サイエンス
コイルという制約からの解放。分子メモリスタが切り拓く「創発インダクタンス」のパラダイム
理化学研究所などの共同研究チームは、分子性モット絶縁体を用いたメモリスタにおいて、外部コイルなしで最大10万ヘンリーを超える巨大なインダクタンスが発現する現象を実証した。これは、電子の遅いダイナミクスと履歴依存性が巨視的な慣性として機能する「創発インダクタンス」であり、従来のコイルの約10万倍の規模で、電子回路の設計思想を根本から変える可能性を秘めている。
別名: Emergent Inductance
創発インダクタンスは、従来のインダクタ(コイル)のように電磁誘導による磁束の蓄積を利用するのではなく、物質内部の電子の量子力学的な相互作用や非平衡なダイナミクスによって生じるインダクタンス成分を指す。電子の移動に伴う遅延や緩和時間が、回路全体として「電流の変化を妨げる慣性」として機能する。物理的な巻き線構造を必要としないため、極めて小さなフットプリントで巨大なインダクタンスを実現できる可能性があり、回路の微細化におけるブレイクスルーとして注目されている。