中国の電池メーカーCBAK Energyは2026年8月20日、南京第2期工場で大型円筒形セル「Model 32140 FS」の生産能力を増強し、年3GWhの現有能力を長期的に18GWhへ広げる計画を発表した。だが、18GWhは稼働済み設備の規模ではない。7月時点の日産能力は年末目標の80.8%で、2026年第1四半期には新ラインの立ち上げコストが粗利を圧迫していた。設備が持つ年産能力、各工程の処理速度、安定して出荷できる量を分けて読む必要がある。
18GWhは長期計画、実運転は17万7800セル/日
今回発表された南京第2期の現在の年産能力は3GWhである。長期計画の18GWhはその6倍だが、到達時期と追加投資額は示していない。資金調達方法や追加するライン数も不明だ。計画上の延べ床面積は約27万平方メートル、敷地は約23.8ヘクタールに及ぶものの、建物や設備がすべて完成したという発表でもない。
| 時点 | CBAKが開示した能力・実績 | 読み取れる状態 |
|---|---|---|
| 2024年12月 | 第1期の実能力は約1.3GWh、第2期の長期設計は27GWh | 最初の2ライン、計3GWh分の設備調達を完了 |
| 2025年12月末 | 第1期は1.5GWh、第2期2ラインは最大3GWh | 量産開始後も立ち上げ中。3GWh到達は2027年初めの見込み |
| 2026年7月 | 17万7800セル/日 | 1月の6万4900セル/日から174.0%増、年末目標22万セル/日の80.8% |
| 2026年8月 | 第2期は現在3GWh、長期計画は18GWh | 18GWh化の工程表と投資額は未公表 |
年産能力と実運転の差は、同じ会社の開示にも表れている。2025年の年次報告書では、第2期の2ラインは量産を始めた一方、3GWhのフル能力に達する時期を2027年初めと見込んでいた。8月13日の稼働更新も、7月の日産能力を17万7800セル、2026年末の目標を22万セルとしている。したがって、今回の3GWhは年間の能力値であり、同じペースで完成セルを安定出荷した実績を表す数字ではない。
長期計画そのものも動いてきた。CBAKは2024年12月、第2期を27GWhまで広げる設計だと説明していた。その後、2025年の年次報告書では南京計画全体を完成後約20GWhとし、第2期で18GWhを追加する構成に戻した。最新発表では第2期の長期能力を18GWhとしている。27GWhから計画が変わった理由は公表されていない。
年次報告書によると、第2期は大型工場3棟で構成され、2025年末時点では最初の1棟に生産設備を入れていた。CBAKが高淳経済開発区から同年末までに受け取った補助金は6100万元(約870万ドル)である。残る工場の完成状況や、18GWh化に必要な総事業費は今回も示されなかった。
240セル/分は巻回工程の数字
発表で最も目を引く「最大240セル/分」は、電極を巻いてセル内部の巻回体を作る装置の処理速度だ。完成セルが工場から毎分240個出てくるという意味ではない。集電ディスクを走行させながらレーザー溶接する別工程は、装置1台当たり最大120セル/分とされる。底部のレーザー貫通溶接は1カ所平均約0.35秒で、電流を流す面積を約3分の1広げるという。
Model 32140 FSは、リン酸鉄リチウム(LFP)を使うフルタブ型の大型円筒セルである。CBAKは巻回後のタブを平らにし、全周に近い形で一工程成形する回転式設備を導入した。電極づくりでは、負極の2ロール連続圧延が厚みの均一性を30%改善し、正極の誘導加熱が高速加工時のウェブ切れを減らすと説明している。ただし、30%という改善率の基準値や測定条件は開示されていない。
工程速度から工場の年産量を計算することもできない。必要になるのは装置の台数と稼働時間に加え、品種切り替えや保守による停止、後工程の能力、歩留まりである。CBAKはこれらを公表していない。240セル/分はボトルネック候補を評価する材料にはなるが、3GWhや18GWhを裏づける完成品の実績値ではない。
セルごとのデジタルIDと品質管理
南京第2期では、完成セルの識別コードと内部の巻回体コードをUVマーキングで結び、セルごとの製造履歴を追えるようにした。インラインで検査・追跡する重要パラメータは100項目を超える。品質問題が出たとき、どの工程条件にさかのぼるべきかを絞り込むための仕組みだ。
材料の工程間輸送には無人搬送車を使い、CBAKが定義した中核製造工程は100%自動化したという。ここでの100%は、原材料の受け入れから出荷まで工場内の全作業が無人になったという意味ではない。自動化の対象を会社が「中核」と定めた工程に限るからだ。
AIを使った溶接検査にも同じ注意が要る。CBAKは、定義済みの検査範囲内で「溶け込み不足」の溶接欠陥を100%検出したと発表した。対象は特定の欠陥種であり、あらゆる不良を漏れなく見つけたとの主張ではない。第三者試験の結果も示されていない。量産拡大で本当に効くかは、誤検出率、見逃し率の母数、ライン速度を上げた後の歩留まりで判断する必要がある。
出荷は倍増、最新の大型受注は工場を特定せず
Model 32140の2026年1〜7月出荷は3255万セルに達し、前年同期の1615万セルから101.5%増えた。2025年通年の2998万セルも8.6%上回る。8月7日時点の累計納入は9200万セルで、製品が試作段階を越えていることは確かだ。ただし、累計納入と7カ月の出荷、南京第2期の日産能力は期間も指標も違うため、足し合わせられない。
CBAKは8月25日、インドの二輪・三輪車メーカーから税別約9600万ドルのセル注文を受け、2027年中に納入すると発表した。指定する製造拠点をフル稼働にする規模だという。顧客名、セル型式、工場名は非開示であり、この注文をModel 32140や南京第2期へ直接結びつける証拠はない。
南京の需要については、より限定された根拠がある。2025年の年次報告書でCBAKは、第1期の2ラインがフル稼働し、第2期の新能力も保留中の生産注文に割り当て済みだと説明した。出荷増と日産能力の上昇も、その後の立ち上げを裏づける。一方で、18GWh分の販売先まで確保したとの開示はない。
増産の成否は能力より粗利率に出る
2026年第1四半期の連結売上高は6962万ドルで、前年同期の3494万ドルから99.3%増えた。バッテリー事業の売上高も2036万ドルから3752万ドルへ84.3%伸びている。しかし連結粗利は480万ドルから104万ドルへ減り、粗利率は13.7%から1.5%へ落ちた。CBAKは、新しい生産能力の立ち上げで単位コストが上がったことと、原材料価格の上昇を顧客価格へ転嫁しきれていないことを主因に挙げた。
同四半期の設備投資は1180万ドルだったが、南京に振り向けた額は分からない。18GWh化に必要な追加投資も公表されていない。会社自身も、資金調達、建設、設備導入から稼働率と歩留まりまでを、計画が実績へ変わる際のリスクとして列挙している。
まず確認できる節目は、2026年末の日産22万セルと、2027年初めに見込む第2期2ラインの年3GWh到達だ。その先の18GWh計画が現実味を持つには、追加設備の工程表と資金に加え、増産しても粗利率が回復することをCBAKが数字で示さなければならない。
