NVIDIAは2026年10月13日、DLSS 5のAIモデルを9月版から2倍高速化する更新を発表した。DLSS 5モデルに伴うVRAM使用量も4K時に20%減らし、10月16日に『NBA 2K27』へ投入する。9月に同作で始まった、ゲームの照明や素材の見え方をAIで補う機能が、より小さな負担で動くようになる。
ただし、2倍になるのはモデルの処理速度で、ゲーム全体のフレームレートとは分母が違う。11月には『ホグワーツ・レガシー』と『Where Winds Meet』も公式対応する予定だ。今回の最適化を評価するには、追加される画質と、そのために使うGPUの時間やメモリがどのように変わるかを見ていく必要がある。
「2倍高速」の内訳と、VRAM20%削減の範囲
NVIDIAによれば、10月モデルはパラメータ数を24%削り、約1億1800万に縮小した。処理全体の最適化とモデルの改良を組み合わせ、9月版と同程度の画質を保ちながら、ニューラル処理がGPUに加える負荷を半分にするという。3月の初公開時と比べると、モデルの処理速度は10倍に達したとしている。
一方、『NBA 2K27』のゲーム内フレームレートについて同社が示すのは、最大1.4倍という改善だ。これは新旧モデルを比べた数字であり、DLSS 5を無効にした状態より速くなるという意味ではない。
今回の「2倍」「20%減」「最大35%向上」は、それぞれニューラル処理の速度、4K時のVRAM、フレーム生成という別の対象を測った数字だ。
| NVIDIAが発表した改善 | 数字が指す対象 | 比較や評価で残る条件 |
|---|---|---|
| モデル処理速度が2倍 | DLSS 5のニューラル処理、9月版との比較 | ゲーム全体のfpsが倍になるわけではない |
| ゲーム内fpsが最大1.4倍 | 『NBA 2K27』で新モデルを使う場合 | DLSS 5を無効にした状態との比較ではない |
| 4KでVRAM使用量が20%減 | DLSS 5のモデルに伴うメモリ使用 | ゲーム全体のVRAM削減率や、削減するGB数は示していない |
| 最大35%高速化 | RTX 5060での新しいフレーム生成モード | 別機能の改善で、小さな画質上の代償を伴う |
出典はNVIDIAの10月13日発表。各機能の改善率を対象別に並べたもので、同じGPUと設定で測った独立ベンチマークではない。数値を足したり掛けたりして、ゲーム全体の高速化率を求めることもできない。
VRAMの20%減は、特に読み方に注意したい。GPUのメモリにはゲームのテクスチャや描画用のデータも載る。モデルに伴う使用量が減っても、それらが一緒に20%縮むわけではない。NVIDIAは更新説明で削減前後の絶対量を示しておらず、この数字だけで手持ちのGPUに十分な余裕ができるとは判断できない。
DLSS 5が足す画質には、計算コストがある
DLSS 5のニューラルレンダリングは、ゲームエンジンが描いた画像を土台に、照明と素材の表現を加える処理だ。低解像度の画像を高解像度へ再構成する超解像や、描画した画像の間に中間画像を作るフレーム生成とは、担う仕事が違う。従来の描画工程の末尾に、画質を変える工程が加わる。
NVIDIAの技術解説では、画像の色と、動きの方向や量を示すモーションベクトルを使い、1フレームを入力して1フレームを出力する設計を説明している。皮膚の内部で光が散る見え方や、髪を透過する光、物体が接する部分の影を補い、動く画面でも結果を安定させる狙いだ。
つまり、ニューラル処理を速くしても、ゲームが元の画像を描く時間は残る。描画の後にAI処理を加える単純な例なら、全体の時間は「元の描画時間+AI処理時間」になる。後半を半分にしても、前半まで半分にはならない。モデルの2倍高速化と、ゲーム内fpsの最大1.4倍が並ぶのは、こうした処理範囲の違いがあるためだ。実際のGPUでは処理の重なり方も影響するので、この説明から個別のfpsを逆算することはできない。
同じように、メモリを節約する効果は、ゲーム全体の使用量のうちニューラル処理が占める割合に左右される。モデルの小型化は歓迎できるが、パラメータ数、GPUの処理時間、VRAMはそれぞれ違う量だ。パラメータ24%減だけで処理負荷半減のすべてを説明したり、特定の圧縮手法を採用したと推定したりする根拠は、今回の発表にはない。
DLSS 5は任意の独立した機能として、超解像やマルチフレーム生成などと組み合わせられる。プレイヤーが判断したいのは、更新前に払っていた画質向上のための負担がどれだけ減るかだ。その負担を切り出すには、他のDLSS機能をそろえた比較が必要になる。
ホグワーツの公式対応で試される、画作りの制御
