AMDが10月からRadeonシリーズの推奨販売価格を引き上げたと、中国のPCパーツ流通情報サイト「博板堂」が報じた。Radeon RX 9070は700元の値上げとなる一方、上位モデルのRX 9070 XTは据え置かれるという。10月8日の投稿では、中国を含む世界市場で価格が改定されたとされているが、AMDが発行した通知書の原本は確認されていない。

今回報じられた中国向け価格表で特に注目したいのは、RX 9060 XT 16GBと、上位モデルのRX 9070 GREの価格差がわずか100元に縮まったことだ。しかし、RX 9070 GREのビデオメモリは12GBで、RX 9060 XTの16GB版より4GB少ない。GDDR6の供給が縮小するなか、GPUの演算性能とメモリ容量のどちらを優先すべきか、購入者にとって判断が難しい状況になっている。

AD

RX 9070は700元値上げ、RX 9070 XTは据え置きとの情報

博板堂の投稿者「低手一号」氏によると、AMDは2026年10月1日からRadeonシリーズの価格を改定し、第4四半期の推奨販売価格(SEP)を引き上げたという。

SEPは「Suggested E-tail Price」の略で、AMDの日本語資料では「推奨販売価格」と表記されている。これはメーカーが示す販売価格の目安であり、グラフィックボードメーカーの部品調達価格や、販売店が設定する実売価格とは異なる。

10月8日に報告された中国向けの新価格と、第3四半期からの変更幅は次のとおりだ。

モデル 第3四半期の価格(推算) 第4四半期の報告価格 値上げ額 上昇率
RX 9070 XT 6,999元 6,999元 据え置き 0%
RX 9070 5,599元 6,299元 700元 約12.5%
RX 9070 GRE 4,599元 4,999元 400元 約8.7%
RX 9060 XT 16GB 4,299元 4,899元 600元 約14.0%
RX 9060 XT 8GB 3,090元 3,390元 300元 約9.7%
RX 7650 GRE 2,599元 2,999元 400元 約15.4%
RX 6500 XT 1,599元 1,599元 据え置き 0%

出典:博板堂の10月8日の投稿を収めた公開転載画像。第3四半期の価格は、報告された新価格から値上げ額を差し引いて算出した。上昇率は推算した旧価格を基準に計算し、小数第1位に丸めている。いずれも中国人民元での価格であり、AMDが正式に公表した価格表や日本国内の販売価格を示すものではない。

値上げ額が最も大きいのはRX 9070の700元だが、上昇率ではRX 7650 GREの約15.4%が最大となる。

RX 9060 XTについても、16GB版が約14.0%上昇するのに対し、8GB版は約9.7%の上昇にとどまっている。メモリ容量の大きいモデルほど、値上げ幅が大きくなる傾向が見られる。

一方、シリーズ上位のRX 9070 XTと旧世代のRX 6500 XTは据え置きとされており、すべてのモデルが一律に値上げされたわけではない。

GDDR6の生産縮小とサーバー向けメモリの優先が価格を押し上げる

博板堂は今回の値上げの背景として、容量2GBのビデオメモリチップ1個当たりの価格が再び約10%上昇したことに加え、半導体の製造委託費が高騰していることを挙げている。

Radeonシリーズが採用するGDDR6については、メモリ業界全体の供給構造にも変化が起きている。

調査会社TrendForceは9月30日の市場分析で、メモリメーカーがGDDR6の生産規模を縮小し、徐々に同市場から撤退しつつあると指摘した。

さらに、新しいGDDR7についても、先端製造プロセスの生産能力がサーバー向けDRAMなどに優先的に割り当てられているため、供給が制約されているという。

こうした状況から、TrendForceはグラフィックス向けDRAMの価格が今後も上昇すると予測している。

通常、旧世代のメモリ規格は、新しい規格の普及に伴って安くなると考えられがちだ。しかし、必ずしもそうなるとは限らない。

GDDR6を使うGPUの需要が残っていても、メモリメーカーが生産量を減らせば、供給不足によって価格が上昇する可能性がある。

実際、TrendForceは部品コストを抑えるため、GDDR6の採用を改めて検討しているPCメーカーもあると説明している。低コストなメモリを使いたいという需要がある一方、供給側では生産が縮小するという状況だ。

ただし、TrendForceの調査は、AMDの個別の調達契約を確認したものではない。

また、ビデオメモリチップの価格が約10%上がったという情報だけでは、グラフィックボード全体の製造コストが同じ割合で増加したとはいえない。

グラフィックボードの価格には、GPU本体の製造費用に加え、基板や冷却装置、電源回路、各社の利益なども影響する。今回の報告では、こうした費用の内訳は明らかにされていない。

RX 9060 XTでは、16GB版の値上げ額が600元、8GB版が300元と、ちょうど2倍の差がある。しかし、これをメモリ容量だけによるものと断定することはできない。

同じ16GBのGDDR6を搭載するRX 9070とRX 9070 XTでも、前者は700元の値上げ、後者は据え置きとされているからだ。

つまり、メモリ価格の上昇は値上げの背景として考えられるものの、モデルごとの価格改定幅をすべて説明できるわけではない。AMDが各製品でどのようにコスト上昇を吸収し、販売価格を設定したのかは明らかになっていない。

