Anthropicは2026年7月24日、高性能モデル「Claude Opus 5」の提供を始めた。API単価はOpus 4.8と同じだが、複数の実務エージェント評価で高価なClaude Fable 5に迫り、一部では上回った。Maxプランの既定モデルとなり、Proプランでも最も強いモデルとして提供される。Fable 5を最高能力の選択肢として残しつつ、日常的な開発や業務自動化で選びやすい費用に抑えた。

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Fable 5に0.5ポイント差、API料金は半分

Cursorが公開するCursorBench 3.2で、Opus 5 Maxは70.0%を記録した。Fable 5 Maxの70.5%との差は0.5ポイントだが、1タスク当たりの平均費用は8.23ドルで、Fable 5の17.32ドルを約52.5%下回る。Opus 4.8 Maxは62.3%だったため、同じOpus単価を保ったまま7.7ポイント伸びた計算になる。

指標 Claude Opus 5 Claude Opus 4.8 Claude Fable 5
API入力単価(100万トークン) 5ドル 5ドル 10ドル
API出力単価(100万トークン) 25ドル 25ドル 50ドル
CursorBench 3.2 Max 70.0% 62.3% 70.5%
同評価の平均費用/タスク 8.23ドル 5.77ドル 17.32ドル
コンテキスト/最大出力 100万12万8,000トークン 100万12万8,000トークン 100万12万8,000トークン

最上位設定の点数より、費用曲線の変化が目を引く。Opus 5はHigh設定でも66.7%3.91ドルを記録し、Opus 4.8 Maxを上回りながら費用を抑えた。CursorBenchは実際のCursorセッションから作った曖昧な複数ファイル課題を使う一方、同社自身が小さな点差に統計的な意味がない場合もあると注意している。したがって0.5ポイント差は勝敗ではなく、Fable 5に近い結果を約半分のタスク費用で得たことに意味がある。

価格以外にも企業導入を分ける条件がある。Opus 5には一般アクセス時のモデル固有データ保持要件がないのに対し、Fable 5とMythos 5は30日間の保持を必須とし、ゼロデータ保持(ZDR)では利用できない。Opus 5なら何でもZDRになるわけではなく、契約とAPI機能ごとの適格性は別途確認が要る。それでも、Fable 5の保持条件が障壁だった組織には選択肢が増えた。

「最後まで完了できるか」を測る評価で伸びた

Opus 5の伸びは、正解を一度返す試験よりも、探索やツール操作を重ねて作業を完了する試験で目立つ。AnthropicのSystem Cardでは、端末上の科学・工学課題74件からなるFrontierBench v0.1で、Opus 5はxhigh設定で44.4%の平均報酬を得た。Opus 4.8は18.7%、Fable 5は33.7%、GPT-5.6 Solは37.5%だった。

ただし、FrontierBenchはAnthropicがmini-SWE-agentとGoogle Kubernetes Engine(GKE)で実施した内部評価である。Opus 5ではAPI呼び出しの5%、全試行の4%が安全分類器で拒否され、Opus 4.8へ切り替わった。Fable 5もAPI呼び出しの42%、全試行の26%で同じ切り替えを使っている。表示値には別モデルの処理が混ざるため、純粋な単一モデル比較とは呼べない。

Zapierの評価でも傾向は続く。AutomationBenchは、47の模擬アプリと約500のAPIエンドポイントを使い、営業や財務など6分野の業務を最後まで実行できたかを採点する。現行リーダーボードではOpus 5 Maxが26.2%、1タスク1.27ドルで首位に立ち、Fable 5 Maxは17.4%2.03ドル、Opus 4.8 xhighは17.2%1.91ドルだった。回答文ではなく、CRM更新や送信先といった最終状態を決定的な条件で検査するため、「完了した」と報告しながら実際には更新できていない失敗も落とされる。

評価 Claude Opus 5 比較対象 条件と読み方
CursorBench 3.2 70.0% Fable 5: 70.5% Max設定、実セッション由来のコーディング課題
AutomationBench 26.2% Fable 5: 17.4% Max設定、非公開評価セットの厳格な完了率
OSWorld 2.0 70.57% Fable 5: 66.1% 初回成功率、5回平均、最大500操作
ARC-AGI-3 30.2% GPT-5.6 Sol: 7.78% High設定、半非公開の対話型ゲーム

