2026年7月21日、フランス国民議会は15歳未満のソーシャルメディア利用を禁止する法案を279対81で可決した。上院も同日、賛成243、反対2、棄権100で通過させている。与野党を超えた支持だった。1月の初回採決では130対21。可決からわずか2日後の7月23日、Lecornu首相が法案の一部を憲法評議会に付託した。政府自身が違憲リスクを認識していたことを示す動きである。左翼政党La France Insoumiseの議員らも違憲性を主張して提訴している。

それから3週間後の8月14日、憲法評議会は決定番号2026-911 DCをもって、法案第1条を違憲と判断した。9人の判事(元首相Alain Juppé、元国民議会議長Richard Ferrandらを含む)が下した結論は明確だった。「この禁止は、追求する目的に対して適合的でも必要的でも比例的でもない(ni adaptée, nécessaire et proportionnée)」。

この判断が指摘したのは、手続き上の不備ではない。子どもの保護と表現の自由の衝突という、民主主義国家が避けて通れない構造的な問題に、憲法レベルの答えを出した最初の事例である。

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「SNS」の定義が、禁止の射程をどこまで広げてしまったか

憲法評議会の判断は3つの論点から構成される。第一に、禁止対象の範囲が広すぎるという問題だ。

法案が禁止の対象としたのは「利用者が互いに接続し、通信し、コンテンツを共有し、他の利用者やコンテンツを発見することを可能にするあらゆるオンラインプラットフォーム」である。この定義に従えば、オンライン上の百科事典や教育用ディレクトリ、オープンソースの開発プラットフォームは除外されるものの、共同作業型のコンテンツ共有サービス、オンラインコミュニケーションアプリ、協力プレイ機能を備えたオンラインゲームまでが禁止の射程に入る。

評議会は、これらのサービスのすべてが未成年者の健康や安全にリスクをもたらすとは限らないと指摘した。リスクの有無を個別に評価せず、一律に遮断する設計は、表現の自由に対する制約として比例原則を満たさないという判断である。

第二に、親権の排除がある。法案には、親や法定後見人が子どもの利益のために禁止を解除したり、特定のサービスへのアクセスを許可したりする仕組みが一切盛り込まれていなかった。評議会は、子どもの年齢、成熟度、家庭環境、対象サービスの性質に応じた個別のリスク評価を可能にする規定の欠如を、違憲の根拠の一つとして挙げている。

第三に、年齢確認の法的担保が不十分だった。15歳未満を排除するためには、必然的にすべての利用者(成人を含む)が年齢を証明しなければならない。しかし法案は、その証明の条件や限界を定めておらず、プライバシー権(1789年人権宣言第2条)に対する必要な法的保護を提供していなかった。

論点 法案の設計 憲法評議会の指摘
禁止対象の範囲 利用者間の接続・通信を可能にする全プラットフォーム リスクが立証されていないサービスまで一律に遮断。比例原則違反
親権との関係 親による解除・例外の仕組みなし 子どもの個別状況に応じた判断を親に認める規定が必要
年齢確認 全利用者に年齢証明を要求 条件・限界が未規定。プライバシー権の法的担保が欠如

オーストラリアが示した「執行の壁」

フランスの違憲判断が注目を集めるもう一つの理由は、先行事例であるオーストラリアの苦戦にある。

オーストラリアは2024年にSocial Media Minimum Age Actを制定し、2025年12月から16歳未満のSNS利用を禁止した。世界初の試みだった。しかし施行から3カ月後の2026年3月から4月にかけて実施された追跡調査では、禁止対象のプラットフォームを利用していた16歳未満の86%以上が、引き続きアクセスを維持していた。

英医学誌BMJに掲載された研究(回帰不連続デザインを用いた分析)は、16歳の年齢閾値の前後でSNS利用率に統計的に有意な不連続は検出されなかったと報告している(P≥0.60)。12歳から13歳の日常的なSNS利用率は横ばい、14歳から15歳は78%から69%へとわずかに低下したが、16歳以上は80%から89%へとむしろ上昇した。

回避策も多様だった。他人のアカウントを利用した青少年が9%から29%、偽アカウントの作成が15%から19%、プライベートブラウザの使用が6%から11%。VPNの利用は2%から3%と少数にとどまったが、これはVPNが不要なほど年齢確認が機能していなかったことを意味する。実際に年齢確認に遭遇したと答えたのは66%で、そのうち最も多かったのは自己申告(24%から39%)とセルフィーのアップロード(13%から27%)だった。

オーストラリアのeSafety Commissionerは、アカウント所有率が52%から42%に低下したことを「統計的に有意な減少」と報告しつつも、大多数が依然としてアクセスを維持している事実を認めている。プラットフォーム側の年齢確認措置の実装が不十分だったことが主因とされた。