『ホグワーツ・レガシー』は11月5日、GeForce RTX 50シリーズとRTX Spark、GeForce NOW向けにDLSS 5へ対応する予定だ。既存のマルチフレーム生成とレイ再構成も、同じ更新で最新版へ切り替える。『Where Winds Meet』は11月下旬に続き、すでに対応する超解像やマルチフレーム生成にニューラルレンダリングを加える。
NVIDIAは、Avalanche SoftwareがDLSS 5の開発キットで効果を調整し、『ホグワーツ・レガシー』の意図した美術表現と作風を保つよう統合したと説明している。公式対応の意味は、ゲーム側でオンにできるようになることに加え、開発元がその作品に合う適用方法を選ぶ点にもある。
開発者は複数のモデルを選び、場面ごとに使い分けられる。「構造表現の強度」で細かな陰影や反射を調整し、「色調表現の強度」で広い範囲の照明や色の変化を調整する。さらに、意味分類に基づくマスクを使って人物と背景への効かせ方を分け、エンジン側のマスクで特定の物体を指定できる。画面全体へ同じ強さの効果を一律にかける使い方に限られない。
もっとも、調整できることと、すべての場面で意図どおりに見えることは別だ。会話中の顔や衣服の質感を良くした結果、作品が持つ柔らかな色調まで変わっていないか。動く髪や輪郭にちらつきが出ないか。11月の公式実装は、こうした画質と作風の釣り合いを確認する機会になる。
元になる画像の品質も仕上がりを左右する。NVIDIAは、レイトレーシングやパストレーシングで豊かな照明情報を与えた方が、ニューラル処理の結果も正確になると説明している。元の描画を粗くしてAIに任せれば、必ず同じ仕上がりになるという設計ではない。モデルが軽くなった後も、元の描画に使う計算量と、AIで加える表現の兼ね合いは作品ごとに変わる。
RTX 40に届くのは、まずフレーム生成の軽量化
RTX 40シリーズのユーザーが今回試せるのは、NVIDIA appのベータ版で提供するフレーム生成の高速モードだ。設定名は「Preset C」。RTX 50シリーズとRTX Sparkも対象になり、NVIDIAはRTX 5060で最大35%の高速化をうたう一方、小さな画質上の代償があると明記している。
従来のフレーム生成では、ゲームの深度やモーションベクトルから動きを理解するAIモデルと、画面上の動きである光学フローを求めるAIモデルを使う。後者はUIやレイトレーシングの効果なども扱う。Preset Cは、この2番目のモデルを、より速く軽いアルゴリズムへ置き換える仕組みだ。
こちらは、照明や素材を生成するDLSS 5の軽量化とは異なる変更である。RTX 40でこのベータ機能が動くことから、DLSS 5のニューラルレンダリングやマルチフレーム生成まで公式対応したとは読めない。また、最大35%はRTX 5060での数字であり、RTX 40の各製品に同じ改善を約束していない。
NVIDIAは9月3日更新の公式FAQで、まずRTX 50の性能を十分に調整し、その後RTX 40へDLSS 5の公式対応を広げる計画を示していた。10月の更新は最適化の進展を示すが、RTX 40版の提供日は今回も示されていない。手持ちのGPUで試す際は、フレーム生成の設定とニューラルレンダリングの設定を別々に確認する必要がある。
RTX Remixへの展開で、最適化はどこまで広がるか
10月23日には、古いPCゲームを改造して描画を刷新するRTX Remixにも、新しいDLSS 5モデルとフレーム生成の高速モードが加わる予定だ。NVIDIAが示した『Fallout 4 RTX』と『Mirror’s Edge RTX』は制作中の改造プロジェクトであり、元のゲームへの公式アップデートではない。
改造の作者にも、ゲーム開発者と同じ制御が提供される。物体ごとの設定やマスクを使い、AI処理をかける部分と外す部分を選べる。速度を上げたモデルを配るだけでなく、効果を作品に合わせる道具も渡すことで、既存ゲームへ導入する際の選択肢が増える。
まず10月16日の『NBA 2K27』更新では、同じGPUと同じ場面で、9月モデル、新モデル、ニューラル処理を無効にした状態を比べたい。解像度と画質設定をそろえ、超解像やフレーム生成の倍率も固定する。生成画像を含む表示fpsに加え、ゲームが実際に描く頻度と、一時的にフレーム時間が長くなる場面を見る。操作への応答と、動く画面での画質も合わせれば、速度向上がどのような快適さにつながるかを判断できる。
その比較を11月の公式対応作へ広げれば、AI処理に使う時間が減った分を、描画設定や画質の維持へどれだけ回せるかが見えてくる。開発元が選んだ表現を保ちながら十分な描画の余裕を得られることが、DLSS 5を日常のゲーム設定として採用する条件になる。
