中国のDRAMメーカー、ChangXin Memory Technologies(CXMT)の創業期に、Samsung Electronicsの製造技術と人材を段階的に取得する工程表があった。韓国のCBS NoCut Newsが2026年9月1日、入手した起訴状に基づき、Project Hefei(合肥プロジェクト)の詳細を報じた。

ただし、ここで証拠の段階を取り違えてはならない。合肥プロジェクトは裁判所が認定した事実ではなく、検察が刑事裁判で立証しようとしている起訴内容である。関連する元Samsung研究者には懲役7年の一審判決が出ているが、工程表を扱う別の公判は続いており、証人尋問も終わっていない。

それでも、この文書は単なる「元技術者の転職」という従来の見方を変える。技術の取得、人材の採用、研究開発、生産を月単位で並べたとされ、検察は個人の持ち出しをCXMT創業期の開発計画へ結び付けようとしているからだ。

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「合肥プロジェクト」は何を示すのか

NoCut Newsが伝えた起訴状によると、CXMTの第1期開発責任者と設備投資担当者は2016年8月に入社し、DRAM開発計画を作った。目標は4段階に分かれていた。9月までにSamsungの工程レシピ計画書(PRP)など中核技術を取得し、10月までにSamsungの8大工程を担う技術者を確保する。2017年7月には研究開発体制を整え、2018年8月には月1万枚のウェハー生産を始めるという内容だった。

この工程表は、後から開発実績を並べた文書ではない。技術と人材をあらかじめ計画に置いた文書だというのが検察の主張である。第1期開発責任者はSamsungのメモリー事業部で1994年から2015年まで働き、2016年から2020年までCXMTの17nm級DRAM開発を率いた人物だと、ソウル中央地検の2024年4月資料は説明する。

検察によれば、CXMT側はまず元Samsung技術者の記憶を頼りに18nm級DRAMの工程レシピ計画書を作ろうとした。しかし、実際の開発に使える精度へ届かなかった。製造工程が約620段階に及び、工程の順番に加えて、使う材料や処理条件、設備会社と装置の型番まで必要だったためだ。

状況が変わったのは2016年9月である。起訴状によると、Samsungの具体的な工程情報が渡った後、9月23日から26日にCXMT側の工程レシピ計画書が作られ、27日には8大工程を整理した表計算ファイルができた。クリーン、エッチング、フォトなどの担当者へ配り、それぞれが内容を検討・補足したと検察はみている。

620工程のレシピだけで量産できるわけではない

工程レシピ計画書は、完成したDRAMの外形を示すだけの設計図ではない。ウェハーをどの順番で処理し、どの設備と材料を使い、温度や時間などの条件をどう組み合わせるかを一続きにした製造手順である。一つの工程だけを知っても、前後の処理と噛み合わなければ動作するチップにはならない。

一方、手順書を得れば同じ製品をそのまま量産できる、という理解も正確ではない。ソウル中央地検の2025年12月資料によると、CXMTは2018年2月にSamsung元役員を第2期開発責任者として採用した。第2期チームは2023年初めまで、Samsung製品の逆解析、文書に残ったSamsung固有用語の削除・変更、製造試験を重ね、中国側の設備に合わせて工程情報を修正・検証したとされる。

つまり、検察が描く経路は「資料を入手して即量産」ではない。出発点となる工程体系を得たうえで、現地の装置や材料へ移植し、試作で条件を詰める工程が続いたというものだ。ここには、情報取得と製造能力の間を埋める統合技術が要る。

同じ検察資料は、捜査で確認したCXMT資料とSamsung資料の一致率が開発初期の56.7%から98.2%へ上がったと説明する。この数字は強い主張だが、比較したファイル、分母、判定単位、計算方法は公表されていない。技術の98.2%を複製した、あるいは製品性能が98.2%同じだという意味には読めない。

Samsungが10nm級8Gb DDR4の量産開始を公表したのは2016年4月5日だった。同社のいう10nm級は10〜19nmの範囲で、事件の18nm級もここに入る。起訴状を報じたNoCut Newsによれば、2012年4月から1,100人超が開発に加わったとされる。ただし、この人数は起訴状側の説明であり、Samsung自身の公開値として扱うべきではない。

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計画とCXMTの公開年表を重ねる

合肥プロジェクトの期限を、CXMTが現在公開している企業年表と重ねると、計画に近い節目と遅れた節目が分かれる。

時期 起訴状が伝える計画・検察主張 CXMT公式年表の節目
2016年8〜10月 開発計画を作成、9月に技術、10月に中核人材を確保 2016年に会社設立
2017年3〜7月 7月に研究開発体制を整える目標 3月に合肥のFab Aを着工
2018年1〜8月 8月に月1万枚の生産開始を目標 1月にFab A1完成、7月に8Gb DDR4を試作投入
2019年5〜11月 公開された計画日程の後 5月に製品試験成功、9月に量産発表、11月に初受注・販売開始

CXMTの8Gb DDR4試作投入は、計画上の生産開始より1カ月早い。だが、試作投入は量産ではない。同社が量産を発表したのは2019年9月で、目標から13カ月後だった。最初の受注と販売開始はさらに2カ月後である。月1万枚という目標に対応する生産実績は、公式年表から確認できない。

この比較から、合肥プロジェクトが公開年表と完全に一致したとは言えない。工場完成から試作投入までの時期は近い一方、試験、量産発表、販売は後ろへずれた。そもそも起訴状は目標、CXMT年表は会社が選んで公表した節目であり、同じ資料の表裏ではない。日程の近さは検察の主張を検討する手掛かりにはなるが、技術流出がCXMTの成長を直接引き起こしたという因果の証明にはならない。

判決済みと審理中を分ける

CXMTを巡る複数の刑事手続が並走していることも、話を分かりにくくしている。2025年12月23日の公式発表で、ソウル中央地検はCXMTの第1期・第2期開発チームに関わった10人を起訴した。5人は拘束起訴、5人は在宅起訴である。そして資料の冒頭には、公表する犯罪事実は裁判で確定したものではない、と明記されている。

一方、Samsungに28年間勤めた後にCXMTへ移った元研究者は、18nm級DRAM工程情報を不正に取得・使用した罪に問われ、2026年4月に懲役7年の一審判決を受けた。NoCut Newsによると、この人物は8月11日の別の公判で、CXMTの最高経営責任者と最高技術責任者が設立当初からSamsungの工程情報を使ってDRAMを開発しようとしていた、との趣旨を証言した。

ここには三つの異なる状態がある。元研究者本人に対する一審判決、現在の法廷でなされた証言、そして合肥プロジェクトを記したとされる起訴状だ。前者があるからといって、後二者の全内容まで裁判所が認定したことにはならない。CXMT法人が本件で有罪判決を受けたと示す公開資料も、今回の調査では確認できなかった。

次の公判は9月8日に予定され、証人尋問は10月まで続く。焦点は世界市場シェアの大きさではない。工程表の原本を誰が作り、どの記録から経営陣への報告を裏付けるのか。9月23〜27日のファイルはSamsung資料とどこが一致し、一致率はどう算出されたのか。被告側が文書の真正性と合法的に得た知識の範囲をどう争うのか。これらを裁判所が認定して初めて、合肥プロジェクトは検察の筋書きから司法判断へ進む。