Apple初の折りたたみスマートフォン「iPhone Duo」は、10月16日の予約開始からわずか数時間で、日本向けの出荷予定が2027年1月まで延びた。ITmediaの報道によると、同日22時過ぎには日本のApple Storeで全カラー・全容量が「1月22日出荷」と表示されていたという。Appleが発表した発売日は10月23日で、予約受付は16日21時に始まったばかりだった。
税込364,800円からという高価格にもかかわらず、早期に受け取れる配送枠は短時間で埋まったとみられる。一方、中国では正式な予約開始前にAppleが発注を30%増やしたとの報道も出ていた。発注が増えているのに納期が長期化している状況を理解するには、購入希望者の数と、実際に供給できる台数を分けて考える必要がある。
色や容量を変えても、配送予定は同じだった
予約開始直後の配送予定を継続的に記録したiPhone Maniaの独自調査によると、10月16日21時30分の時点で、全8構成のお届け予定が2027年1月23日になっていた。21時には10月23日だった配送予定が、21時2分には11月10~17日、21時15分には12月9~16日と、短時間で段階的に後ろ倒しになったという。調査はSIMフリーモデルを対象に、下取りなし、一括払い、AppleCareなしという条件で実施された。
この調査では、2色と4種類のストレージ容量のどの組み合わせでも、各観測時刻の配送予定は同じだった。人気色を避けたり、大容量モデルを選んだりすれば早く届くという傾向は確認できない。Apple直販の税込価格は、256GBが364,800円、512GBが399,800円、1TBが469,800円、2TBが574,800円となっている。少なくとも今回の記録では、容量を増やすために追加費用を払っても、配送予定が早まるわけではなかった。
ただし、自宅への配送と店舗での受け取りでは状況が異なっていた。iPhone Maniaは21時8分に、256GBと512GBのナイトスカイで店舗受け取りの枠が残っていることを確認している。さらに、21時15分ごろにも名古屋など一部店舗では、2TBモデルを発売日に受け取れる表示があったという。配送の待ち時間が長くなっていても、店舗によっては発売日受け取りの枠が残っていたことになる。
これらはいずれも10月16日夜の観測結果であり、その後の在庫状況を保証するものではない。また、ITmediaが確認したのは「1月22日出荷」、iPhone Maniaが記録したのは「1月23日お届け予定」で、確認時刻だけでなく、表示が指す日付の意味も異なる。製品そのものの発売が翌年に延期されたわけではなく、各時点で新たに注文した場合の出荷・配送予定が延びたということだ。
四つの数字を、販売台数として比較できない理由
iPhone Duoを巡っては、「201万人超の事前登録」「発注30%増」「日本での翌年出荷」「年内約600万台の販売予測」といった数字が報じられている。しかし、これらは地域や時点、集計対象がそれぞれ異なるため、販売台数として合算したり、直接比較したりすることはできない。各数字が需要と供給のどの段階を表しているのか、整理する必要がある。
| 数字・表示 | 地域と時点 | 数えているもの・条件 |
|---|---|---|
| 201万人超の事前登録 | 中国・京東、10月10日14時 | 証券時報の記者が確認した無料の購入意向登録。代金を支払った購入者数ではない |
| 発注30%増、総量は1,000万台以下 | 10月10日報道、秋の新製品向け発注 | 証券時報のサプライチェーン取材に基づく発注計画。販売実績や追加分の出荷時期を示すものではない |
| 2027年1月22日出荷 | 日本、10月16日22時過ぎ | ITmediaが確認したApple Storeの出荷予定。国内の受注総数や実際の出荷台数ではない |
| 年内約600万台販売 | 世界全体、9月30日公表の2026年予測 | Counterpointの販売予測。量産の立ち上がりが前提となる |
特に注意が必要なのが、中国で報じられた「201万人超の予約」という数字だ。証券時報によると、これはECサイト「京東」での購入意向登録数であり、登録に代金の支払いは必要ない。中国で正式な予約受付が始まったのは10月16日20時で、日本の予約開始と同じタイミングだった。したがって、事前登録者の多さは製品への関心の高さを示すものの、そのまま販売台数として扱うことはできない。
日本で配送予定が数カ月先まで延びたことも、注文数と初期供給量の間に大きな隔たりが生じたことは示しているが、具体的な台数までは分からない。もともと用意された数量が少なかったのか、Appleの想定を上回る注文が集まったのか、あるいは両方が重なったのかは判断できない。長い納期だけを根拠に、販売規模を逆算することは不可能だ。
発注30%増でも、日本への出荷がすぐに増えるとは限らない