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年齢確認という技術的難問

フランスの法案が憲法上問題とされた年齢確認の要件は、技術的にも未解決の課題を抱える。

米国国立標準技術研究所(NIST)が2024年に実施した顔年齢推定アルゴリズムの大規模評価では、被験者約850万人、写真約1,150万枚を用いたテストにおいて、最良のアルゴリズムでも10代に対する平均絶対誤差(MAE)が3年から5年だった。13歳の被験者について、実際の年齢から1年以内の精度で推定できた割合は、テストされたすべてのアルゴリズムを通じて35%未満にとどまる。

英国政府が2026年に公表した年齢確認に関する調査報告書は、顔年齢推定の精度が近年改善していることを認めつつ(Yoti社のアルゴリズムが6歳から17歳でMAE約2.0年を達成)、それでも「12歳が14歳と、16歳が18歳と誤分類されるケースが残る」と記している。性別、肌色、民族による精度の偏りも解消されていない。

Knight-Georgetown Instituteの技術評価報告は、より根本的な制約を指摘する。「すべての年齢確認システムは回避に対して脆弱であり、未成年者のアクセスを完全に防ぎつつ成人ユーザーを大量にブロックしないシステムを構築することは技術的に不可能である」。

指標 オーストラリア(禁止前) オーストラリア(施行3カ月後)
16歳未満の禁止対象プラットフォーム利用率 85.9% 81.5%以上
アカウント所有率 52.4% 42.1%
年齢確認に遭遇した割合 対象外 66%(自己申告が最多)
日常的なSNS利用率(全年齢) 60% 58%

欧州各国の立法競争と、フランス判断が及ぼす影響

フランスの違憲判断は、同種の立法を準備する欧州各国に直接的な影響を与える。

英国政府は2026年3月から5月にかけて大規模な国民協議を実施し、16歳未満のSNS禁止を2027年春に施行する方針を固めた。親の9割が禁止を支持し、若年層の3分の2も同意したという。Australia型モデルを踏襲し、Instagram、YouTube、TikTok、Snapchat、Facebook、Xを対象とする。Ofcomが年齢確認の技術基準を策定中である。

ノルウェー政府は、16歳になる年の1月1日からアクセスを許可する方式を提案している。同学年の子どもが同時にアクセス権を得る設計で、デジタル化・公共ガバナンス大臣Karianne Tungは「子どもに責任を負わせるのではなく、プラットフォーム企業に責任を負わせる」と述べている。

ギリシャは2027年1月1日から15歳未満の禁止を施行する方針を2026年4月に発表し、違反したプラットフォームにはEUデジタルサービス法(DSA)に基づく世界的売上の最大6%の制裁金を科すとしている。

これらの国々がフランスの判断から学ぶべき教訓は、禁止の正当性そのものではない。憲法評議会は、未成年者をオンライン上のリスクから保護するという立法目的自体は「憲法上の要請である子どもの最善の利益の実現」に資すると認め、公益上の正当性を否定していない。問題とされたのは手段の設計だ。対象をリスクの実態に応じて絞り込むこと、親の判断を尊重する仕組みを組み込むこと、年齢確認に法的な保護措置を付随させること。この3点を満たさなければ、同種の立法はどの民主主義国家でも憲法の壁にぶつかる可能性がある。

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Macronの残り時間と、修正法案が越えるべきハードル

Elysée宮殿は違憲判断の直後、Macron大統領がLecornu首相に法案の修正を指示したと発表した。2027年春までに施行する意向を示している。フランスの大統領選挙は2027年4月18日に第一回投票、5月2日に決選投票が予定されており、Macronは憲法上の二期制限により出馬できない。SNS禁止法は、退任前に残せる数少ない大型の実績の一つになるはずだった。

修正法案が憲法評議会の基準を満たすには、少なくとも3つの設計変更が必要になる。第一に、禁止対象をリスクが実証されたサービスに限定するか、サービスごとのリスク評価メカニズムを導入すること。第二に、親権者による解除や条件付き許可の規定を設けること。第三に、年齢確認の条件、限界、データ保護の法的枠組みを法律の条文に明記すること。

ただし、これらの修正を施した瞬間に、法案は当初の「一律禁止」という性格を失う。リスクに基づく個別規制に近づけば、それは禁止ではなく規制になる。親権の例外を広く認めれば、実効性は薄れる。年齢確認の厳格な法的担保を求めれば、プライバシーとの緊張はさらに深まる。

オーストラリアのBMJ論文が指摘したように、政策の完全な影響が現れるには10年かかるかもしれない。しかし立法者には、次の選挙までの時間しかない。フランスの憲法評議会が示したのは、子どもの保護という目的の正当性ではなく、民主主義国家がその目的を追求する際に守らなければならない手続きの輪郭だった。この輪郭の中で、どこまで実効性のある規制を組み立てられるか。答えは、まだどの国も持っていない。