AMDのRadeonでNVIDIAのDLSSを動かす非公式ツール「DLSS-NR on AMD」が、超解像やレイ再構成まで扱う統合ツールへ広がった。開発者のDaniel Blanco氏が日本時間10月18日に公開したAlpha 0.8.0は、先行公開した0.7.0の内容もまとめ、最大4倍のマルチフレーム生成を追加した。照明や材質の表現を加えるDLSS 5のニューラルレンダリングから始まったプロジェクトが、主要なDLSS機能を選んで使う段階に進んだわけだ。ただし、Radeon上でモデルを動かせることと、手元のゲームで必要なデータを渡せることには、それぞれ条件がある。
4機能がそろっても、動作条件はそれぞれ違う
Alpha 0.8.0では、各機能をゲーム内のオーバーレイから選ぶ「Supermod」と、導入を管理する「NeuralHub」を組み合わせる。従来のニューラルレンダリングに超解像とレイ再構成が加わり、さらにフレーム生成も選べるようになった。作者の更新説明とREADMEに基づく対応範囲は、次のように分かれる。
| 機能 | 画像に対する役割 | Alpha 0.8.0で示された内容・条件 |
|---|---|---|
| DLSS超解像(SR) | 低い解像度で描いた画像から、高解像度の画像を再構成する | DLSS 4.5のモデルMとLに対応。動的解像度を追加し、モデルLは任意の拡大率に対応 |
| DLSSレイ再構成(RR) | レイトレーシングのノイズを含む画像を再構成する | モデルFを移植。ゲームがDLSS-RR向けの入力を渡す必要がある |
| DLSSフレーム生成(FG) | 描画フレームの間に追加の画像を生成する | 最大4倍MFG。DLSS-FG向けの入力と、ゲームにNVIDIA GPUだと認識させる設定が必要 |
| DLSSニューラルレンダリング(NR) | 描画済みの画像に照明や材質の表現を加える | 1フレームにつき最大3回の処理を選べ、各回のスタイルと強度を設定できる |
主要4機能が対象でも、RRにはDLSS-RR入力、FGにはDLSS-FG入力とGPU情報の偽装が必要。RX 6000はNRのみ試験対応。
GPUについて作者が主要4機能の対象に挙げるのは、RDNA 4のRadeon RX 9000シリーズと、RDNA 3のRX 7000シリーズだ。RDNA 2のRX 6000シリーズもプロジェクト全体の対象に入るが、現時点ではニューラルレンダリングの試験対応となる。ほかの機能の追加は、次の大きな更新に向けた予定である。
つまり、RX 6000も名前が載っているからといって、同じ組み合わせを使えるわけではない。RX 7000とRX 9000についても、対応範囲は作者の公表によるもので、全機種・全ゲームで同じ画質や速度を保証するものではない。
DLSSの設定と、実際に動くモデル
OptiScalerは、ゲームが呼び出すアップスケーラーと、実際に画像を処理するアップスケーラーを仲介する。例えばゲームの設定でDLSSを選び、その入力をFSRやXeSSへ渡す使い方ができる。設定画面に「DLSS」と表示されても、裏側で動くモデルまでDLSSとは限らない。
今回のプロジェクトについて、Blanco氏はAMD向けにDLSSのニューラルネットワーク実行系を一から再実装したと説明している。GPU上で計算するHIPカーネルに加え、メモリー配置やゲームとの接続も作り直したという。DLSSの入力を別の超解像技術へ回すだけの方式とは、作者が目指す処理そのものが異なる。
ただし、この実装説明は作者によるものだ。内部コードを第三者が監査し、NVIDIAの実装と同一の出力や性能を確かめたという発表ではない。必要なDLSSのDLLも利用者自身が正規に入手して用意する方式で、NVIDIAやAMDが承認・支援する公式機能ではない。
一方、GPU情報の偽装は、モデルの計算とは別の役割を担う。ゲームにNVIDIA GPUとして認識させ、DLSS向けの処理経路や入力を使えるようにするためだ。Alpha 0.7.0の変更点には、GPU情報の偽装を使ったSRとRRの入力対応が記され、現在の導入説明でもFGには偽装と専用入力が必要とされている。
ゲームから情報を受け取る部分と、受け取った情報を処理する部分を分けると、FSRやXeSSとの混在も理解しやすい。作者はXeSSの入力にニューラルレンダリングとFSR超解像を組み合わせる例を挙げる。ただし、この自由度が、RRやFGに必要な専用入力まで不要にするわけではない。
レイ再構成には、なぜゲームの内部データが要るのか
NVIDIAのレイ再構成の開発者ガイドを見ると、RRが完成画像の輪郭をくっきりさせるフィルターとは違うことが分かる。入力には、ノイズを含むレイトレーシング画像が必要だ。加えて、表面の色や反射の性質、面が向く方向、表面の粗さといった情報も渡す。
