がか座β星bから届いたとみられる電波を、隣接する恒星と位置的に区別して捉えたとする研究が発表された。南アフリカの電波望遠鏡MeerKATを使った研究チームは、直接撮像によって軌道が分かっている系外惑星の位置と電波源を一致させた初の例として、2026年9月15日に論文を公開した。
観測されたバーストは、惑星のオーロラに伴う電波放射と解釈され、その発生領域には少なくとも1,250ガウスの磁場があると推定されている。
査読前の報告ではあるが、系外惑星の明るさや軌道だけでなく、電波観測から磁場や自転と磁気圏の関係を調べる道を開く結果となる。
恒星のすぐ近くにある電波源を、惑星の位置と照合
がか座β星bは、地球から約64光年離れた若い恒星を回る巨大ガス惑星だ。年齢は約2,300万年、質量は木星の約12倍で、有効温度は約1,700Kに達する。
生命が暮らせる地球型惑星というより、形成から間もない巨大惑星が内部に残る熱をどのように放出し、高速な自転によって磁気圏をどのように動かしているのかを調べる対象として注目されている。
研究を報告したのは、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのK. N. Ortiz Ceballos氏、E. Berger氏と、オレゴン大学のY. Cendes氏だ。
チームはMeerKATを使い、2025年2月と5月、2026年2月と5月の計4回、この恒星系を観測した。4回すべてで系の方向に電波源を検出している。観測した周波数帯は合わせて約0.85〜3.5GHz。2025年5月には約9.3時間にわたって追跡し、弱く持続する電波に加え、短時間で明るさが大きく変化するバーストも捉えた。
ただし、この恒星系の方向から電波が届いたというだけでは、がか座β星bが発生源だとは断定できない。
恒星と惑星bの見かけ上の距離は、最大でも約0.55秒角しかない。そこで研究チームは、2026年5月の電波画像を、Gaiaによって正確な位置が分かっているクエーサーなどの基準天体に合わせ、検出した電波源の位置と既知の惑星軌道を比較した。
さらに、地球の電離層による位置ずれや、位置合わせに使う基準天体の選び方によって結果が変わる可能性も評価した。
こうした系統誤差を考慮した結果、電波源の位置は惑星bの予測位置と一致した一方、恒星の位置とは4.4σ、同じ系にある別の惑星cとは4.8σの差があった。
これらは位置の一致・不一致を評価した統計値であり、「惑星から電波が出ている確率」を直接表した数字ではない。それでも、恒星のすぐ近くにある電波源を、惑星bの位置と切り分ける重要な根拠になっている。
今回の「初」にも注意が必要だ。Kao氏らが2018年に発表した研究では、恒星を回らず単独で存在する惑星質量天体の候補から、磁場を推定できる電波がすでに検出されていた。
今回の新しさは、恒星を周回し、直接撮像と軌道測定によって位置が分かっている系外惑星に、電波源の位置を結び付けたことにある。
1,250ガウスは惑星全体の平均磁場ではない
観測されたバーストでは、円偏波率が約40〜70%に達し、その向きも観測時期によって変化した。
円偏波とは、電波の電場の向きが、波の進行に伴って回転する性質を指す。激しい時間変動と強い円偏波を根拠に、著者らはバーストを「電子サイクロトロンメーザー放射」によるものと解釈している。
これは、磁場中を運動する電子が特定の条件で電波を強く増幅する仕組みだ。一方、弱く持続する電波については、別の放射機構や、多数の小さなバーストが重なっている可能性も挙げられている。
電子サイクロトロンメーザー放射が基本波で発生すると仮定した場合、放射周波数と局所磁場の関係は、磁場をキロガウスで表しておおよそ
周波数[GHz] ≈ 2.8 × 磁場[kG]
となる。
今回、3.5GHzまで電波が検出されたため、3.5÷2.8=1.25kG、つまり1,250ガウスという下限値が得られる。
研究チームが9月15日公開の論文で示した内容を、観測結果、放射機構からの推定、惑星内部モデルによる予測に分けると次のようになる。
| 区分 | 得られた量・内容 | 数値の意味と条件 |
|---|---|---|
| 電波観測 | 惑星bと一致する位置、約0.85〜3.5GHzの電波、バーストで約40〜70%の円偏波 | 望遠鏡が直接測定した電波の性質。磁場そのものを直接測った値ではない |
| 放射機構からの推定 | 放射領域の磁場が少なくとも1.25kG | バーストを基本波の電子サイクロトロンメーザー放射と解釈し、3.5÷2.8から求めた局所磁場の下限 |
| 惑星内部モデルの予測 | 平均表面磁場は約1.2kG | 光度、質量、半径などを使ったダイナモモデルによる予測。局所磁場の下限とは対象が異なる |
この表は、主論文の本文とMethods「Emission mechanism and magnetic-field estimate」を基に整理したものだ。それぞれを同じ種類の磁場測定として比較したものではない。
今回、直接観測されたのは電波源の位置、周波数、偏波などであり、「1,250ガウス以上」という値は、放射機構を仮定して求めた局所磁場の下限である。
また、3.5GHzはMeerKATで今回観測した帯域の上端にすぎず、惑星が放射する電波そのものが3.5GHzで終わることを意味しない。さらに高い周波数でも放射が続いていれば、必要な磁場はより強くなる。
逆に、観測された電波が基本波ではなく第二高調波で発生していた場合、同じ周波数から推定される磁場はおよそ半分になる。
