Bank of America、Blackstone、Citi、Morgan Stanleyの4社は10月26日、Anthropic向けにBroadcom製のAIチップとネットワーク機器を調達する630億ドルの取引を発表した。納入は2027年に始まる見込みで、Broadcomはシニア融資の額に相当する残価保証を出す。Reutersは事情を知る関係者2人の話として、そのシニア融資を約435億ドルと伝えた。チップの売り手であるBroadcomが、取引総額の約7割にあたる額まで資産価値の下落を吸収する立場に立つ。この取引では、担保チップの値下がり損失を貸し手に代わって最大約435億ドルまでBroadcomが負担する構造だとみる。

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SPVがチップを買い、Anthropicがリースする

発表文によると、新設の特別目的会社(SPV)が、4社のコミット型融資を使ってBroadcom製のXPU(AI向けアクセラレーター)とネットワーク製品を購入し、Anthropicにリースする。シニア融資にあたる第1順位担保(first lien)の部分はBank of America、Citi、Morgan Stanleyが手配する。それより返済順位が低い第2順位(second lien)のコミット済み融資は、Blackstoneが単独で提供する。この取引は、Broadcomが先に発表した戦略的コンピュート容量契約の一部にあたる。

BroadcomのHock Tan CEOは、AI向けコンピュートの需要は並外れた速度で増え続けており、今回の取引は資金を調達できることを示すものだと述べた。Reutersは、チップメーカーが資産価値の下落を吸収する保証を過去にも出してきたと指摘する。前回は、ApolloとBlackstoneが350億ドルの資金提供に合意した取引で、Broadcomの保証は最大290億ドルだったとBroadcomの提出書類を根拠に伝えている。ここまでは、発表文とReutersの配信で確認できる内容だ。

残価保証は、担保のチップを後で売ったときの価格が貸し手への返済額に届かないとき、保証した側が差額を埋める約束を指す。Reutersの別の配信は、Broadcomが第1順位債務と同額を上限に、資産価値の下落を吸収すると説明した。ただし、発表文には第1順位と第2順位の内訳額が書かれていない。

保証の重さを数える

内訳は発表文にないため、数字はReutersの報道に頼ることになる。Reutersは関係者2人の話として、第1順位債務は約435億ドルで、総額の69%にあたると伝えた。保証の上限が第1順位債務と同額なら、次の計算になる。

Reutersが伝えた関係者2人の説明が正しければ、Broadcomの残価保証は取引総額630億ドルの約69%にあたる最大約435億ドルに達し、残る第2順位側は約195億ドルになる。

計算は単純で、435億ドルを630億ドルで割ると0.69になり、630億ドルから435億ドルを引くと195億ドルが残る。残りがすべて第2順位だという前提を置いた計算である。円換算では、10月21日の東京市場午後5時時点の1ドル=158円台前半を使うと、取引総額は約10兆円、保証の上限は約6兆9000億円になる。10月26日の終値は確認できていないため、この換算はおおよその規模を示すものにとどまる。

前回の保証上限である最大290億ドルと比べると、今回の435億ドルは約1.5倍だ。ただし前回は提出書類にある上限額、今回は匿名の関係者が伝えた第1順位の額に基づく推計であり、同じ尺度とは限らない。それでも、保証の規模が拡大している傾向は読み取れる。

ここで押さえておきたいのは、保証する側と売る側が同じ会社だという点だ。チップの再販価格が下がる要因には、新世代の製品の登場もありうる。その場合、Broadcomは新製品を売って売上を伸ばしながら、旧製品の保証負担を抱えることになる。この点は報道の記述ではなく、構造から導いた筆者の読みである。

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条件付きの保証を重く見る理由と、見立てが崩れる条件

最有力の反対論は、この保証が現金の拠出ではなく、条件付きの約束にすぎないというものだ。Anthropicがリース料を払い続け、チップが想定どおりの価格で売れるなら、Broadcomは一円も払わない。Moody'sはBroadcomを大手テクノロジー企業で最も財務の強い部類と評価しており、435億ドル規模の保証でも吸収できるという見方は成り立つ。Anthropicは10月26日にIPOの申請書を提出した。株式市場から資金を得られれば、リース料の支払い能力は補強される。

それでも、範囲を絞った見立ては維持する。理由は2つある。1つ目は、保証の対象になる損失の種類だ。担保のチップが値下がりしたときの差額は、本来シニア融資の貸し手が負う損失であり、Broadcomがこれを最大約435億ドルまで肩代わりする。Anthropicの返済力が重要であることは変わらないが、値下がりによる損失を誰が負うかは変わる。

2つ目は、Moody'sが同じ評価の中で、フロンティアAIラボの巨額の資金需要を満たすために短期間で複数の取引が行われれば、リスクは高まると警告している点だ。Reutersの伝えるところでは、同社は短期間に複数の取引が行われればリスクが高まるとしている。350億ドルの前回取引に続いて今回の630億ドルの取引がまとまっており、この警告が想定する状況に近い。Reutersは、Anthropicの申請書が巨額の損失を開示したことも伝えている。

見立てが外れる条件は、観測できる。前回は、Broadcomの提出書類が保証額を明らかにした。今回もBroadcomが提出書類で保証の上限を開示し、上限が第1順位債務の額より小さいと分かれば、見立ての前提である「同額まで」が崩れる。上限が約400億ドルを下回る場合も、総額に占める比率が6割台前半に下がるため、数字を修正する。435億ドル前後で確認されれば、見立ては裏づけを得る。

納入開始が見込まれる2027年以降は、チップの再販価格と、Anthropicのリース料の支払い状況が次の判断材料になる。