世界のスマートフォン市場が急減するなか、Appleの出荷シェアは2026年第2四半期として初めて20%へ達した。Counterpoint ResearchとIDCは市場全体の落ち込みやAppleの伸び率について異なる推計を出したが、iPhoneが第2四半期として過去最大の比率を占めた点では一致する。背景にあるのは、DRAMとNANDの高騰が低価格端末ほど重くのしかかり、プレミアム製品を売る大手へ供給と需要が寄ったことだ。20%という数字はAppleの独走を意味するのか、それともメモリ危機が作った一時的なシェア移動なのか。
20%で一致した推計、大きく割れた増加率
Counterpointが7月13日に公表した暫定推計では、2026年4〜6月の世界スマートフォン出荷は前年同期比11%減り、第2四半期として2013年以来の低水準になった。Samsungが24%で首位となり、Appleは20%、Xiaomiは12%、OPPOは11%、vivoは8%だった。Appleの前年同期比は3%増で、前年の17%から3ポイント伸ばした計算になる。
同日公表のIDC調査でも、Appleのシェアは20.1%だった。ところが、台数の動きはかなり違う。IDCはAppleの出荷を前年同期の4,840万台から5,580万台へ15.3%増えたと見積もり、市場全体は2億9,740万台から2億7,750万台へ6.7%減ったとする。CounterpointのApple 3%増、市場11%減とは大きな開きがある。
| 調査会社 | 世界市場の前年同期比 | Appleの前年同期比 | Appleの出荷シェア | Samsungの出荷シェア |
|---|---|---|---|---|
| Counterpoint Research | 11%減 | 3%増 | 20% | 24% |
| IDC | 6.7%減 | 15.3%増 | 20.1% | 22.6% |
両社の違いは小数点の丸めでは収まらない。中国についても、CounterpointはAppleが前年を下回ったと説明する一方、IDCは24.4%増と見積もる。調査会社ごとに流通在庫の捕捉やブランド集計、推計を締めた時点が異なるため、公開表から差の原因を一つに絞ることはできない。
それでも、Appleが20%前後を占め、第2四半期の過去最高を更新したという結論は頑健である。ただし、これは新品端末のセルイン出荷であり、消費者への実売や世界の稼働端末シェアではない。AppleもiPhoneの販売台数を開示していない。5,580万台という数字はIDCの暫定推計であり、Appleの確定値ではない。
Appleが守った価格と供給
Appleに有利に働いたのは、iPhone 17の需要と価格の組み合わせだ。標準モデルは2025年9月の発売時に米国799ドルを維持しながら、最小ストレージを前世代の2倍となる256GBへ増やした。米国ではiPhone 13以降の下取りに200〜700ドルを付け、対象キャリアの施策ではiPhone 17 Proへの買い替えに最大1,100ドルの割引を用意した。端末価格が上がりやすい局面では、表示価格の維持と分割払い、下取りが購入時の差を広げる。
Counterpointは、Appleを第2四半期に値上げを避けた唯一の主要メーカーとみている。旧世代iPhoneの需要は弱まったものの、限られた部品を現行世代へ優先配分したとも説明した。IDCも、AppleとSamsungが早期にメモリを確保し、部材費に占めるメモリ比率が低い高価格帯を売ることで出荷を伸ばしたと分析する。
直前の公式決算も、iPhone 17の勢いを裏づける。Appleの2026年3月28日までの3カ月間におけるiPhone売上は569億9,400万ドルで、前年同期から22%増えた。全社売上は17%増の1,111億8,400万ドル、Greater Chinaの全社売上は28%増の204億9,700万ドルだった。ただし、この決算期間は1〜3月であり、今回の4〜6月出荷とは重ならない。Appleが公表した売上は需要の助走を示すが、第2四半期の調査推計を直接検証する数字ではない。
低価格Androidにメモリ高が直撃
市場の縮小は各社へ均等に広がっていない。IDCの推計ではSamsungが8.1%、Appleが15.3%伸びた一方、Xiaomiは26.3%、OPPOは17.5%、vivoは19.4%減った。上位2社の合計シェアは前年の35.8%から42.7%へ6.9ポイント上がった。台数を取りに行く低価格モデルほど、メモリ高を端末価格へ転嫁しにくいためである。
IDCはメモリ費用が1年前の約4倍となり、低価格端末では部材費の65%超を占めると試算する。200ドル未満の端末では、同じ容量のDRAMやNANDが上がったときの負担が販売価格に対して大きい。メーカーは値上げするか、保存容量を減らすか、旧型や4Gモデルを延命する必要に迫られる。どの選択も買い替え需要か採算を傷つける。
Omdiaの6月時点の予測では、DRAMとNANDの平均価格は2026年第1四半期だけで前四半期比80%超上がった。世界のスマートフォン出荷は2026年通年で12.2%減の10億9,300万台へ落ち込む一方、市場価値は6.1%増える見通しだ。平均販売価格は2025年の467ドルから565ドルへ21%上昇する。Counterpointは通年約14%減、IDCは13.9%減を予測しており、3社とも台数が1割を超えて減る方向を示す。
これは台数の不振と売上の不振が同義でなくなる市場である。Appleは高い端末価格に加え、下取りと分割払いで購入時の負担を抑えられる。低価格Androidメーカーは値上げすれば主要な顧客層を失いやすく、部材費を吸収できる幅も狭い。メモリ危機は、製品の人気に加えて、調達規模と販売金融を競争条件へ押し上げた。
Appleは20%を維持できるか
Appleもメモリ高から免れてはいない。5月に提出したForm 10-Qで、同社は先端半導体、NAND、DRAMの供給制約とコスト増に直面しており、状況がさらに悪化すると見込んだ。対応次第では製品需要から売上、粗利まで悪影響が及ぶとも記している。第2四半期のシェア拡大を支えた価格維持策は、同時にAppleが費用を抱える戦略でもある。
Appleの20%が長く続くかを判断する材料は、次期iPhoneの価格と容量、下取り条件、供給量である。値上げしても台数を保てれば、プレミアム帯への移動は定着したと判断しやすい。価格を据え置いた場合、製品粗利は上昇したメモリ費用をどこまで吸収できたかを探る材料になる。逆に旧型や低価格モデルの供給が細れば、20%の内側で販売構成がさらに高価格帯へ寄る。
Omdiaはメモリ価格の上昇が落ち着き始める時期を2027年後半、供給能力の増加による価格調整を2028年初めとみている。そこまでの市場では、出荷シェアよりも価格と売上、在庫を一緒に追う必要がある。Appleの次回決算でもiPhone台数そのものは開示されない可能性が高いため、4〜6月のiPhone売上と粗利、各社トラッカーの改定値が20%の実像を測る材料になる。