Micronは9月30日(米国)、2026会計年度第4四半期の決算説明で、人型ロボットが自動運転車に匹敵する大容量メモリの需要源になるとの見通しを示した。目安は200GBを超えるメモリと数TBのストレージだ。ただし、これはロボットの確定仕様ではなく、高度な自動運転車を基準にした将来予測である。メモリ不足が続くなか、ロボットの登場と新工場の増産は、いつ、どのように需給へ効いてくるのだろうか。

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200GB超という予測の基準

Sanjay Mehrotra会長兼CEOが決算説明原稿で挙げた200GB超は、レベル4以上の自動運転車が通常搭載するメモリ容量を指す。レベル4は、定められた条件のもとでシステムが運転を担う段階だ。ストレージも数TBに達し、現在のレベル2+やレベル3の車に比べ、必要量は10倍を超えるという。人型ロボットにも、同程度のメモリとストレージが必要になるとMicronは予想する。

ロボットへの期待そのものは今回が初めてではない。6月24日の前回説明でも、人型ロボットのメモリ容量を平均的なレベル2+の車の10倍と見込み、2020年代後半からの需要拡大を論じていた。今回は高度な自動運転車の容量を示し、ロボットの需要をより具体的に描いた形である。複数の顧客が次世代製品のサンプルを評価しているものの、量産への採用や出荷規模は明らかにしていない。

一方、現在利用できるロボット向け計算基盤には、容量の異なる製品がある。NVIDIAが2025年8月に公開したJetson Thorの技術解説では、最上位のT5000モジュールは128GBのLPDDR5Xを搭載し、開発キットには1TBのNVMeストレージを備える。

対象 メモリ/ストレージ 数字が示す範囲
レベル4以上の自動運転車 通常200GB超/数TB Micronが示す車両の搭載量
将来の人型ロボット 自動運転車と同程度を予想 Micronの将来見通し
Jetson T5000 128GB LPDDR5X 現行の計算モジュールの仕様
Jetson Thor開発キット 1TB NVMe 開発キットのストレージ仕様

出典:Micronの2026年9月30日説明原稿、NVIDIAの2025年8月25日技術解説。

この差には、世代とシステムの範囲が絡む。Micronが論じる将来のロボット全体と、現在の計算モジュールは同じ対象ではない。128GBの製品があることだけで200GB級の予測を否定することも、予測を現在の全ロボットの必須容量として扱うこともできない。搭載するAIモデルやセンサー処理をどこまで機器内で行うかによって、必要量は変わる。

ロボットの「考える処理」と「動く処理」

ロボットが周囲の状況を判断するには、AIモデルを動かしながら、センサーから届くデータを処理する必要がある。その作業場所を担うのがDRAMだ。容量が増えれば、より大きなモデルや処理中のデータを置ける。ただし、置ける量だけでは処理の速さは決まらない。

T5000のメモリ帯域は273GB/sである。帯域は、メモリと計算回路の間で一定時間に運べるデータ量を示す。大きなモデルを収めても、計算に必要なデータを十分な速さで渡せなければ、その能力を使い切れない。容量に加え、データの移動と電力消費をどう抑えるかが、機器内でAIを動かす際の設計課題になる。

NVIDIAはロボットの処理を階層に分けて説明している。高速の運動制御には厳しい応答時間が求められる一方、環境の認識や行動計画、高次の推論にはそれぞれ異なる時間の余裕がある。大きなAIモデルが推論する速さと、関節を安全に動かす速さを一括りにはできない。すべての処理に同じ低遅延を要求するのではなく、役割に応じて計算資源を割り当てる必要がある。

ストレージはまた別の役割を持つ。Micronの人型ロボット解説によれば、NANDはAIモデルやファームウェアを保存し、地図や動作ログ、更新データも保持する。DRAMが処理中の作業場所なら、NANDは電源を切っても残す情報の保管場所である。数TBという数字は、推論だけでなく、稼働を続ける機器として蓄える情報にも関わる。

この構成を考えると、人型ロボットの普及がそのままHBM需要の増加になるとは限らない。T5000が使うLPDDR5Xは低消費電力のDRAMであり、データセンターのAI計算で使われるHBMとは規格が異なる。ロボットの需要を評価するには、1台あたりの容量とともに、どの種類のメモリが採用されるかを見る必要がある。

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増産の資金は積めても、供給はすぐ増えない

MicronはフィジカルAIが2020年代末までに重要な需要源になり得るとみる。では、それに備える供給はどう増えるのか。今回の工場計画を、ウェハーを製造する前工程に絞って並べると、投資と出荷の時間差が見えてくる。