そのため、1,250ガウスを惑星全体の平均磁場とみなしたり、放射機構についての仮定を外して確定値として扱ったりすることはできない。
オーロラを駆動する有力なエネルギー源は高速な自転
がか座β星bの自転周期は、過去の分光観測などから約8〜9時間と推定されている。ESOが2014年に発表した最初の自転測定でも、1日が約8時間しかない高速自転が示されていた。
今回の観測でも、2025年5月31日の同じ観測中に捉えた第1バーストと第3バーストの間隔が約8時間だった。
惑星の自転によって電波を放射する領域の向きが変わり、地球から見えるタイミングが周期的に変化している可能性がある。ただし、今回のデータだけで電波放射の周期が確立したわけではない。
著者らが有力視するエネルギー源は、惑星の高速な自転だ。
磁場に捉えられたプラズマが磁気圏の外側へ移動すると、惑星本体と同じ角速度で回転し続けることが難しくなる。この回転速度の差によって磁力線に沿う電流が生じ、電子が惑星側へ降下する。その電子によってオーロラが発生し、強い電波放射が生じるという仕組みだ。
磁気圏と、上層大気が電離した電離圏との結合を通じて、惑星の自転エネルギーがオーロラ放射へ供給される。
ほかの候補については、計算上、観測された電波を説明するには出力が不足していた。
論文では、木星を参考に恒星風によって駆動される電波放射を見積もったが、観測された強度より約1,000倍弱かった。仮想的な衛星との相互作用についても、条件を有利に設定してなお、観測された持続放射より10倍以上弱いという結果になった。
ただし、これは「衛星が存在しない」ことを意味しない。
自転エネルギーを使ってオーロラを駆動する場合でも、磁気圏へプラズマを供給する源が必要になる。論文では、惑星大気から流出する粒子や、恒星周囲のデブリ円盤から取り込まれるガスなどを候補に挙げている。
電波放射を駆動するエネルギー源と、磁気圏へ粒子を供給する源は別の問題として検証する必要がある。
低周波では見えず、GHz帯では検出された
同じがか座β星bからの電波を探したShiohira氏らの先行研究では、電波は検出されなかった。
2020年にインドのuGMRTを使って4回、それぞれ約2時間観測した結果、250〜500MHz帯の電波強度について、3σで0.18mJyという上限値を設定している。この論文は2023年12月に公開され、その後MNRASへの掲載が受理された。
ただし、この先行観測で使われた最も高い周波数でも500MHzであり、今回MeerKATが観測した0.85〜3.5GHzより低い。
観測した年も異なり、1回あたりの追跡時間も異なる。
したがって、以前の非検出が示しているのは、「その時期、その周波数帯、その感度では電波を確認できなかった」ということだ。がか座β星bがあらゆる周波数で電波を出していないことを意味するわけではない。
一方、今回の結果だけから「惑星の電波が以前より突然強くなった」と判断することもできない。
オーロラに伴うバーストが発生する時期や、惑星の自転に伴って電波ビームの向きが変わることで、地球から見える強度が大きく変化する可能性がある。
同じ周波数帯で継続的な観測を重ねれば、弱く続く放射と一時的なバーストの違いや、自転周期との関係をより詳しく調べられる。
磁場を測る最大の意義は、まず惑星内部を調べられること
がか座β星bでは、軌道から推定された質量に加え、光度や半径などの情報も得られている。
そこへ磁場の情報が加われば、巨大惑星の内部に残る熱と磁場生成を結び付ける理論を、太陽系外の惑星で検証できる。
惑星内部で電気を通す物質が動くことで磁場を生み出す仕組みは「ダイナモ」と呼ばれる。今回の論文では、内部の対流によって運ばれるエネルギー量を基にしたモデルから、がか座β星bの平均表面磁場を約1.2kGと予測している。
これは、電波から推定した局所磁場の下限である1.25kGと近い値だ。
ただし、数字が近いからといって、惑星内部のダイナモモデルが実証されたわけではない。電波が発生する特定の領域と、惑星表面全体の平均では、磁場の強さが異なる可能性がある。
電波がどの場所から出ているのか、磁場が惑星全体でどのような形をしているのかを観測で絞り込めるほど、内部モデルとの比較にも意味が出てくる。
また、磁場の検出を、そのまま生命が存在できる条件の証拠と結び付けるのも早い。
がか座β星b自体が約1,700Kに達する巨大ガス惑星であり、地球のような居住可能惑星ではない。また、強い磁場があれば大気が必ず守られる、という単純な関係でもない。
Gunell氏らが2018年に発表したモデル研究では、地球、火星、金星の条件と現在の平均的な太陽環境を使い、水素や酸素が大気から失われる過程を調べた。磁場は一部の大気散逸を抑える一方で、極域からイオンが逃げる経路を作る場合もある。
この研究は、がか座β星bそのものを計算したものではない。磁場の存在だけから大気を保持できるかどうかを判断することの難しさを示す背景として位置付けられる。
研究チームは今後、電波の時間変化を詳しく追うことで、惑星の磁軸が自転軸に対してどの程度傾いているのかや、電波を放射する領域がどのように配置されているのかを調べられると見込んでいる。
さらに、近傍の5つの恒星系にある、直接撮像済みの巨大惑星7個についても、現在より5〜7倍高い感度が得られれば電波を検出できる可能性があると試算した。
今後の再観測で同じ位置からの電波を再び確認でき、より高い周波数まで観測範囲を広げ、自転に伴う周期的な変化も捉えられれば、電波観測は系外巨大惑星の内部構造や磁気圏を比較する新たな手段になり得る。



