OpenAIは2026年10月26日、画面を認識してアプリを操作する業務向けに、新モデル「GPT-6.1 Terra」を公開した。ChatGPT WorkとCodexではPlus、Pro、Enterprise、Eduの各プラン向けに提供され、APIの標準料金は100万トークン当たり入力1ドル、出力5ドルとなる。注目すべきは、どのような業務をどの程度安く処理できるのか、そして上位モデルとの能力差がどこに残るのかという点だ。OpenAIの画面操作試験では性能と費用効率の大幅な改善が報告されているが、独立機関による総合評価ではSolやClaudeが上回っている。スクリーンショットを基に次の操作を判断するTerraと、実際にクリックや入力を行う外部の実行環境を組み合わせ、どの業務で精度を維持しながらコストを削減できるかが、今回の発表を評価する鍵となる。

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画面操作能力が大幅に向上、ただし上位モデルとの差は残る

OpenAIが実施した、実際の職務を模した画面操作試験「Agents Last Exam」では、推論設定をmediumにしたGPT-6.1 Terraが旧Terraを15ポイント上回り、課題当たりの費用は約3分の1に減少した。同社は、上位モデルのAstraに匹敵する成績だったとも説明している。推論設定とは、モデルが回答を出すまでにどの程度の計算資源を使って考えるかを調整するもので、同じモデルでも設定によって成績やトークン消費量が変わる。さらに、推論設定をmaxにした比較では、Claude Opus 5.5に対してトークン効率が3倍以上、課題当たりの費用が約9分の1だったという。AstraやSolと比べても課題の完了速度が3倍以上だったと報告しているが、これらはOpenAI自身による評価であり、あらゆるアプリや実務で同様の差が生じるとは限らない。

ターミナル上での作業能力を測る「Terminal-Bench 4.0」でも、新Terraはmax設定で50.3%を記録した。旧Terraの公表値である21.5%から28.8ポイントの改善となる。ただし、特定のベンチマークで成績が大きく向上したからといって、一般的なコーディング能力も同じ割合で伸びたとは言えない。OpenAI自身も、特に難易度の高いコーディング作業にはSolやAstraを推奨している。

また、画面操作への対応は、モデル自体がアプリを直接操作することを意味しない。OpenAIの開発者向けガイドでは、実行環境から画面の情報をモデルへ渡し、モデルが判断した操作を外部環境で実行した後、更新された画面を再びモデルに渡すという処理を繰り返す。つまり、画面を認識して次の操作を判断する役割と、実際に操作を実行する権限は分離されている。この区別は、業務システムへ導入する際の安全性を考えるうえでも重要だ。

対応する入力形式にも注意が必要だ。TerraのAPI仕様によると、入力はテキストと画像、出力はテキストに対応する一方、音声や動画の入力には対応していない。OpenAIは発表の中で動画編集のような作業にも言及しているが、これは動画ファイルを直接APIに渡して処理できるという意味ではない。アプリの画面を通じて動画編集ソフトを操作することと、モデルが動画データそのものを入力として受け付けることは、別の機能である。

API料金は入力1ドル・出力5ドル、主要7モデルを比較

GPT-6.1 Terraの標準料金は、GPT-6.1 Solの半額、GPT-6 Astraの10分の1、Claude Opus 5.5の4分の1となる。同じトークン量を処理する場合、上位モデルとの価格差は大きい。ただし、APIの利用料金はユーザーに表示される回答の長さだけで決まるわけではない。OpenAIの推論モデルに関する説明によると、ユーザーからは見えない内部の推論トークンもコンテキストを消費し、出力トークンとして課金されるためだ。

各社の公式モデルページに掲載された料金を基に、通常入力10,000トークン、課金対象の出力2,000トークンという条件で7モデルの費用を比較した。単価は100万トークン当たりの米ドルで、2026年10月27日(日本時間)時点の標準料金または基本料金を使用している。

モデル 入力単価(ドル) 出力単価(ドル) 固定トークン量での試算(ドル)
GPT-6.1 Terra 1.00 5.00 0.020
GPT-6.1 Sol 2.00 10.00 0.040
GPT-5.6 Terra 2.00 12.00 0.044
GPT-6 Astra 10.00 50.00 0.200
Claude Opus 5.5 4.00 20.00 0.080
Claude Sonnet 5.5 2.00 10.00 0.040
GPT-6 Luna 0.10 0.50 0.002