工場・拡張計画 対象 初期生産の予定
米アイダホ州・ID1 DRAM 2027年半ば
米アイダホ州・ID2 DRAM 2028年末
日本での拡張 DRAM 2028年末
シンガポールの新工場 NAND 2028年後半
米ニューヨーク州の最初の工場 DRAM 2030年

出典:2026年9月30日のMicron決算説明原稿2~3ページと説明スライド8~9ページ。いずれも予定であり、日本の拡張は製造技術の移行を支える計画でもある。純増する生産能力は公表されていない。

Micronの新工場は初期生産が2027~2030年に分散し、生産量の拡大にはさらに数四半期を要する。

資金の規模は大きい。2027会計年度上半期の資本支出は、政府補助の見込みを差し引いた額で約250億ドルとなり、下半期はさらに増える予定だ。しかし、増額分の過半を占めるのは建設で、主に2028年末以降に使えるクリーンルームの整備を前倒しする。今使う資金が、すぐに店頭のメモリを増やすわけではない。製造装置の導入は、需要や市場環境に合わせて調整する方針である。

Micronは前回、2028年には業界の供給が徐々に改善すると述べつつ、需要に追いつく時点は見通せないとしていた。今回は、暦年2027年と2028年の需給が2026年より大幅に厳しくなると予想する。供給が増えることと、不足が解消することは別だ。実際、両年の業界のビット出荷量はDRAMで20%台前半、NANDで20%台半ばの伸びを見込む。それでも需要を満たせないという判断である。

足元の数字にも、出荷量と価格の伸びの違いが表れている。第4四半期のDRAMのビット出荷量は前期比で1桁台半ばの増加だったが、平均販売単価は10%台後半上昇した。NANDも出荷量が約10%増えたのに対し、単価は約30%上昇した。データセンター向けSSDの売上は100億ドル近くに達し、同社のNAND売上の3分の2超を占める。現在の業績を押し上げる大きな需要は、すでにこの市場にある。

ただし、これらはMicronの出荷量や販売単価、売上構成であり、PC用メモリの小売価格や生産容量の配分を直接示す数字ではない。サンプル評価段階のロボットが、すでに大量のPC用メモリを奪っていると読む根拠もない。ロボットは今の不足の説明というより、増産した先に待つ需要として位置付けられている。

長期契約が守る範囲と、ロボット需要の読み方

Micronは設備を増やす一方、顧客との契約で将来の収益を確保しようとしている。複数年の契約は前回の16件から26件へ増えた。顧客が合意した量を購入するか、代金を支払う義務を負う「テイク・オア・ペイ」方式で、2030年までの同社の見込み売上の35%超を占める。

この契約による見込み売上の4分の3には価格の枠組みが定められ、そのうち過半には価格の下限と上限がある。残りの4分の1は、市場価格をもとに定期的に交渉する。価格条件があるのは契約対象の売上であり、全社売上の4分の3でも、メモリ市場全体でもない。

購入や支払いの義務は、建設費を負担するMicronにとって需要が減るリスクを抑える手段になる。しかし、特定の顧客との価格下限が、PC用メモリの市場価格を固定するわけではない。AI投資が減速しても値下がりしないという保証は、今回の説明にはない。

さらに、ロボットの普及予測には時間と単位の違いがある。Morgan Stanleyが2025年5月に公開した見通しは、2050年に産業・商業用途で約9億3,000万台の人型ロボットが使われると予測する。これは年間出荷台数ではなく、その時点で使われている台数だ。普及は2030年代半ばまで比較的ゆっくり進み、後半から2040年代に加速するという想定でもある。

年間の新たなメモリ需要を考えるなら、その年に製造される台数に、1台あたりの搭載量を掛ける必要がある。将来の稼働総数に200GBを掛けても、ある時点で機器に載っている総量になるだけだ。Micronが期待する2020年代末の需要と、2050年の普及予測を直結させると、需要が生まれる速さを見誤る。

人型ロボットは、メモリを大量に使う機器がデータセンターの外へ広がる可能性を示している。その規模を見極めるには、サンプル評価が量産採用へ進むか、新工場が初期生産から出荷をどれだけ増やせるかを追う必要がある。ロボット向け投資自体もAI投資と無関係ではない。200GB級という容量の予測だけで、AI需要が減った後の価格まで決めることはできない。