一部を学習した予測で置き換え、追跡する平均的な深さを減らす。場面の照明が変われば学習も続ける。出来上がった画像のノイズを後から消すRay Regenerationとは、負担を減らす場所が違う。

もっとも、Radiance Cachingはまだ技術プレビューであり、幅広いゲームで使える完成機能として扱うべきではない。これらの資料も、RDNA 5が搭載する専用回路や、現行GPUに対する性能差を示したものではない。示しているのは、光線を追う能力と、学習・推論によって追う量を減らす能力が、描画の中で補い合う方向である。

この方向へ進むほど、次世代GPUの価値を演算ユニット数だけで測るのは難しくなる。光線追跡が速くても、画像復元や学習に時間がかかれば、その負担は画面を描き終えるまでの時間に残る。逆に、一部の計算を減らせても、画質が崩れるなら同じ条件の性能向上とは言いにくい。比較には、同じ場面と画質設定で、各機能を使ったときのフレーム時間を確かめる必要がある。

RDNA 5の正式発表で問われるのは、発売日とともに、こうした処理を実際のゲームでどこまで速く、安定して動かせるかだ。現行カードでは足りない処理を、目に見える画質改善と短い待ち時間で実現できるなら、次世代を待つ理由は具体的になる。