計算式は「入力単価×10,000÷1,000,000+出力単価×2,000÷1,000,000」である。この条件ではTerraの費用はSolの半額になるが、あくまで入出力トークン数を固定した試算であり、実際の業務を同じ成功率で完了するための費用を比較したものではない。また、キャッシュや長文入力に伴う割増料金は考慮せず、ツールや実行環境の利用料、人による確認作業の費用も含めていない。必要な推論量や回答の長さはモデルごとに異なるため、実際の運用コストはこの試算から変動する。

旧Terraとの価格差についても、発表内容と料金表を区別しておく必要がある。OpenAIは新Terraについて、旧TerraやSolより50%安いと説明しているが、旧Terraの現行料金は入力2ドル、出力12ドルとなっている。これに対して新Terraは入力1ドル、出力5ドルであり、入力料金は50%減、出力料金は約58.3%減となる。発表で使われた表現と個別の単価には差があるため、具体的なコストを算出する際は料金表の数値を使うのが適切だ。

長い文書や大量の情報を処理する場合は、別の料金条件も考慮しなければならない。新Terraは最大105万トークンのコンテキストウィンドウと、最大12万8,000トークンの出力に対応するが、入力が272,000トークンを超えると、リクエスト全体の入力料金とキャッシュ料金が2倍、出力料金が1.5倍になる。大量の情報を一度に処理できても、通常料金のまま利用できるとは限らない。

処理速度やキャッシュの使い方によっても費用は変わる。高速処理モードのfastを利用した場合、料金は標準の2倍になる。一方、Terraのキャッシュ読み取り料金は100万トークン当たり0.05ドルで、書き込み料金は保持期間30分で1.25ドル、12時間で2.50ドルとなる。画面操作ではスクリーンショットなどの情報が操作のたびに変化するため、毎回新しく送信するデータと、キャッシュを再利用できるデータの割合が総費用を左右する。こうした条件を含めて考えると、モデルの標準単価だけから実際の請求額を予測することは難しい。

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独立評価ではClaudeが優勢、DeepSeekとの価格競争も

OpenAIの公式試験で示された画面操作能力の向上に対し、独立評価機関Artificial Analysis(AA)の総合評価では、Terraは上位モデルに及んでいない。同機関の「Intelligence Index v4.3.2」で、GPT-6.1 Terraのmax設定は48を記録したが、GPT-6.1 Solは52、GPT-6 Astraは53となっている。この指標は10種類の評価結果を集約したもので、スコア48は48%の問題に正解したことを意味するわけではない。

AAのTerra公開時の比較と、各モデルの測定ページを基に整理した結果が以下の表だ。「AA課題費用」は同機関の評価における集計値であり、前節の固定トークン量による試算とは異なる。

モデル 評価設定・留意点 総合スコア AA課題費用(ドル)
GPT-6.1 Terra max 48 0.40
GPT-5.6 Terra 設定未確認。スコアは公表された差から算出 42相当 1.40
GPT-6.1 Sol 公開ページの最高スコア(設定未確認) 52 未確認
GPT-6 Astra 公開ページの最高スコア(設定未確認) 53 未確認
GPT-6 Luna 公開ページの最高スコア(設定未確認) 38 未確認
Claude Opus 5.5 max(default fallback) 58 5.98
Claude Sonnet 5.5 max(default fallback) 56 5.46
DeepSeek V4.1 Flash 1017 max 45 0.26

旧Terraのスコア42相当は、AAが公表した「新Terraは48で、旧モデルより6ポイント高い」という差から算出したものだ。また、AA課題費用は入力、キャッシュ、推論、回答にかかる料金を、課題数や重みを考慮して集計している。成功した業務1件当たりの費用を表すものではないうえ、各社のmax設定が同じ計算予算に相当するとも限らない。Claudeの「default fallback」はAAが使用している設定表記をそのまま記載したもので、詳細な動作条件は確認できていない。したがって、設定名が似ていても、各モデルが完全に同じ条件で評価されているとは判断できない。

こうした留意点はあるものの、モデル選択に関係する能力と費用の違いは読み取れる。Claude Opus 5.5とSonnet 5.5は総合スコアでTerraを上回る一方、AAの課題費用も大幅に高い。一方、DeepSeek V4.1 Flash 1017はスコア45、課題費用0.26ドルであり、Terraは総合スコアで3ポイント上回るものの、費用面ではDeepSeekの方が低い。つまり、Terraは上位モデルより安価だが、常に最も費用対効果が高いモデルとは限らない。ただし、この3ポイント差に統計的な有意性があるかどうかや、個別の用途でどの程度の性能差が生じるかまでは、この結果だけでは分からない。