さらに、奥行きと物体の動きを示すデータを使う。鏡面反射についても、反射像の動き、または光線が当たった位置までの距離などが必要になる。画面のどこが動いたかだけでなく、何が映り、どんな表面から来た光なのかを手掛かりに画像を再構成するためである。
この仕組みは、今回の移植の利用範囲にも直接関わる。作者がRRを「DLSS-RRのレイトレーシング入力を提供するゲーム」で動くと説明するのは、モデルが受け取るべき情報をそろえる必要があるからだ。FSR向けのRR入力への対応は、公開時点では今後の追加とされている。
したがって、FSRやXeSSのあるDirectX 12ゲームでツールを使えても、それだけでDLSSのレイ再構成まで有効になるとは判断できない。超解像を動かすための入力と、レイトレーシング画像を再構成するための入力では、要求される情報が違う。モデルの移植によって越えられるハードウェアの制約とは別に、ゲームとの接続が実用範囲を決める。
最大4倍MFGと、90〜100FPSの読み方
NVIDIAのフレーム生成ガイドでは、4倍MFGを、ゲームが描いた1枚に生成画像3枚を加えて表示する仕組みとして説明している。表示される画像は増えるが、ゲームの処理や操作への応答まで同じ倍率で速くなることを意味しない。フレーム生成前のFPSと、生成を含む表示FPSは分けて見る必要がある。
ニューラルレンダリングの「最大3回の処理」は、これとは別だ。NVIDIAのDLSS 5の説明では、NRは1枚を受け取り1枚を出力し、その照明や材質の見え方を豊かにする機能とされる。今回追加された複数回の処理も、同じフレームへ異なるスタイルや強度を適用するものであり、MFGの倍率を表していない。
Blanco氏は現在のREADMEで、RX 9070 XTの1080p、フルHTモデルを使った性能として90〜100FPSを掲げる。ただし、この記述にはゲーム名や測定場面がなく、内部解像度やフレーム生成の有無も示されていない。主要4機能を同時に使った成績とも、RRだけの負荷を測った値とも読めない。RTX 5070 Ti並みの速度は、引き続き作者が目標に置くものである。
更新説明の改善率にも対象がある。0.7.0に含まれる変更では、重いゲームプレイ負荷のDirectX 12環境でNRが6〜16%向上したとし、0.8.0ではRDNA 3のNRについて25%の改善を掲げた。比較版や測定条件の詳細は記されておらず、二つを足して一つの改善率にすることはできない。DirectX 12のネイティブ動作も導入され、API間の連携に起因する停止を減らしたと説明されている。
超解像でも、モデルが動くことと、そのGPUで効率よく動くことは分かれる。NVIDIAの公式説明によれば、DLSS 4.5は第2世代Transformerを採用し、モデルMをパフォーマンスモード、Lを4Kのウルトラパフォーマンスモード向けに最適化している。両モデルはほかの品質モードでも使えるが、NVIDIA自身、古いRTX 20・30シリーズでは負荷が大きくなると注意している。これをRadeonの性能予測へそのまま当てはめることはできないものの、対応の有無だけで選択を終えられない理由は共通する。
NeuralHubで減る導入の手間と、残る要件
NeuralHubは、従来ゲームごとに複製していた約150MBの重みファイルやDLLを、一つの場所で管理する。DLLを取り込んでゲームを検出し、各ゲームへローダーを設置する流れとなり、Game Passのゲームにも対応した。超解像用は「nvngx_dlss.dll」、RR用は「nvngx_dlssd.dll」、FG用は「nvngx_dlssg.dll」を用意する。NR用の「nvngx_dlssnr.dll」は、ビルド310.8.0.0以降が案内されている。
FSR 4.1.1の超解像はツールに同梱され、ドライバーからFSRの実装を得る必要がなくなった。ただし、Radeonのドライバー自体が不要になるわけではない。READMEは引き続きAdrenalin 26.1.1以降を要件に挙げる。動作環境もWindows 11と、DLSS、FSRまたはXeSSに対応するDirectX 12ゲームであり、このプロジェクトのVulkanとLinux対応は今後の予定だ。
アルファ版としての制約も残る。新しいEpic Gamesランチャーは未対応で、ゲームを手動で追加できない場合がある。作者はアンチチートがDLLを遮断することにも注意を促している。導入が簡単になっても、対応ゲームを一律に保証するツールへ変わったわけではない。
Radeonユーザーにとって今回の価値は、超解像やレイ再構成を機能ごとに選び、同じゲームで比較する選択肢が増えたことにある。その選択を実用へ結び付けるには、静止画の細部に加え、カメラを動かした際の残像やちらつきを確かめたい。フレーム生成前の速度と表示間隔の安定性まで条件をそろえて比較できれば、手持ちのRadeonで画質と操作感を両立できる組み合わせを選びやすくなる。