AD

わずか100元差のRX 9060 XTとRX 9070 GRE、選ぶならどちらか

今回報じられた価格改定で、購入者にとって特に悩ましいのが、RX 9060 XT 16GBとRX 9070 GREの関係だ。

中国向けの第4四半期の推奨販売価格では、RX 9060 XT 16GBが4,899元、RX 9070 GREが4,999元となる。

その差はわずか100元だ。

第3四半期の価格から推算すると、両モデルの価格差は300元だったため、今回の改定で3分の1に縮まったことになる。

一見すると、少し予算を追加して上位のRX 9070 GREを選んだ方が得に思える。しかし、両モデルには無視できない仕様の違いがある。

RX 9060 XTのAMD公式仕様とRX 9070 GREの公式仕様を比較すると、次のようになる。

比較項目 RX 9060 XT 16GB RX 9070 GRE
中国の第4四半期SEP(報告値) 4,899元 4,999元
ビデオメモリ容量 16GB 12GB
コンピュートユニット(CU) 32基 48基
メモリバス幅 128bit 192bit
標準的なボード消費電力(TBP) 160W以上 220W

価格は博板堂の10月8日の投稿、製品仕様はAMDの公式資料に基づく。実際のグラフィックボードでは、メーカーやモデルによって電力設定や冷却設計が異なる場合がある。また、TBPはゲーム中に常に消費する電力を示した実測値ではない。

RX 9070 GREは、RX 9060 XTよりコンピュートユニットが16基多く、メモリバス幅も広い。

そのため、純粋なゲーム性能を重視する場合、価格差が100元まで縮まればRX 9070 GREを選ぶ魅力は高まる。

一方、RX 9070 GREのビデオメモリ容量は12GBで、RX 9060 XT 16GBより4GB少ない。

高解像度のテクスチャを多用するゲームや、ビデオメモリの使用量が大きい作業では、この4GBの差が重要になる可能性がある。

また、コンピュートユニット数が多いからといって、ゲームのフレームレートがその比率どおりに高くなるわけでもない。

実際の性能差は、ゲームタイトルや解像度、画質設定、GPUの動作クロックなどによって変わるため、個別のベンチマーク結果を確認する必要がある。

特に、16GBのメモリ容量を目的としてRX 9060 XTを検討していた購入者にとっては、RX 9070 GREが単純な上位互換になるわけではない。

RX 9060 XTの8GB版と16GB版の価格差も拡大

RX 9060 XTの同一シリーズ内でも、メモリ容量による価格差が広がっている。

今回の報告価格に基づくと、8GB版と16GB版の価格差は、前期の1,209元から1,509元へ拡大する。

両モデルはコンピュートユニット数が同じ32基であり、大きな違いはビデオメモリ容量にある。

そのため、16GB版に追加予算を投じる価値があるかどうかは、利用するゲームや作業が8GBを超えるメモリ容量を必要とするかによって変わる。

16GBを搭載しているだけですべてのゲームが高速になるわけではなく、8GBだからといって、すべてのゲームでメモリ不足が発生するわけでもない。

一方、将来的に高解像度のテクスチャを利用したい場合や、ビデオメモリを多く使うアプリケーションを利用する場合には、16GB版を選ぶメリットがある。

追加の1,509元に見合う価値があるかどうかは、自分の用途で必要なメモリ容量を基準に判断する必要がある。

RX 9070とRX 9070 XTの価格差も半減

RX 9070とRX 9070 XTの価格差にも変化がある。

報告された新価格では、RX 9070が6,299元、RX 9070 XTが6,999元となり、価格差は700元に縮まる。

従来の1,400元から半減するため、価格の安さを理由にRX 9070を選ぶメリットは以前より小さくなる。

ただし、上位モデルのRX 9070 XTは消費電力も大きい。

AMDの公式仕様では、RX 9070のTBPが220Wなのに対し、RX 9070 XTは304Wとなっており、84Wの差がある。

価格差が小さくなっても、必要な電源容量や冷却性能まで同じになるわけではない。

購入時には、ゲーム性能だけでなく、使用するPCの電源ユニットやケースの冷却能力も確認する必要がある。

日本で重要なのは中国価格の円換算ではなく、実売価格の変化

博板堂の投稿では、今回の価格改定が中国以外の市場にも適用されると説明されている。

しかし、AMDの公式通知書は確認されておらず、日本国内でいつ、どのモデルが、いくら値上がりするのかは確定していない。

例えば、中国向けのRX 9070が700元値上げされたという情報を日本円に換算しても、その金額だけ日本の販売価格が上昇するとは限らない。

国内のグラフィックボード価格には、為替相場や流通在庫、販売店の価格設定、ボードメーカーごとの製品構成などが影響するためだ。

また、同じGPUを搭載した製品でも、冷却装置や電源回路、動作クロックなどによって販売価格は異なる。

そのため、異なるGPUを比較する際には、上位モデルの高価なオーバークロック仕様と、下位モデルの廉価版を単純に比べるのではなく、同じ時点で購入できる製品の実売価格を確認したい。

電源容量やケースに収まるサイズ、冷却性能といった条件も含めて比較すれば、GPU自体の性能差と、各メーカーの製品設計による価格差を区別しやすくなる。

今回の中国向け価格表から見えてくるのは、上位モデルに予算を追加すれば、必ずしもすべての性能や仕様が向上するわけではないということだ。

特にRX 9060 XT 16GBとRX 9070 GREは、価格差がわずか100元になった一方、上位のGREモデルの方がメモリ容量は少ない。

日本でも両モデルの実売価格が近づくのであれば、単純に上位の型番を選ぶのではなく、まず必要なビデオメモリ容量を確認し、そのうえでゲーム性能や消費電力を比較するのが合理的だ。

今回の値上げ情報で重要なのは、GPUの価格が上昇する可能性だけでなく、モデル間の価格差が変わることで、これまでの選び方が通用しなくなる点にある。

メモリ価格の高騰と供給制約が続くなか、今後は各モデルの実売価格と仕様のバランスが、購入判断をより大きく左右することになりそうだ。