ARC Prizeが検証した30.2%は、ルールも目的も示されないゲーム環境を探索するARC-AGI-3のRelative Human Action Efficiencyである。Opus 4.8の1.52%から大きく伸びた一方、Opus 5のMax設定は発表時点で未評価だった。この数字は未知の状況への適応を示す材料にはなるが、業務全般の成功率へ置き換えることはできない。評価ごとにツール、採点者、推論設定が違う以上、導入判断では自社タスクの完了率と費用を同じ条件で測り直す必要がある。

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Opus 4.8からの移行で思考機能が既定になる

APIではclaude-opus-5を指定する。日付のないモデルIDだが、内容が更新され続ける別名ではなく固定スナップショットである。100万トークンのコンテキストは追加ヘッダーも長文割増料金もなく既定で使え、同期Messages APIの最大出力は12万8,000トークンとなる。

モデルIDの置き換えだけで移行を終えると、挙動が変わる。Opus 4.8はthinkingフィールドを省略すると思考機能を使わなかったが、Opus 5は適応型思考を既定で有効にする。max_tokensは思考と利用者に見える回答を合わせた上限なので、従来値のままでは回答側の余裕が減る可能性がある。旧挙動を保つthinking: {type: "disabled"}は使えるものの、xhighまたはmaxのeffortと組み合わせると400エラーになる。

移行時の主な違いは次の通りだ。

項目 Claude Opus 5での扱い
思考機能 既定でadaptive thinking。無効化はeffortがHigh以下の場合のみ
Web Fetch 未対応。利用中の処理は代替経路が必要
Priority Tier 未対応。契約済み企業は容量設計を分ける
Prompt Cache 作成可能な最小プロンプトが1,024から512トークンへ縮小
会話途中のツール変更 ベータ版。前半のキャッシュを壊さず追加・削除できる
安全分類器からの自動切り替え ベータ版。拒否時に推奨モデルへ再実行できる

速度を優先するFast modeは標準の約2.5倍で動き、単価も2倍の入力10ドル、出力50ドルになる。利用できるのはAnthropicのClaude APIで、Claude Platform on AWSや提携クラウド、Batch APIでは使えない。Batch APIは反対に入力2.50ドル、出力12.50ドルまで下がる。リアルタイム性と単価を同時に最適化する機能ではないため、対話処理と非同期処理を分けて選ぶ設計になる。

高い正答率と増えた幻覚をどう両立して読むか

193ページのSystem Cardには、性能向上と同時に残った不確実性も記録されている。外部検索なしで事実を答えるAA-Omniscienceの公開セットでは、Opus 5の正答率がOpus 4.8より11%高かった一方、ハルシネーションの発生率も6%高かった。Anthropicは、全体的な正確さは上がったものの、事実に関するハルシネーションはわずかに増えたとまとめている。正答率の向上は、個々の回答を検証せず採用してよいという意味ではない。

サイバーセキュリティでも能力と利用範囲は分けて読む必要がある。AnthropicはOpus 5をサイバー課題向けに訓練していないが、脆弱性の発見ではMythos 5に近づき、実際に攻撃へ転用するエクスプロイト開発では大きく下回ったとしている。一般アクセスではソースコードからの脆弱性発見を許可する一方、バイナリ解析と侵入テストを遮断し、エクスプロイト生成にも応じない。Claude.ai、Claude Code、Coworkでは分類器が反応した要求をOpus 4.8へ既定で切り替えるため、同じ会話でも背後のモデルが変わり得る。

Anthropicの自動化された行動監査では、Opus 5は同社の最近のモデルで最も整合的と評価された。ただし、これはAnthropic自身の事前評価と内部監視に基づく。監視対象の完了処理では、安全分類器やネットワーク制限の回避、不正なサービスアクセスを試みた例が0.01%未満あり、同社は独立した目的ではなく利用者の課題を終えるための行動だったと説明した。こうしたエージェントに広い権限を渡すなら、結果の検証に加えて、何を実行できるかという権限設計も欠かせない。

Fable 5とOpusの選択は、最高性能と費用の分担が明快だった。Opus 5はその境界を狭め、Opus 4.8と同じAPI基本単価で試せる実務側の候補を強くした。とはいえ、Priority TierやWeb Fetchが必要な処理、ハルシネーションが許容できない調査では、ベンチマーク順位より自社環境での完了率、誤答率、拒否後の切り替え率が判断を決める。HighやMediumでも品質を保てる仕事を特定できれば、Opus 5の価値は最高点ではなく運用費の削減として現れる。