Qualcommは2026年11月4日(米国時間)、9月27日を期末とする2026年度第4四半期決算を発表した。非GAAPの1株利益と調整後売上高はいずれも市場予想を上回ったものの、前年同期からは減少した。自動車向け売上高は前年同期比89%増の19億9000万ドルと大きく伸びたが、半導体事業QCT全体では8%の減収となった。自動車とIoTの増収分を合わせても、スマートフォン向けの減収分の56%しか補えていない。スマートフォン依存からの脱却には、データセンター事業の本格的な収益貢献が必要になりそうだ。

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市場予想を上回るも、売上高と利益は前年割れ

第4四半期の売上高は、GAAP(米国会計基準)で103億2200万ドル(前年同期比8%減)、非GAAPで104億4200万ドル(同7%減)だった。非GAAPの1株利益は2.17ドルで、前年同期の3.00ドルから28%減少した。AP通信が伝えたZacks調査の市場予想平均は、1株利益が2.16ドル、売上高が101億5000万ドルだった。いずれも予想は上回ったものの、前年同期比では減収減益となっている。なお、非GAAPは株式報酬や買収関連費用、税務上の特殊要因などを除いた調整後の数値である。

通期のGAAPベースの1株利益は12.70ドルとなり、前年の5.01ドルから153%増加した。ただし、これには評価性引当金の戻入による57億ドルの税務上の利益(1株当たり5.32ドル)が含まれている。一方、非GAAPの1株利益は10.54ドルで、前年から12%減少した。会計上の特殊要因を除けば、利益面でも厳しい1年だったことが分かる。

Qualcommの事業は、半導体を販売するQCTと、特許ライセンスを手がけるQTLに大きく分かれる。QCTの第4四半期売上高は、スマートフォン向けが51億3700万ドル(前年同期比26%減)、自動車向けが19億9000万ドル(同89%増)、IoT向けが18億8800万ドル(同4%増)だった。同社は決算資料で自動車向けについて「初の20億ドル四半期」と強調しているが、実際の開示額は19億9000万ドルであり、20億ドルは端数を丸めた表現である。

Qualcommは今回、Apple、Huawei、Transsionとの長期ライセンス契約の更新に加え、Amazonとのデータセンター向け複数世代にわたる協業も発表した。ただし、Amazonとの協業に関する具体的な契約金額や製品の出荷時期は明らかにしていない。

自動車とIoTの増収でも、スマートフォン減収の56%しか補えず

Qualcommのスマートフォン依存がどこまで改善したかを判断するには、QCTの用途別売上高を比較する必要がある。第4四半期の前年同期比の増減は次のとおりだ。

QCT売上高(百万ドル) 2025年度第4四半期 2026年度第4四半期 前年同期比増減
スマートフォン 6,961 5,137 -1,824
自動車 1,053 1,990 +937
IoT 1,807 1,888 +81

自動車向けの増収は9億3700万ドル、IoT向けは8100万ドルで、合計10億1800万ドルとなった。一方、スマートフォン向けは18億2400万ドル減少している。自動車とIoTの増収額をスマートフォンの減収額で割ると55.8%となり、減収分の約56%しか補えていない。 この比較には、ライセンス事業のQTLとデータセンター事業は含めていない。

もっとも、売上構成には大きな変化が見られる。自動車とIoTがQCT売上高に占める割合は、前年同期の29%から43%へ上昇した。一方、スマートフォンの構成比は71%から57%へ低下している。事業の多角化は着実に進んでいるものの、自動車とIoTの成長だけではスマートフォン事業の落ち込みを補いきれない状況だ。

同じ方法で2026年度第3四半期を計算すると、自動車の増収6億400万ドルとIoTの増収1億4900万ドルを合わせた7億5300万ドルは、スマートフォンの減収12億4200万ドルの約61%に相当する。第4四半期はこれが56%に低下しており、減収を補う力はむしろ弱まった。特許ライセンス事業のQTLも、第4四半期売上高が13億400万ドルと前年同期比7%減少している。通期売上高は55億5600万ドルで、前年の55億8200万ドルとほぼ同水準にとどまった。

2027年度第1四半期(2026年10〜12月期)の業績見通しにも、この傾向が表れている。Qualcommが示したQCTの売上高見通しは90億〜96億ドルで、中央値の93億ドルは前年同期の106億1300万ドルを12.4%下回る。この数字にはデータセンター事業も含まれている。全社売上高の見通しも104億〜112億ドルとなっており、中央値の108億ドルは前年同期の122億5200万ドルを約12%下回る水準だ。

こうした状況で、新たな成長の柱として期待されるのがデータセンター事業である。CEOのCristiano Amonは決算資料で、2027年度の非スマートフォン収益が前年比60%超増加するとの見通しを示し、データセンター収益50億ドルという目標を改めて確認した。50億ドルは1ドル=150円で換算すると約7500億円に相当し、実現すれば全社業績を大きく左右する規模となる。

では、この目標はスマートフォン事業の減収を補うのに十分なのだろうか。第4四半期のスマートフォン向け売上高51億3700万ドルを単純に4倍すると、年間約205億ドルとなる。これは2026年度の240億7200万ドルを約35億ドル下回る水準だ。仮に第4四半期の売上水準が年間を通じて続くなら、データセンター収益50億ドルはその減収分を上回る計算になる。ただし、スマートフォンの落ち込みがさらに拡大すれば相殺効果は小さくなるうえ、Amazonとの協業を含め、50億ドルの収益目標に至る具体的な道筋を今回の決算から検証することはできない。

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スマートフォンの底打ちと価格転嫁が業績回復の鍵に

一方、スマートフォン事業には底打ちの兆しもある。第4四半期のスマートフォン向け売上高51億3700万ドルは、第3四半期の50億8600万ドルから前期比1.0%増加した。小幅ながら減少に歯止めがかかったことは、今後の回復を考えるうえで注目に値する。ただし、前年同期比では依然として26%の大幅減収であり、現段階で本格的な回復に転じたとは判断できない。

もう一つの注目点は、製品価格へのコスト転嫁である。Qualcommは、製造工程からメモリまで業界全体で投入コストが上昇していると説明している。同社によると、こうしたコスト上昇を製品価格に転嫁した効果がQCTの粗利益率に全面的に反映されるのは、2027年度下期になる見込みだ。売上高の回復に先行して、利益率が改善する可能性はある。

もっとも、利益率の改善とスマートフォン依存からの脱却は別の問題である。価格転嫁によって収益性が改善しても、自動車やIoTの増収がスマートフォンの減収を補えなければ、売上構造の転換が十分に進んだとはいえない。そこで注目したいのが、2026年10〜12月期における非スマートフォン事業の増収額とスマートフォン事業の減収額の関係だ。

第3四半期に61%、第4四半期に56%だった減収補填率が、次の四半期に80%を超えれば、自動車とIoTの成長がスマートフォンの落ち込みに追いつき始めたと評価できる。また、QCT売上高の前年同期比減少率が、会社予想の上限96億ドルから計算される約9.5%よりも小さくなるかも重要な判断材料となる。

さらに、データセンター事業の売上高が四半期決算で具体的に確認できるようになり、その増収分を自動車とIoTの増収分に加えた額がスマートフォンの減収分を上回れば、Qualcommの事業転換が業績面でも明確になったといえる。自動車事業の急成長に続き、データセンター事業がどの程度の速さで収益に貢献し始めるかが、今後の成長を左右することになりそうだ。