SSDも液冷サーバーへ、キオクシアがCM9に対応モデル追加 容量と耐久性の違いは

  • 何が起きた: キオクシアがCM9に直接液冷対応のE3.Sモデルを追加し、限定顧客へサンプル出荷を始めた。
  • なぜ重要か: PCIe 5.0を維持したまま、AIサーバーでSSDを液冷構成に組み込む選択肢が広がる。
  • 次に見るべき点: 対応サーバーでの持続性能と冷却効果、量産時期が採用判断の材料になる。

キオクシアは2026年10月13日、企業向けSSD「KIOXIA CM9シリーズ」に、コールドプレートによる直接液冷に対応する「CM9-DLCシリーズ」を追加した。サーバー向けのE3.S形状で、従来の空冷環境でも使えるモデルである。AI向けに演算能力を高めるほど冷却への要求も増すなか、PCIe 5.0世代のSSDを液冷サーバーへ組み込む選択肢が広がる。限定顧客へのサンプル出荷が始まった今回の製品は、転送速度に加え、冷却設備との適合や日々の書き込み量を見て選ぶ必要がある。

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PCIe 5.0のまま、液冷サーバーへ広がるCM9

CM9-DLCが対応するのは、冷却板をSSDに接触させて熱を逃がす方式だ。キオクシアの発表は、直接液冷によって省エネルギー化を進め、空冷より多くのサーバーをラック単位で冷やせると説明している。ただし、CM9-DLCを使った場合の温度低下や電力削減率は示しておらず、実際の効果はサーバー側の構成と合わせて確かめることになる。

インターフェースはPCIe 5.0、通信規格はNVMe 2.0を維持する。E3.Sでデュアルポートに対応し、NVMe-MI 1.2cとOCP Datacenter NVMe SSD v2.5もサポートする構成である。シーケンシャル性能は読み出し最大14.8 GB/s、書き込み最大11 GB/sで、128 KiBのデータをキュー深度32で処理した場合の値だ。キュー深度は、同時に処理を待たせる要求の数を表す。

この帯域は液冷化によって初めて届いた数字ではない。既存のCM9-R E3.Sの製品表にも、最大14,800 MB/sの読み出しと11,000 MB/sの書き込みが載る。一方、同じ既存モデルでも容量によって性能値は異なるため、シリーズ全体の最大値を最大容量モデルの性能と読み替えることはできない。今回の発表から判断できる新しさは、CM9の接続世代を変えずに冷却方式の選択肢を増やした点にある。

キオクシアのSSDとして液冷が初登場したわけでもない。同社は7月30日のCM10発表で、PCIe 6.0に対応するE3.Sと厚さ9.5 mmのE1.Sに液冷対応を示していた。CM9-DLCの追加によって、先に示された新世代製品に加え、PCIe 5.0を使う構成でも液冷を選べる製品群が広がったと捉えられる。

容量だけでは決まらないコンテキストキャッシュ用途

CM9-DLCには、読み出し中心の「CM9-DLC-R」と、読み書きが混在する用途向けの「CM9-DLC-V」がある。どちらもBiCS FLASHのTLCを使うが、容量と書き込み耐久性の組み合わせは異なる。キオクシアが今回の用途として挙げたコンテキストキャッシング、つまりAI推論で使う文脈のデータを保持する用途では、この違いが選定に関わる。

同社は3月17日の発表でも、増大するKVキャッシュとCM9の関係に触れていた。GPUメモリの外側へ高性能ストレージを使って記憶階層を広げるNVIDIA CMXのような構成に対し、25.6 TB、3 DWPDのCM9を位置付けたのである。SSDには、データを長く保存するだけでなく、推論に使うデータを受け止める役割も期待されている。ただし、今回のCM9-DLC発表は、特定のCMX構成での採用や実測結果を示したものではない。

DWPDは、ドライブ全容量に相当する書き込みを1日何回行うと、定格寿命の終了時に総書き込み容量へ達するかを示す指標だ。1 DWPDと3 DWPDを比べるときも、ドライブ容量が違えば1日当たりのデータ量は変わる。公式製品表にあるCM9-DLCの構成を並べると、次のようになる。

項目 CM9-DLC-R CM9-DLC-V
想定する使い方 読み出し中心 読み書きが混在
容量ラインアップ 7.68/15.36/30.72 TB 6.4/12.8/25.6 TB
公称耐久性 1 DWPD 3 DWPD
最大容量モデルでの書き込み量の目安 30.72 TB/日 76.8 TB/日

最大容量モデルの公称容量とDWPDから求めた1日当たりの書き込み量の目安は、CM9-DLC-Rが30.72 TB、CM9-DLC-Vが76.8 TBで、後者は前者の2.5倍となる。

これはキオクシアの10月13日発表値を使い、Rを30.72×1、Vを25.6×3で計算した結果だ。比率は76.8÷30.72で求めている。同じ容量のSSDを比べた値ではなく、定格寿命の日数で平均した書き込み量であり、転送速度や実際の寿命が2.5倍という意味ではない。製品表には暫定仕様を示す「Preliminary」とあり、サンプルの仕様は量産時に変わる可能性も残る。

保存できるデータ量はRの最大容量モデルが大きく、日々の書き込み量の目安はVの最大容量モデルが多い。したがって、コンテキストキャッシュをどれだけ保持し、どの程度の頻度で更新するかによって、選ぶモデルは変わる。液冷に対応したという一点では、容量と耐久性の使い分けまでは決まらない。

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液冷対応を支えるのは接触面と圧力

E3.Sという形状名が一致していても、古いSSDを液冷サーバーへそのまま組み込めるとは限らない。SNIAが公開する「SFF-TA-1008」Rev 3.0aは、液冷で用いる冷却面と、それを支える領域を定めている。2026年7月10日版のこの規格を読むと、液冷対応が単に外側へ冷却板を足す話に収まらない理由が見えてくる。

同規格の5.2節では、E3.SとE3.Lについて片面と両面の冷却を扱う。片面から圧力をかける場合は底面側で支える構成を示し、両面を使う場合は力を等しく逆向きにすることを推奨している。冷却面に103 kPaの圧力がかかることへの対応も定め、接続端子やコネクターへ過大なせん断力が加わらないようにする責任はホスト側にあるとしている。熱を逃がすには接触が必要で、その接触を支える機械設計も必要になる。

さらに5.7節では、誤挿入を防ぐキーを規定する。狙いは、液冷を想定しない旧版のデバイスが液冷システムへ入って、設計上想定していなかった圧力で損傷するのを防ぐことだ。これはE3規格全体の要件であり、CM9-DLCが同規格の特定版への認証を得たという意味ではない。それでも、採用側がフォームファクター名だけで互換性を判断できない理由は明確になる。

CM9-DLCの発表と製品表には、対応する冷却板やサーバーの一覧、冷却液の条件、液冷時の持続性能は記載されていない。価格と量産開始時期も今後の情報となり、現在提供されているのは機能評価用サンプルである。同社は10月12日から15日に米サンノゼで開催されるOCP Global Summitでの展示も案内した。

採用時には、キャッシュの保持容量と日々の書き込み量を見積もったうえで、対応サーバーに組み込んだ際の持続性能と冷却負担を測ることになる。その評価がそろえば、PCIe 5.0の接続を維持しながら、SSDまで含めた液冷構成を選ぶ判断材料が得られる。