Dragonfly Energyの全固体電池計画は、セルそのものの性能発表ではなく、製造方法を守る段階で一歩進んだ。同社は2026年6月18日、米国特許商標庁から「Powderized Solid-State Electrolyte and Electroactive Materials」と題する特許出願について許可通知を受けたと発表した。対象は、粉末化した固体電解質と電極活物質を扱う製造プロセスで、Dragonfly Energyが進める全固体電池開発を支える材料・工程の保護にあたる。

ここで読むべきは、同社が全固体セルを出荷できる段階に入ったという話ではない。Dragonfly Energyの公開情報をつなぐと、同社は乾式電極製造と全固体電池を同じ製造基盤の延長線上に置き、その特許網を日本、欧州、米国へ広げている。試作セルや量産装置の予定はまだ先にあり、商用化には技術検証と資金の両方が残る。

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米国の許可通知は、同じ週の欧州許可に続く動きだ

Dragonfly Energyは、2026年6月15日にも欧州特許庁から「Systems and Methods for Dry Powder Coating Layers of an Electrochemical Cell」と題する出願について許可通知を受けたと発表している。この欧州出願は、電気化学セル内の層を乾式粉体コーティングで形成する要素を対象にしており、同社によれば電極、セパレーター、固体電解質層を支え得る。

その3日後に出た米国の許可通知は、別の地域で同じ製造ロードマップを押さえにいく動きとして読める。さらに、2026年4月23日には日本特許庁から、今回の米国発表と同じ「Powderized Solid-State Electrolyte and Electroactive Materials」という題名の出願について許可通知を受けたことも公表済みだ。日本での許可は、Dragonfly Energyにとって日本で初めての特許出願許可だった。

この流れは、単発の特許ニュースというより、乾式電極と全固体電池をまたぐ工程を地域ごとに固める作業に近い。同社の2025年年次報告書によると、2025年12月31日時点でDragonfly Energyは50件の発行済み特許と38件の出願中または係属中の特許出願を持ち、対象地域には米国、カナダ、オーストラリア、韓国、日本、インド、中国、欧州が含まれる。今回の許可通知は、この既存ポートフォリオに全固体材料と粉体加工の保護を積み増すものだ。

乾式電極の狙いは、性能より先に製造コストと設備を変えることにある

Dragonfly Energyが強調する乾式製造は、従来の湿式スラリー塗工とは違い、NMPなどの溶剤や大型の乾燥設備への依存を減らす発想だ。同社の年次報告書では、工程はスプレードライと静電粉体コーティングを組み合わせるものとして説明されている。スラリーを塗って乾かすのではなく、乾いた粉体を処理し、電極材料を集電体へ付着させる。

同社がこの工程を全固体電池にもつなげる理由は、固体電解質や電極活物質を粉体として扱えるためだ。欧州で許可通知を受けた出願は、電極だけでなくセパレーターや固体電解質層にも関わる。米国と日本で許可通知を受けた出願は、粉末化した固体電解質と電極活物質そのものに関わる。保護対象は「電池パックの新製品」ではなく、セル内部の層をどう作るかに寄っている。

Dragonfly Energyは年次報告書で、Sphere Energyによる評価として、同社の乾式電極工程がセル製造の炭素排出を9%減らし、電極製造時のエネルギー使用を71%減らし、必要な床面積を22%減らし、化学系によっては工程関連コストを5%下げ得ると説明している。これらは同社の開示に基づく数字であり、商用工場での実績値ではない。それでも、同社が特許で守ろうとしている中心が、セル性能の一点突破ではなく、量産時の設備、エネルギー、工程費を下げる製造ルートであることは読み取れる。

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試作の現在地は、まだ全固体セルの量産前にある

特許の許可通知は、量産準備が完了したことを意味しない。Dragonfly Energyの2025年年次報告書では、同社が乾式電極工程でアノードとカソードの電極リールを製造し、コア事業や潜在的パートナー向けの試作セルを評価していると説明している。一方、全固体技術については、固体セルのコインセルをサイクル試験している段階で、プロトタイプのパウチセル生産は少なくとも2027年初めまで遅らせたとしている。

装置側にも時間軸がある。同社は2024年第2四半期に新しいスプレードライヤーを施設へ導入したが、より大型の電極コーティング装置の設計に集中するため、このスプレードライヤーの展開を少なくとも2027年第3四半期まで遅らせたと年次報告書で開示している。乾式工程の考え方があっても、材料を大きな量で安定処理し、顧客が評価できるセルへ落とし込むには、装置の大型化と品質管理が必要になる。

2026年5月には、この穴を埋めるための小さな資金も入った。Dragonfly EnergyはNevada Tech Hubから2回目の資金支援に選ばれ、52万7000ドルの助成を受けると発表した。対象は、円筒形リチウム電池セルの試作装置と高度な検証システムで、プロジェクト期間は2026年第2四半期から2027年第2四半期まで。Dragonfly Energyは、社内でも約43万2000ドルを労務、エンジニアリング、プログラム実行に投じるとしている。

この助成金は、全固体電池の量産資金というより、セルを社内で作って試し、材料やサプライヤーを評価するための基盤整備だ。今回の米国特許許可とあわせると、同社の次の段階は、権利化された工程を顧客や提携先が判断できる試作データに変えることになる。

事業の足元は、研究開発だけに資金を振り向けられる状態ではない

Dragonfly Energyの技術計画を読むには、同社の財務状況も外せない。2026年第1四半期の売上高は970万ドルで、前年同期の1,336万ドルから27.3%減った。粗利益率は17.6%、純損失は660万ドル、調整後EBITDAは455万ドルの赤字だった。四半期末の現金は860万ドルで、同社は同四半期報告書で、全固体電池の研究開発、施設拡張、新たな戦略投資を含む継続費用をまかなうため、追加資金を調達する必要があると説明している。

ただし、同社は2025年から2026年初めにかけて資本調達と債務再編を実行し、継続企業の前提に関する疑義は1年評価の範囲で緩和されたとも開示している。2026年第2四半期については、売上高1,320万ドル、調整後EBITDAは190万ドルの赤字を見込む。資金繰りは改善したが、研究開発と量産投資を一気に進められる余裕が十分にあるとまでは言えない。

近い収益源として同社が前面に出しているのは、全固体セルではなく、既存のBattle Born Batteriesを含む電池パック、OEM、商用車向けシステムだ。第1四半期発表では、Stevens Transportから約500台のトラックにまたがる300万ドル超の発注を受けたことを示している。Dragonfly Energyは短期ではトラック、RV、産業用途の電源システムで売上を作り、その間に乾式電極とセル開発の基盤を整える構図にある。

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次の焦点は、特許の数ではなく試作データと提携の中身だ

今回の米国許可通知で、Dragonfly Energyは全固体電池製造に関わる粉体材料と乾式工程の保護を米国でも進めやすくなった。日本、欧州、米国で相次ぐ許可通知は、同社が全固体電池を材料だけでもパックだけでもなく、乾式でセル内部の層を作る製造工程として押さえようとしていることを示している。

それでも、投資家や顧客が次に見るべき数字は、特許件数だけではない。試作セルの性能と再現性、パウチセルの生産時期、電極コーティング装置の大型化、Nevada Tech Hubプロジェクトで得られる検証能力、そして追加資金をどの条件で確保できるかが、全固体電池の商用化までの距離を決める。

Dragonfly Energyにとって、特許の許可通知は防御線を引く作業である。事業としての勝負は、その防御線の内側で、乾式工程が小さな設備、低いエネルギー、安定したセル品質につながることを示せるかに移る。