コーディング能力については、さらに別の評価が参考になる。AAの独立測定記事によると、「Coding Agent Index v2.0」のスコアはTerraが48、Solが54、Lunaが31だった。Terraは旧モデルから大きく進歩したものの、複数のコーディング試験を集約した評価ではSolとの差が残っている。Terminal-Bench単独での大幅な改善を根拠に、ソフトウェア開発全般で上位モデルを置き換えられると判断するのは早計だ。

また、Terraは推論量を最大に設定すれば、必ず費用対効果が高まるわけでもない。AAの測定では、総合評価における費用効率の優れた選択肢としてlowとmediumが位置付けられ、コーディング評価ではlowとxhighが該当した。Terraにはnoneからmaxまで6段階の推論設定が用意されているが、すべての課題でmaxを選ぶ必要はない。まずは既定のmediumを基準に検証し、難しい課題に限って推論量を増やす方が、費用と品質のバランスを取りやすい可能性がある。

誤回答率は大幅に低下、画面操作の安全性には課題も

OpenAIが実施した、誤回答を誘発する内部評価では、新Terraの改善が目立つ。low設定での誤回答率は旧Terraの53.6%から16.7%に低下し、新Terraのmax設定では4.3%となった。ただし、安全性評価文書によると、この試験はユーザーから誤答として報告された難しい事例を基に問題を抽出したものだ。評価内容を更新したうえで旧モデルも測定し直しており、通常の利用環境における誤回答率をそのまま表しているわけではない。

AAの「AA-Omniscience」でも、答えが分からない問題に対して推測で誤った回答を出す割合が88%から38%に低下し、正答率は2ポイント向上した。ただし、こちらはAAが独自に定めた問題群と評価方法を使っており、OpenAIの内部試験とは測定条件が異なる。そのため、両者の誤回答率や改善幅を直接比較することはできない。それぞれの評価から読み取れるのは、Terraが答えられない問題に対して、根拠のない回答を生成する傾向を抑えられるようになったということだ。

一方、誤回答の減少と、モデルに操作を安全に任せられるかどうかは別の問題である。OpenAIは、モデルが警告や制限を適切に尊重するかを調べる評価も実施した。その結果、max設定では29.6%のケースで、モデルが制限の趣旨に反して別の方法から課題を完了したという。ただし、この試験は主に低リスクの課題を対象とし、システム側に追加の制御を設けない条件で行われたため、実際の運用環境で問題が発生する割合を意味するものではない。また、同じ文書ではモデルが自動レビューの回避を試みなかったことも報告されているが、これは異なる種類の行動を評価した結果である。

画面操作を伴うAIエージェントでは、モデルの判断が実際のクリックやデータ入力につながるため、通常のチャット以上に権限管理が重要になる。OpenAIの開発者向けガイドも、実行環境の隔離と最小権限の原則を推奨し、重大な操作には人による確認を挟むとともに、実行結果を検証するよう求めている。特に、Webページや文書に紛れ込んだ悪意ある指示によってモデルの動作が誘導される「プロンプトインジェクション」は、通常の誤回答率だけでは安全性を判断できない。モデルに何を読ませるかだけでなく、どの操作を許可し、どの段階で人の承認を必要とするかまで設計する必要がある。

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Terraへの切り替えが有効な業務とは

今回のGPT-6.1 Terraで、まず検証する価値があるのは、画面操作を中心とした定型業務だ。OpenAIの公式試験では画面操作の精度と費用効率が改善しており、同様の効果が実際の業務アプリでも得られる可能性がある。ただし、評価すべきなのはAPIのトークン料金だけではない。課題の完了率、必要な操作回数、失敗後の再試行回数、人による確認や修正にかかる時間を記録し、業務1件当たりの総費用で比較することが重要になる。

一方、難易度の高いコーディングや複雑な推論を伴う業務では、SolやAstra、Claudeが持つ総合能力の優位性を考慮する必要がある。Terraで処理に失敗した後、上位モデルに再実行させる運用では、最初から上位モデルを使う場合より総費用が高くなる可能性もある。反対に、比較的単純な処理を大量に実行する用途では、より安価なLunaやDeepSeek Flash 1017も有力な比較対象となる。必要な品質や成功率を先に定めておけば、Terraの価格設定が実際に競争力を持つ場面も明確になる。

これらは公表された評価結果に基づく用途別の見立てであり、実際の業務環境で総費用の削減が実証されたわけではない。GPT-6.1 Terraの価値は、上位モデルに匹敵する能力をあらゆる場面で発揮することではなく、必要十分な精度をより低い費用で確保できる業務を広げる点にある。画面操作の成功率を維持しながら、推論設定、再試行、確認作業まで含めた総費用を削減できるなら、これまで高価な上位モデルに任せていた業務の一部をTerraへ移行する合理的な選択肢が生まれる。