発注増を報じたのは、中国の証券時報だ。同紙の厳翠記者は10月10日、Appleのサプライチェーン企業への取材を基に、iPhone Duoの発注が30%増えた一方、総発注量は依然として1,000万台を超えていないと伝えた。ただし、これはサプライチェーン関係者から得た情報であり、Appleが公式に発表した生産台数ではない。
報道された時期にも注意が必要だ。この情報が出たのは正式な予約開始の6日前であり、10月16日の予約状況を受けてAppleが発注を増やしたという話ではない。また、記事では増加前の発注数量や追加分の納入時期、日本市場への割当数も明らかにされていない。そのため、発注が30%増えたという情報だけでは、日本の購入者がいつ製品を受け取れるようになるのかを判断できない。
そもそも、メーカーによる発注と、消費者に届けられる完成品の台数は別のものだ。発注後には製造や検査が必要であり、完成した製品も地域や販売店ごとに割り当てられる。上流工程で生産計画を増やしても、それがすぐに出荷台数の増加につながるとは限らない。特に初期の供給量が限られている段階では、追加発注の効果が実際の納期に反映されるまで時間がかかる可能性がある。
iPhone Duoは、Appleの説明によると、ヒンジだけでも100以上の部品を使用する複雑な構造を採用している。このヒンジは、開いた状態で画面の中央部分を支えるとともに、折りたたむ際の動きも制御する。ただし、こうした機構の複雑さだけを根拠に、今回の供給不足の原因がヒンジにあると断定することはできない。発注増に関する報道でも、追加分がいつ完成品として出荷されるのかは明らかにされていない。
購入者にとって重要なのは、発注の増加率そのものよりも、実際に注文した場合の納期だ。10月16日夜の時点で配送と店舗受け取りの空き状況が異なっていたことからも、購入先や受け取り方法によって、製品を入手できる時期が変わる可能性がある。
SNSでは予約成功の喜びと、注文できない不満
英語圏のRedditのiPhone Duoコミュニティでは、予約開始後に「30分以内に配送予定が2027年になった」とするスレッドが立った。投稿者のStuccoGeckoは、久しぶりに形状が大きく変わるiPhoneへの期待を語っている。コメント欄には、発売日の店舗受け取りを確保できたことを喜ぶBanginAlooのような利用者がいる一方、Southernboyjはサイトのエラーで手続きに時間がかかり、配送予定が12月になったと報告している。
もっとも、反応は好意的なものばかりではない。Comfortable-Night-85は、予想以上に人気が集まった可能性だけでなく、Appleが当初用意した数量が少なかった可能性も指摘している。予約を巡る利用者のやり取りでも、需要の大きさと供給量の少なさは必ずしも同じ意味では捉えられていない。
こうした投稿は個々の利用者による自己申告であり、英語圏の一つのコミュニティに限られた反応だ。日本の購入者全体はもちろん、SNS全体の評価を代表するものではない。それでも、新しい形状のiPhoneをいち早く試したいという期待と、予約手続きの混乱や長い待ち時間に対する不満が同時に生じている様子はうかがえる。
iPhone Duoが採用するのは、開くと7.6インチになるディスプレイだ。Appleは複数のアプリを同時に使うマルチタスクにも対応すると説明しており、従来のiPhoneとは異なる使い方が期待される。ただし、こうした機能に魅力を感じる消費者が、36万円を超える価格を受け入れ、継続的に購入するかどうかは別の問題だ。予約初日の盛り上がりだけでは、長期的な需要を判断できない。
折りたたみ市場の成長は、量産できてこそ
IDCが8月26日に公表した市場予測によると、2026年の世界の折りたたみスマートフォン出荷台数は、前年比12.6%増の2,290万台に達する見込みだ。Appleの参入が市場の成長を後押しするとの見方が背景にある。ただし、これはiPhone Duoの予約開始前に公表された予測であり、今回の注文状況を反映した販売実績ではない。
Counterpointが9月30日に示した、iPhone Duoの年内販売台数が約600万台に達するという予測も、量産の立ち上がりが前提となっている。さらに、IDCが示したのは折りたたみスマートフォン市場全体の出荷台数であるのに対し、Counterpointの数字はiPhone Duoの販売台数を指している。集計対象となる指標が異なるため、単純に割り算してAppleの市場シェアを算出することはできない。
予約開始直後に早期配送分が埋まったことは、iPhone Duoへの関心の高さをうかがわせるものの、製品の商業的成功を判断するにはまだ早い。今後は予約した購入者への出荷が順調に進むか、地域や受け取り方法による納期の差が縮まるか、そして初期需要が落ち着いた後も販売が続くかが重要になる。Appleが追加発注を安定した供給につなげられれば、iPhone Duoは発売日に入手できる人が限られた製品から、より多くの消費者が用途と価格を比較して選べる折りたたみiPhoneへと近づくだろう。



